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超機械文明に魔王が転生したならば!  作者: Per猫
第二話「魔力黎明」
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2-31

「小手先の勝利と言ったところだが……さて」

「ぐっ……今日一日であたし、どんだけ死にかけてんのよ」

「騒ぐな、動かすぞ」

「……え、……ちょっ、ちょっと……!」


 アグレアスはアカネを腕に抱え、胸に引き寄せる。

 呼吸は速く、身長にそぐわぬ胸が大きく上下していた。

 傷を確認すれば、相当の無茶をしたせいか、背中の出血は酷く、今すぐに治療が必要だろう。

 しかし現在の都市の様子では、医療機関がまともに機能している保証はなく、アグレアスの魔法に頼ろうにもこれ以上魔力を使えば封印を解く事が出来ない。


「絶望的な状況だ。だが、安心しろ。魔王は諦める事を知らん」


 アカネを腕の中に、アグレアスは最上階へと続く階段を今度こそ駆け上がった。

 見えてきたのは、何故か床が水浸しになり、窓には耐火シャッターが降ろされたフロアだ。

 更には、壁が焦げ付いており、火災か何かが発生したようだ。

 肝心の火元が見当たらないのが不思議ではあるが。


(……イリスの封印は……あそこか。あれが外的魔力を吸収しているならば、アカネの傷もどうにか出来るはずだ)


 柱を中心とした円状の空間の先、時計として見れば12時の方向に、簡素な祭壇のようなものが見えた。


「アカネ。俺の予想が当たっていれば、もう少しで楽にしてやる。だから、」

「……待って」

「……アカネ?」


 言葉を制したアカネを、アグレアスは訝しげに見つめる。

 そして、彼女の口から出た言葉にやや身を固くした。


「……何であんたは、あたしを助けるの?」

「……それは」


 それは、言ったはずだ。 

 そう告げようとしたアグレアスに対し、アカネは瞳で抗議した。

 そして、口を開く。


「……あたしが部下だから。……あくまでもそれで通すつもり?」


 彼女の言葉に、アグレアスは答えない。

 黙し、虚空を見つめるのみだ。


「……魔王っていうのがどんなものかは分からない。けれど、こんな危険な目に遭ってまで人を助けようとするなんて、何かもっと、理由があったりするんじゃないの?」

「俺は───」


 その時、一枚の投影板ホロ・フレームがアカネの顔の横に表示された。

 緊急のニュース映像だ。

 場所は地上、ベイン・タワー正面玄関手前の道路。

 原型を留めていない正面玄関と、周辺の瓦礫の山達がそこで起こった戦闘の激しさを物語っている。

 そして、


「これは……!?」


 アグレアス達はそれに映された光景を見て、声を上げた。

 そして、「招き猫」へ向かってアグレアスは一気に駆け出す。





 数分前。

 ベイン・タワーの一階ロビーでは、二機のB-Raidが死闘を繰り広げていた。

 エリナの乗るずんぐりとした太い機体は両腕を損失し、防衛部隊副隊長の乗る黒く細い機体は頭部と左腕を損失している。

 形勢は互角……否、腕が残っている分、黒い機体ガラティーンが優勢か。


「なかなか手強いですね」


 それでも、エリナは薄く笑い、相対の態度を止めない。

 表情は柔らかく、しかし視線を戦士のそれにして、彼女はディスプレイを睨みつける。


(さて、次の接近でどうにかするしか無いですね)


 それは、向こうも同じように考えているだろう。

 床に落ちている武器はあらかた利用し尽くし、時には瓦礫を使って攻撃すらしていたのだ。

 あとは退くか、格闘戦でケリをつけるしかない。


(こちらにはまだ、「アレ」が残っている分有利……ではないですが、最悪相打ちには持っていけます)


 エリナは大きく深呼吸をし、時を待つ。

 機体の切断された肩口からオイルが漏れ、床に雫を垂らす。

 瞬間、両者がペダルを踏み込み、対角線上にいた二機がぶつかり合う。

 しかし、


『その戦い、利用させていただく……!』


 ロビーの天井の一部が唐突に崩れ落ち、そのただ中から砲弾が放たれた。

 B-Raidの携行バズーカによる攻撃だ。


「えっ」

『なにっ!?』


 突然上から叩き込まれた爆発は二機を吹き飛ばし、操作系統を沈黙させる。

 そして、攻撃の主はロビーに降り立った。

 エリナの乗るものと同じ、第一世代量産型グラム。


『今だ! 裏切り者と敵の首領を捕えろ!』


 その言葉を合図に、どこに隠れていたのか人民軍の兵士達がエリナ達のB-Raidを取り囲みだす。


 合図を送った男の名前は、コルネリウス。

 人民軍のリーダーであった。

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