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超機械文明に魔王が転生したならば!  作者: Per猫
第二話「魔力黎明」
32/83

2-26

 グラムが手にしたマシンガンが火を噴く。

 銃弾の雨が射出され、ロビーの物陰に隠れた者達の頭上を薙いだ。

 殺す必要はない。

 今はただ、足止めする事が最優先なのだから。


(でももし死んだら、それはそれで自己責任という形でお願いします……!)


 頭の中で言い訳してから、エリナはレバーを倒し、機体を傾けた。

 斜めに強く傾ぎ、白線を引いて放たれたロケット弾頭をやり過ごす。

 すると背後で爆発が生じ、ロビーの壁面が大きく抉れた。

 戦闘車両用の兵器とはいえ、損壊したグラムとしては負いたくないダメージだ。

 今後、どんな者と相手するか分からないのかだから。


(……魔王様は、そろそろエレベーターに乗れた頃合でしょうか)


 金髪の青年を思い浮かべる。

 エリナに攪乱を任せて生身で飛び込んでいったわけだが、どう考えても無謀だ。

 しかし、エリナはそれをよしとした。

 彼が帰ってきた際の安心を増幅させる為だ。

 ずるい、とも思う。

 しかし、増幅された安心は、もはやこの人ならば死ぬ事は無いという信頼へと昇華される。


「そうなったら、私は幸せ者です……!」


 不安も怯えも無く、ただ付いていくだけでよい。

 そんな主人を得る事が出来るのだから。

 口元に笑みを浮かべながら、マガジンが空になったマシンガンを軽く投げつける。

 十分な滞空時間を与えつつ降下したそれは、下敷きになる者を生まず、けれど外から乗り込んできた戦闘車両を引っくり返すという、十分な制圧効果を生み出した。


 いつしか、広大なロビーには静寂が生まれていた。

 しかし終わりではない、むしろ本命が来る。

 溜めの時間だ。

 そして、来た。

 正面玄関をぶち破りながら現れたのは、二機のガラティーンだ。

 白塗りに金の装飾が成されている事から、王国軍の物であると分かる。


(……こいらは第一、向こうは第二世代、しかも二機)


 一般的な見解として、第一世代B-Raidは三機揃えてようやく第二世代一機と対抗できる。

 無論、それは真っ向から勝負した場合の話ではある。

 だが、明確なスペック上の差というものがあり、エリナとてその性能差は理解していた。


(……でも、勝てます)


 その上で、勝てると踏んだ。

 縦横無尽にロビー内を飛び回り、メインカメラの視界内に捉える事すら難しい状況において、勝利を確信したのだ。

 やがて二機は攪乱の手を緩め、手にした小型ライフルを撃ち込む。

 人口筋肉の研究も進んでいなかった当時に製作され、機動性がお世辞にも高いと言えないグラムは、当然のように命中弾を許した。

 しかし、カメラや加速器、関節等に当たる事はなく、装甲の中でも特に分厚い箇所に限られる。

 無理に避けるのではなく、上手い防御をえらんだのだ。


(今はただ、ダメージ軽減に専念……! 攻撃はその後……!)


 我慢だ。

 我慢を重ね、それから反撃に出る。

 大丈夫、我慢が得意であるという自負はあった。

 我慢が重ねられる程、得られる物の良さは絶大なのだ。


「この人達倒したら、ご褒美が欲しいところですね……っ!」


 例えば、を思うのは危険だ。

 催促は下僕のやる事ではなく、ただ期待しているだけでよいのだから。

 そして二階へと繋がる大きな階段の上、もはや遠距離の攻撃では埒があかないと悟ったのか、二機がライフルを捨てて空中へと身を投じた。

 そして、加速器を噴かし、一気にグラムへと近づく。

 それぞれの左腕は胸の前で曲げられ、肘でエリナを示している形となる。

 そして、腕の先端に取り付けられたレーザー発振器を起動、光の刃を生み出した。

 第一世代が苦手とする、格闘戦イン・ファイトだ。


 

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