プロローグ
ザザザザ・・・・・・
ハァハァハァ・・・・・
「ここまでくれば大丈夫か。」
「追い人無し。この道約30m」
ザザ・・・ザ・・ザザ・・・・
若者は走っていた。暗くひっそりと静まり返った丑三つ時の森の中を・・・・・・
若者は大樹のそばに立っていた。若者は叫んだ。
「お嬢さん。私です。お嬢さん、キジュンです。」
ズザッ・・・・・。
若者の目の前に美しい女が現れた。
「キジュンさん。うれしい、私のところに来てくれて。」
「お嬢さん。」
ヒュッ
ザッ
「キジュンさん、下がって!」
「お嬢さん!?」
二人の目の前には、大柄な男が弓矢を構えて立っていた。
「妖怪美真由の分際で人間に惹かれるとはっ!」
「おだまりっ!」
美真由は大樹に寄りかかる男に爪を向け、一気に引き裂いた。
しかし、男の姿はなくなっていた。
「美真由。」
背後から男の声がした。
振り返ると、そこには若者を生け捕りにした男が、若者に短剣を向けていた。
「キジュンさん!」
美真由は瞬間的に男の背後に回り、爪で一気に引き裂いた。
「お嬢さん。」
「もう、私とあなたは会うことができない。」
「なぜですか!?」
「私の正体を知ってしまった人間は、生かしておくことができない。」
「でも、あなたはかわいそうだから生かしておく。でも、私とあなたは永遠に会うことができない。」
「お嬢さん。」
「ごめんなさい。」
美真由は走り去った。
「お嬢さん!」
若者は、その場で崩れ落ちた。