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超機械文明に魔王が転生したならば!  作者: Per猫
第二話「魔力黎明」
31/83

2-25



 人民軍リーダー、コルネリウス・ダウズエルは焦っていた。

 ベインタワー地下にあるという、議会の占拠が遅れているのだ。


「地下の連中は何をしている!?」

「はっ、資材搬入用の大型エレベーターを使い、B-Raidを侵入させようとしたところ、王国軍の反撃を受けました。更には、防衛部隊のB-Raidが見境なく攻撃を……」

「くそっ、防衛部隊だと? 今の隊長は事故で動けないはずだが、部下の独断で我々と王国軍を攻撃しているのか?」


 式典用のフロア、その来賓室でコルネリウスは顔を歪める。

 防衛部隊の行動は予定に無かった。

 よもや、隊長を殺害された報道を聞き、その報復から動いているのだろうか?

 だとすれば人民軍が攻撃されている理由が分からないが。


「……いや、あの副隊長は反王国派だったが市民へ危害を加える連中を許さなかったからな。……ならばテロリストである我らを攻撃しても不思議はない、か」


 口数の少なかった男を思い出し、立ち上がる。

 彼との交渉が必要だ。

 それも、同等の立ち位置から。


「B-Raidを一機寄越せ、俺が出る」

「本気ですか!?」

「当たり前だ、命を懸けないで革命なんて出来るか」


 そう言った顔の横、投影板ホロ・フレームが表示される。

 そして、それを見たコルネリウスは顔をしかめた。

 どうやら、子連れの金髪男という良く分からない侵入者が現れたらしい。更に、狂った味方の機体が暴れてもいるとか。

 予定外の事件という奴はどうにも、次から次へと積み重なる傾向にあるようだ。





『貴様、何をしてんだ!? 俺達は味方だぞ!?』

『構うな! 撃て撃て撃て!』

『くそっ!? 何で片手であんなに立ち回れるんだ、化け物めっ!』


(……ちょっと、うるさいですね)


 エリナは静かに無線のスイッチをオフにした。

 第一世代B-Raidグラムのコクピットは一瞬、静寂に包まれるが、すぐに爆発音が響き渡る。




 数十分前、アグレアス達と別れ、一人グラムの操縦席に着いた彼女は、大きく深呼吸をしていた。

 久し振りの本格的な操縦だ。

 しかも、操るのは第一世代。

 第二世代も相手にするとなれば、一方的な展開になるだろう。


「まあ、魔王様の為ですから! なんとかしますけどね、っと……」

 

 気合いを入れつつ、グラムのメインカメラを王国軍のB-Raidガラティーンへと向ける。

 白いボディの機体は現在、ベインタワーの正面玄関付近から、手にしたマシンガンで内部へ銃撃を加えていた。

 建物の外側、玄関前スロープよりも手前の曲がり角にいるエリナとグラムの姿など全く見えていないだろう。

 即ち、奇襲のチャンスだ。


「だけど、こちらは手持ちの武装無し。どころか片手が吹っ飛んでいる。……ですから、ええ、得意の戦法でいきますよっ!」


 ペダルを踏み込み、急加速。

 予め設定を弄って、加速器の安全制限を外してある。

 その加速度は、通常の人間ならばGの負荷で意識を刈り取られる程だ。

 それを、エリナはパイロットスーツ無しで敢行した。


「───っ!」


 カメラに映る景色が超高速で後ろへ流れ、大型のハンマーで全身をまんべんなく殴られ続けているかのような負荷が身体を襲う。

 しかし、エリナは微かに呻き声を上げ、それだけだった。


(……魔王様ノ為なラば……ッ!)


 変化といえば、些細な事。

 目の白目の部分に、薄い黒が混じっただけだ。

 ただそれだけで、エリナは何の痛みも感じていなかった。


 そして、グラムが宙を突進し、スロープを飛び越してガラティーンの背部へと突き刺さる。

 巨大な二つの鉄の塊が戦闘機もかくやという程の速度で、激突。


 その勢いのまま二機はタワー内部へと飛び込み、多くの人民軍兵士らやバリケードを巻き込みながら、ロビーを火花を上げながら滑った。

 やがて、その勢いは止まったものの、立ち上がるのはエリナの乗るグラムだけだ。


 ガラティーンのパイロットは気絶してしまったらしい。

 グラムに巻き込まれなかった人民軍や王国軍兵士らも、突然の出来事に呆然としている。


「あれ? 皆さんなんだか静かですね。おや、こんなところにマシンガンが」


 激突、というかぶちかましの衝撃でガラティーンの手から離れた火器をグラムは残った片手で拾い上げ、


「さぁ、魔王様の為にこの場をかき乱します!」


 人民軍も、王国軍も、ただ周囲に存在する物体に対して見境なく乱射していく。


 いや、混乱に乗じて正面玄関を密かに抜けていく二人の人物……アグレアスとアカネを撃たないように気をつけて、ではあるが。

 傍目からは、狂人の凶行にしか見えないのだった。 

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