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4人の戦い(元狂王)

空に色が混じる。

雷の黄色と風の無色、そこに広がる微かな赤と紫の光、凄まじいまでの文字が空を舞う。

ファルベ大教会の空は荒れ模様、世界が崩壊するのも時間の問題であるように思えた。



「ハハッいいねいいね!久しぶりのお祭りだぜ!」


「…この脳筋共がッいい加減にしておけよォ!」



出現する大きな火球。地面が燃え、見える足場は残りわずか。

赤毛の男が心からの笑みを浮かべている。

この状況を純粋に楽しんでいるようだ。それがこの白髪の美少女には気に食わない。



「そもそもなんでてめぇがいるんだ、山に引きこもってたんじゃねぇのかよォ!」


「ん?そんなの、面白そうなことやってるからに決まってんだろ?それ以外に理由がいるか」


「…流石の戦闘狂だぜ、でもこれ以上この場を引っ掻き回させてたまっかよォ!」



白髪の少女はその小さな体を大きく飛躍させ、空中に無数の文字を描く。

やがて空間を捻じ曲げ出現する、巨大な腕。

鎖が抑制せし黒光りした巨神の腕、この周りの建物すべてを凌駕する大きさのそれはただ一点を目指して飛ぶ。

赤毛の男はそれでも余裕を崩すことはしない。

右手から放出した同じほどの火球を投げつけた。

巨神の腕と火球は互いに拮抗する、辺りの瓦礫がその衝撃によって弾けるが至って憮然と構える4人の人間。


紫髪の彼女はその両腕に鎌を持ち、辺りを見回す。

残った足場の下は先程の力によって地面から湧き出る溶岩が見え始めていた。

気温は急上昇をとげ、息をするのさえ苦しい。

全身に汗が湧きだし、彼女の纏う扇情的ともいえるパレオは肌にくっつきより彼女の体を際立たせる。

それに構うことなく見つめる先に二人の戦いの姿がある。

一人は緑髪の美女、ロザリオを無数に纏わりつけた彼女には変化が見えない。

目の前の黒髪美男を牽制しつつ、次の攻撃を練り上げんとしていた。

一方黒髪の中性的な彼は辺り一面の惨事に顔をしかめる。

教会はその外観の殆どを損ねてしまい、雷を風を炎を巻き起こした室内は下に溶岩が見えるほど抉れてしまっているのだ。

しかも何故かやってきた3人の乱入によって状況はさらに激化してしまい、ご覧の有様。

だがここで彼が止めるわけにもいかぬ。

既に匙は投げられていた、ならばある程度の結末を皆求める。


4人の元王達、止めようと来た者もただ見物しようとした者も全てひっくるめて教会は今にもその欠片一つ残すことはなく消滅の道を歩まんとしていた。



「…流石にこれ以上は、王都が崩壊する可能性がある。」


「ならばまた御作りになればいい、貴方のファルベでございます。この世界は貴方の手にゆだねられているのです。」


「全く持ってその考えには理解は出来んが、バルツァが褒められているからまあ良しとしよう。」


「物騒なこと口走ってやがんなよグリュン!俺様の居場所が、黒聖警軍無くなったらてめぇを真っ先にぶっ殺してやるからなおい」


「いいねいいね、漢の戦痕みたいでかっこいいぜ。オラもっとやろうぜ!」



混沌を極める教会、雷は未だに鳴り響き溶岩を打つ。

風は溶岩すらも巻き上げ、当たれば爛れる危険物質を上空にやる。

火は溶岩を取り込み、この場にいる皆を溶かさんとしていた。

文字は空を黒く染め、幾つもの生命がその場に誕生する。

壁は足場となり光は視界を遮り、水は溶岩を冷やす。

まるで現実味のない戦い、まるで神話に伝わる神々の創世記。

魔法もない技術だけの世界において、これは正に夢でも見ているかのようであっただろう。

もしこの場に一般人がいたとして、その目に映る光景は一生心に刻まれるだろう代物。

天を作り地面を形成しうる存在、それが彼ら元七狂王の4人であった。



「世界の終わりが、近づいている。そう感じずにはいられません。」



一人の女性は呟く。

彼女のいるところからは王都全てを見下ろすことが出来た。

勿論ファルベ大教会と呼ばれる黒毛の怪物も目にすることが出来る。

その薄茶色の頭には小さな冠が存在し、彼女が何らかの権力者であることを如実に表していた。

上空は黒い雲に覆われ、雲行きが怪しい。

雨でも降りそうな空模様、それにも増して激しさを増す一角の化け物の巣窟。

王都に住まう人々は震えあがった。

地面が激しく唸り、家はその姿を維持できない。壊れるのは家か人々の心であろうか。

だがそれでも動じない女性、寧ろ喜ばしいことのように口元を緩めた。

女性にとってこれはまたとない機会である。

王都が崩壊しようとする今、世界が壊されんとする今、動けるのは彼らのほかに彼女以外の誰がいよう。


彼女はその美麗な姿を人前に晒す。

思わず見惚れてしまう程の容姿に、一時の静けさが訪れる。

そしてその姿に皆気づいた時、頭を垂れ地面に手足をつけた。


彼女こそこの国の王女であるセクトヴァン=ラミエッティ=クトレイシア=アメイ。

薄茶色の髪が靡き、その双眼には強い意志が宿る。

知性を感じさせる黄金の瞳、雰囲気は他者をひれ伏し圧倒させる。

白銀に光る鎧、長スカートに映る群衆の嘆き。

全てを形容して、彼女が彼女たらしめんとする。

彼女は悲観を通り越して悲痛な表情を浮かべる愛すべき国民に言葉をかけた。



「だが私たちはただそれを見ているだけしかできないのでしょうか。何故立ち上がらない、何故武器を取らない、何故抗おうとしない?」



希望の光を見るような幾つもの視線が彼女に突き刺さる。

しかし彼女にとってそれは日常茶飯事であり、顔にはより一層の凛々しさが宿っていくように感じた。

輝かしいほどの眩しい光、目を見開くこともままならない。見つめ続けることが難しい、見ていられない。

光は冷え切った心の氷を融かす様にして浸透していく。

彼らにとって彼女の言葉は神が告げた言葉であるように思えた。



「教会にいるのは私たちの想像を絶するものかもしれません。でもこのままでいいわけもないですよね。」


「ならばどうしましょうか、私は何もしません。何もすることが出来ません、貴方達皆がこの状況を好転してくれることを私は願います。」



人々は武器をとる。

大きな大人の男性も、普段は家事に精を出す主婦も、子供や老人でさえその手には思い思いの武器をとる。

彼らが向かうのは勿論ある一点だ。

その為の道は幸いなことに崩れてはいない。

彼らは走り出す、理由は分からない。本人たちでさえこの激情の正体は掴めていない。

だがそれでいい、何も考えずに済む。彼女の言葉がこの胸に宿る限り彼らは行進を止めはしないだろう。

そう、それは仕組まれたシナリオ。操られる群衆、ほくそ笑む王女。

未だ大地を歪める4人に思いを馳せながら、再び彼女は王城へと戻って行った。


その後を紅の一線が追うことも構わずに――――


次回予告

予告が予告をなさいので今回はノーコメントで

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