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超機械文明に魔王が転生したならば!  作者: Per猫
第二話「魔力黎明」
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2-33



 少し前、エリナは相変わらず口論を続ける男達の隣で転がっていた。


「大体、貴方は常日頃から王国に逆らい過ぎてたのです! そんなだから真っ先に狙われたんですよ!」

「なんだと!? 間違っている事に逆らう事の何が悪い!? 大体、あのアカネとかいう新人だって王国軍の指揮官を脅したのだろう!?」

「アカネ隊長はいいんです! ていうか隊長と貴方を一緒にしないでくれませんかねぇ! 穢れるので!」

「貴様ー!」


(……子供の喧嘩ですか)


 半目で二人を見ていると、不意に空が光った。

 異様な光に、兵士達も反応する。

 流石のコルネリウスも正気を取り戻したようだ。


「どうした?」

「タワーのてっぺんで何かが光ったようなのですが、それ以前に向かうはずだった兵士が何者かに足止めを喰らいまして。更に、エレベーターも故障してしまったので調べに行くわけにも」

「そうか……まあ、いい。そろそろ処刑を始めよう」


 男達は投影板ホロ・フレームを展開し、撮影を開始し出す。

 処刑人はコルネリウス、殺されるのはエリナと副隊長だ。


(あれ、なんか魔王様間に合わない雰囲気ですよ!? あ、よく考えたら私って、裏切り者と思われてるから殺されるんですよね!? じゃあ、関係ない民間人って言えば助けてくれるんじゃないですか!? と思ったら私のタグ、人民軍の人のものでしたぁ! 詰みましたこれ!)


 頭の中で騒ぐが、B-Raidに乗って撃ちまくってる時点でどのみちアウトである。


(こ、こうなったら、魔法というものをやってみるしか無いですねっ! 魔王様がよくやってる感じに手から炎を……手が動かせないですよ!?)


 アグレアスは使えるのは低から中級魔法と言ったが、それがどの程度の事が可能なのかよく分からない。

 そもそも銃を突きつけられ、B-Raidまでいるこの状況では、目立った動きを見せるわけにもいかないだろう。


(……つまり、目立たず、しかし注意を惹き付ける何かをすればいいわけですね)


 エリナは白い衣服に目線を落とす。

 大分汚れてしまったものの、アグレアスが贈った服だ。

 見ていると、何かご利益がある気がしたのだ。

 実際、焦る心は落ち着き、ある程度の方向性は定まった。


(……では、やりましょうか)


 イメージするのは水。

 それも、黒い水だ。

 粘性の高いそれは、容易く頭に思い浮かべる事が出来、あとはただ顕現を強く願うだけ。

 目をつむり、一心不乱に念じる。

 そして、心の中でアグレアスの名を唱えた時、


「ぎゃあああっ!?」


 悲鳴が上がった。

 男、人民軍兵士のものだ。

 目を開けて見ると、脚を抑え、のたうち回っている。


「どうした!?」

「あ、脚が! なにか変なものに刺されてっ!」


 足とはいえ、傷は深く、周囲の者は痛みで錯乱しているのだと認識し、男を運ぼうと近づいた。

 それは、通常であれば正しい判断であっただろう。

 しかし、男の傷口から黒い粘性の物体が槍のように飛び出し、近くにいた別の男の腕を貫いた時、それが間違っていた事を知る。

 黒い水は、更に別の男の腿、膝、手、次々と刺し渡っていく。


「ぐあっ!? な、何だ!?」

「お、おい大丈夫か!?」

「くそっ、撃て撃てっ!」


 銃声と共に弾丸が叩き込まれ、黒い水は飛び散るが、何でもなかったように寄り集まり、凶行を再開した。

 十人、二十人、次々に犠牲者は増えていく。

 誰もかれもが処刑どころではなくなっていた。


(……こんなもので、いいんじゃないでしょうか……?)


 エリナがそう念じると、黒い水は呆気なく地面へ染み込み、姿を消した。

 しかし、兵士達は警戒を解かず、あちらこちらに目を見やっている。

 魔法の結果は大成功と言えた。


「一体、何だったんだ……?」


 コルネリウスが呆然と呟く。

 それもそうだろう。

 突然現れた謎の現象に、この場に集めた部下の半数近くが負傷してしまったのだから。

 恐らく、このままでは王国軍と防衛部隊には勝てない。

 そう判断し、早急に処刑を執り行うべく、銃を構えようとした瞬間、


「な、何だあれは!?」

「今度はどうした!?」

 

 一人が叫び、コルネリウスがいらついたように返す。

 叫んだ兵士は虚空を見つめ、指でタワーを示していた。

 その様子は恐怖に怯え、信じられないものを見ている目つきだ。

 今度こそ錯乱したのか、エリナを含め、誰もがそう思った時、それは現れた。


(……あれは───)


 それは、翼だった。

 白く、ビルを包み込むほどの大きさの、一対の光を放つ翼。

 神々しく、荒々しく、それでいて禍々しい。

 そんな翼を、一人の人間が背中に生やし、天から降りてきている。

 それはまさしく、


「───天使……?」

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