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超機械文明に魔王が転生したならば!  作者: Per猫
第二話「魔力黎明」
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2-10 防衛部隊2

◇



 一隻の航空巡視艦が、夕暮れの空を飛行していた。

 大陸西部のカラーである、青に染まった艦艇だ。

 備え付けられた主砲、副砲群の数こそ少ないものの、装甲と機動力の両立に成功している。


 アルテリア防衛部隊保有巡視艦、旗艦「ゲッコー」。

 その会議室にて、少女が赤い髪を振り乱し、服装が白で統一された男達に食って掛かっていた。

 アカネと王国軍だ。


「ですから、先程から申し上げている通り! 私達、防衛部隊の出動にこれ以上圧力を掛けないで頂きたいっ!」

「おやおや、圧力とは心外な。我ら王国軍がそのような事をしたなど、証拠でもあるのですかな?」

「くっ……! だが、王国軍と都市政府との癒着は明らかだ!」

「ハハハ、それこそ証拠はどこにあるのですか!」


 西に派遣された都市監査部隊の指揮官、ロバート・メサ中佐はその豊かな鬚を撫で、豪快に笑い飛ばした。

 長い机を挟んだ向かい側、アカネは椅子から完全に立ち上がっていた。

 対するロバートはどっしりと肥った身体を椅子に埋(うず)め、余裕の表情だ。


(ほんっと、何度会ってもイラつく奴ねぇ……っ!)


 二人は王国と都市の代表として何度も何度も顔を合わせている。

 そしていつも討論に発展し、決まってアカネは敗北を喫していた。

 弁舌の差、と言うにはあまりにも酷い敗北。


 実際ロバートは都市政府の面々と癒着を行っていたが、それを証言するものは誰一人としていない。

 周到な根回しと財力、そして暴力の結果だ。


「どうしても、圧力を止めていただけないのですね……?」

「脅しかな? 無駄な事を」


 醜い顔を歪ませ、ロバートはせせら笑う。

 それは、防衛部隊を完全に舐め切っている顔。

 何も出来ないだろうと、何の情報も掴んでいないだろうと、高をくくっている顔だ。

 アカネは小さい身体を怒りに震わせ、決定的な一言を紡ぐ。


「……私には、貴方と麻薬組織との繋がりを王都へ報告する用意があります」

「なん、だと? で、デタラメな事を」

「出鱈目ではありません。……つい一週間前も、都市北東部の倉庫で金銭取引を行っていましたね?」


 組織に麻薬を売らせ、取り締まらない代わりに金を受け取る。

 実に簡単な話だ。故に、油断したのだろう。

 組織から巻き上げる金を多くし過ぎてしまったようで、末端から情報と証拠が漏れてしまったのだ。


 本来、アカネはこういった脅しは好まない。

 しかし、やらざるを得ない程に王国軍は横暴を重ねていたのだ。


 壁に整列する白と黒、両陣営の隊員。

 黙しながらも、彼らは相手を威圧せんと激しく火花を散らしている。


「ご自分の状況が、ご理解頂けましたか?」

「くっ……後悔するぞ」


 ロバートが屈辱に顔を歪め、捨て台詞を吐いた。

 と同時、艦内のアナウンスが「ゲッコー」の一五番ポート着陸を告げる。

 調度良い頃合いだ。


「この場はこれにてお開きとしましょう、ロバート中佐殿?」

「ふん、くれぐれもいい気にならんことだな!」

「ご忠告どうも」


(やったぁ! アカネ様の完全勝利よっ!!)


 心の中で高らかに勝ちを叫ぶアカネをよそに、ロバート達王国軍は下船の為に会議室を後にした。

 初勝利。初勝利である。

 毎度の如く苦汁を飲ませれ、枕を涙で濡らす日々は終わったのだ。

 もう、妄想のロバートをボコボコにする必要も無い。


「……えへへ」


 一人浮かれるアカネに、近づく男がいた。

 長い黒髪と落ち着いた雰囲気が特徴の防衛部隊副隊長だ。


「隊長」

「……あっ、えっと……な、何だ?」

「先ほどの脅し、あれは軽率な行動だったかと」


 淡々と、無機質に彼は語る。

 任務には決して私情を挟まず、どんな事があっても冷静さを失わない。

 彼は、アカネが最も信頼する部下だ。


「そう、思うか?」

「ええ、あのロバートという男はやると言ったらやる男です。それに隊長はこの後、懇親会に出席されるのでしょう。恐らく、ロバート中佐も王国軍代表として参加するかと思われます。何があるか分かりません、御注意を」

「なるほど……了解だ、私も気を付けるとしよう」


 彼の言う事は正しい。

 とはいえ、アカネも十分な訓練を受けている。

 それほど緊迫した状況とは思えなかった。


「いえ、それだけでは駄目です。是非とも護衛を付けさせて下さい。危険です」


 ずずい、と顔を近づけ、副隊長は無表情のまま迫った。

 アカネの事になると変に生真面目になるのが、この男の惜しいところだ。

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