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説明回(事細かく説明するとは言ってない)

※赤神朱音視点です

あれは照明だろうか、いやになるほど明るい。暗く淀んだ私の心をまるであざ笑うかのように感じて気が滅入ってしまう。

横を見渡すと視界を遮る白いシーツ。それは何かイケナイ事をしているみたいで少しドキドキするけど、それはきっと気のせいだ。

私は今とある病室のような場所に寝かされていた。病気ではない、体の調子はすこぶるいいのだ。

ただ自覚がないがある男に私は操られてしまっていたらしく、その後遺症がないかどうか調べる為にここにいるのだと先程までいた医師は言っていた。



(んー…どうもそこの記憶は曖昧なんだ。何かから逃げていたっていうのは覚えているのだけど)



あの時の堂ケ崎久音(今はキューニェ=ドグラーニャと名乗っているらしいが)は鬼神の如き面持ちで森の中へと進んでいた。

その後姿を見ながら恐れからか、はたまた歓喜に満ちたのかは分からないが人知れず薄く笑みを浮かべた私。

目白木くんが動けなかった中、私は彼から頼まれた荷物を背負い嬉々として足を踏み入れたはずだった。

しかしそこで思わぬ邪魔が入り、命からがら何かから逃げた。

何をそれほど恐れたのかは曖昧で不透明なままだが、兎に角それからの記憶はないに等しい。

何処かを歩いていた、暗く嫌に近代的で配線が露出したままの通路を。

隣に誰かいたような気はする。でも分からない、それしか記憶は残っていないのだ。

次に目が覚め記憶に残るのは堂ケ崎久音の背中にいた私。

意味が分からなかった、下ろしてくれと彼に何度懇願したことだろう。

でも聞き入れてはくれず、彼は自らの胸の内を吐露した。

聞いた内容は信じられない内容ばかりで、正直今だって嘘ではないかと疑っている。

ここが異世界で、彼は今までそういうところを旅していて、私たち以外の同級生は皆死んでしまったなどすんなりと信じられるものではない。

他の4人にも同様の話をしたらしい彼の言葉はにわかに信じがたい出来事ばかりで、まるで現実感に乏しい。

ならば彼を嘘つきだと、何故そうなる前に早く助けなかったのだと言及するわけにもいかなかった。

私たちは結局何もできなかったのだ。彼に全ての責任を負わせるのは些か都合がよすぎるだろう。

それは私以外の者たちも感じていたらしい。彼を強く非難する声は一切あがらなかったのだと言う。

逆に私たちは彼に感謝しなくてはいけない立場だ。命があるだけ儲けもの、死んでいった者たちの無念を晴らす意味でもより一層の生を謳歌しなくては。

そう思い至ったところで突然私の周りに遮るようにして存在していた白いシーツは取り払われる。

顔を出したのは人のよさそうな優しい笑みを浮かべる医師だ。

彼は眼鏡がずり落ちそうなのを支えて、最初の一言を告げた。



「バックホームさん検査はこれにて終了です。ですが少し問題が生じています。」



体にかけられた薄い掛け布団から身を起こす私に苦虫を噛み潰したように渋い顔をした医師がぽつぽつと話し始めた。



「実は貴方に着けられた鎧。『魔人スーツ』と言われますが、これは人が着ていいものではありません。」


「よくて廃人、悪ければ着たまま体が膨張し破裂するなんてのはよく聞く話です。ですが貴方にその傾向は見られない。」



彼のつぶらな瞳が私を奇怪な人であるように見つめている。

内容としてはよくわかりませんでした。魔人スーツ?死ぬ?だったら何故私はここにいるのでしょうか。

その鎧というのも理解出来ません。私は今ひらひらとした布一枚をくりぬいただけの姿。

それ以外には何も身に着けていませんし、鎧なんていうほど重量のあるもの私は好きじゃないです。

手数の多さこそ我が神楽流の特徴であって、そんな自らを縛るようなそのような真似やれるわけもない。

ですが確かに言われてみれば少しの違和感はあるのです。どことなく気だるさにも似た重さが、こう、体にのしかかっているような…

動くのには支障ないのですが違和感はぬぐいきれず、まるで自分の体ではないかのような感覚に襲われます。

これを鎧の影響だと言うのならそうなのでしょう。私自身よくわからないのです。



「…貴方が着ているのは初期のスクラップもどき。余りの燃費の悪さと使い勝手が悪すぎると即開発が中止されたといういわくつきのものです。」


「白銀の鎧『ロイヤルザプラチナム』。貴方は普通の人族ではないようですねぇ」



医師の顔がさらに強張るのが分かった。

普通ではない―――確かに私の体は普通ではないでしょう。数多の修業を試み沢山の血を浴びた私は最早修羅なのかもしれません。

事実私には記憶がないですが敵の建物一つを破壊しつくしたそうです。

手に握られていたのは唯の鉄棒であったと聞きます。それだけで私は破壊の限りを尽くした。

勿論私と同等に渡り合った人がいたからこそこまでの被害になったと思いますが、人間業ではありませんよね。

では私はどうすればいいのでしょう。こんな時こそ医師さんの意見を聞こうではないですか。



「…わたし、どうすれば?」


「それはですね、そ「おーいここにいやがるのかバックホームっつう奴はよォ!?」」



私の質問に答えるように口を開いた医師の言葉を遮り、少女の声が間に入る。

声の感じから凛としたというよりはお転婆な元気っ子のイメージを私は思い浮かべました。

そしてそれは遠からずも当たることとなります。

白いシーツを強引に放ちずかずかとここにやってくる少女はフリルをふんだんに使ったゴスロリファッションでした。

これまた全身白です。肌は限りなく白に近く、髪も真っ白できめ細かい。

唯一他色があるとすればその紅にも光る真っ赤な瞳だけでしょう。

まるで猛獣のような獰猛さを感じさせますが、見た目は唯の美少女です。

歳は9歳ほどでしょうか、そんな子供が私に何の用があると言うのでしょう。身に覚えがありませんね。



「…わたしがバックホーム、なにかよう?」


「ほぅ貴様が、なァ。こいつは面白れぇ他の奴らとは何もかも違うようだ。俺たちの同類ってか?」



鋭く尖った八重歯を魅せ、豪快に笑ってのける少女。

美少女としての違和感はあるが、彼女にはそれが似合う。きっと彼女の本来持つ気質からくるものだろう。

だが私の今後を決める大事な話を今から聞くところなのだ。邪魔はしないでいただきたい



「そんなのは後にしろ。今はこっちにこいバックホーム、他の仲間とやらもあっちの部屋でお待ちだぜ?」



他の仲間とは目白木くんや安藤くん、早乙女さん達のことだろうか。

彼女の指さすその方向に彼らが待つと言うのなら行かねばならない。私が守る、そう決めたのだから



「…っち、お前あいつに似てやがんなァ自分が正しいと思ったことを曲げねぇ強情なところとかよ。」


「…強いものが弱いものを守る。これは当然」


「おいおいこいつはアイツ以上に重症だぜ!…まァ頑張ってくれたまえバックホーム。その先に何が待っているかお前も知るがいい」



最後は呆れを通り越した強い怒りの感情を込めながら、彼女は振り向くことなく病室を後にした。

私もそれに続き医師に断わりを入れてから追いかける。

彼女の歩くスピードは常人にはまず追いつけない速さだった。体の調子がいまいちな私は何とか遅れないように着いていくのがやっと。

これは完全にこちらを試しているということでしょう。付き合ってやる義理もありませんし、早くその部屋とやらにつきたいです。

あれやこれやと数分の間追いかけっこに等しい歩き合いが発生し、等々ついた先は何の変哲もない普通のドアの前でした。

彼女はその扉に手をかけ、小さく声を漏らします。



「…ふん、やっぱり気に食わねぇ」



とそんな声が聞こえたような気がして、見えた扉の先は私の想像を絶するものでした。



「ようこそ我が無唱空間プライベートスペースへ。俺様はお前たちを歓迎する」



現れる無数の文字群、部屋の中は重力などないに等しく家具は縦横無尽に浮かんでいます。

上下との間隔はなく、奥行きは計り知れない。どこまで続いているように感じます。

泳ぐようにして彼女は部屋の中心に置かれた透明の球に手をかざす。すると今まで認識さえできなかった私のクラスメートたちの姿を確認できました。

皆同様に驚愕に打ちひしがれています。信じられないというような目で彼らはまだ9歳ほどしかない少女を見つめるのです。

彼女はそれらの視線を浴びながら高々に宣言するに至りました。

まるで演説でもするかのようにはっきりとした口調で紡いだ言葉は始まりの鐘、始まりの音頭を表しています。



「これよりお前たちに魅せてやろう。この世界の歴史や文化、そして君たちの知る奴とは違うそんな一面もなァ」



強い光の下見えてきたのはこことは違う別の景色。

私は楽しみでなりませんでした。堂ケ崎久音の過去、その一端でも見ることが出来たのなら自分はもっと強くなれる。

そんな予感がしたのです。彼とは何かつながりを感じます。それが何であるのか、今の私にはちっとも分からないわけですが。



「一々説明がめんどくせぇから、映像でお送りするぜ。目ん玉かっぽじってよく見ておけよてめぇら!」



目の前には大きなスクリーンのようなものが突如出現し、映像を出力する。

さぁこの世界の全てが明かされようとしている。全ての過去、この世における私たちの意味。

見つめる先はそれを伝えるスクリーン、出力するは透明の球だった。

何があろうと受け止めようと決意を固め、私はそれを真剣に見つめ続けた。














「…まァこんなところだ。理解できたかい愚者ども」


「おい愚者とは少々言い過ぎではないかロクタヌ支部長?この子たちは何も好きでここに来たわけではないだろう。もう少し優しくしてやれ」


「…ちっアイツの仲間だと分かるやこの甘さかよ。相変わらずだなお前!」


「…否定はせぬよ。バルツァに嫌われたくはないから甘くもなろう。彼がこの者たちを仲間だと言うならな」



二人の女性の会話が聞こえる。しかしそれは風のように流れてしまう。

流れた映像はこちらを驚愕させるには十分の内容であった。

説明された内容を簡潔にここに表すとしたら以下の通りである。


1)この世界は平面世界で世界の端っこは死後の世界に抜け堕ちる『ヘル』へと繋がっている


2)人種としては八つ存在し、お互いによくは思っていない。具体的には竜人族や鬼人族はひ弱な人族や獣人族を下に見ているし、エルフ族は妖精族以外の種族を全て野蛮な種族として口をききすらしないなどなど民族間のわだかまりは深い。


3)7つの自治区の存在、お互いに対立している。


4)堂ケ崎久音は突然の赤王死、紫王と白王の相打ち、黄王との一騎打ち、青王に操られた緑王を殺す、青王との対決、最後に真の黒幕である紅姫を倒したそうだ。その後法を定め姿を消した。


5)その後をエウノミヤさんは引き継ぎ、鎧を持って敵勢力を抑圧。その後何とか内政をより堅実なものとするべく新たな王を定めた。


6)現在狂王4名の転生を確認。モルナ=リズフィード、ロクタヌ=ラグウンディ、緑王、赤王


7)敵は『アポピス』という得体のしれない王国奪還を目標とした団体。その全貌は謎に包まれ、『魔人スーツ』なる存在も最近ようやく知れたとのこと



それ以外にも細かい説明も勿論あったが、私は戦いの映像に全ての目が行ってしまった。

どれもこれも人間業ではない、壮絶な戦いであった。

このような勇敢な戦士と共に私はこれまで知らずに退屈な学校生活を送っていたのかと思うと、自分が情けなく感じる。

何が『剣において右に出る者はいない』か。私よりよっぽど剣を磨き、剣と共に彼は生きている。

また七人の狂王と呼ばれた者たちも一応に悲劇な運命を背負っていたのだと、納得が出来た。

世間から騒がれるほど彼らは狂っていていたわけではなく、ただ運命の歯車がうまくかみ合わなかっただけのいわば被害者。

机上を行ったり来たりするジョーカーをたまたま引いてしまったのと同じ、そこに同情が出来なくもない。

だが今彼らは前を向いて歩こうとしていた。これからを生きるのだと強い意志を持つ。

それを憐れむのは違う、私たちもここに囚われた旅人。生きていくために私たちも前を見つめなければならない。




「…大体のことは分かったよ。でも、だから僕たちにどうしろっていうのさ、僕たちはとてもじゃないがそちらの戦力にならないと思うんだけど」



私の足下の方で声がした、その声の主は先程まで満身創痍の怪我を負った安藤清詞その人だ。

よく見ると怪我の全ては完治しているようで、元の制服をきちりと着こなしている。そのどれもに包帯はまかれていなかった。

私はそのことに少しだけ安堵する。彼の怪我は死に直結とはいかないまでも酷い状態であったからな。

ここの医師たちはとても優秀なようだ。心なしか早乙女愛華の顔色もよくなっている気がした。

彼は言う、戦力になりえないのではないかと。間違ってはいないだろうと私以外のメンツを想い、それに至る。

私は兎も角として他のみなは誰も彼も少々運動をやってますよレベル。とてもじゃないが戦うなど、まして彼の隣に立つなど出来ようはずもない。

彼らにはまだその資格も、権利もありはしない。覚悟だって固まっていないはずだ。無理はするべきじゃないのだ。

無論私にその資格があるとも同様に思えないが




「…まァそうだな。これまで散々説明してきたが、お前たちがこのまま駒として使えるとも思っていねぇ。アイツの仲間だってことで説明してやっただけに過ぎねぇよ。」



返ってきたのは無慈悲な冷たい視線だ。

彼女はこの小さな身ながらも流石は王であったものだと感心するほどの威圧感を放つ。

後ろの方では先程説明役に徹していたモルナさんも沈黙を守ったままだった。

そう、私たちは結局彼の役には立てやしないだろう。このままでは足手纏いにしかならない。

それは皆感じていることだろう。安藤清詞は悔しそうに視線を外す。

だが彼女はそこまで言い切っておきながら思案顔で何かを思い出したかのように言葉を絞り出した。



「だがまァ使えないってわけでもねぇか。アレをやればこいつらでも、あるいは。」


「おい、ヴァイス貴様もしかして、本気か!?正気の沙汰ではないぞアレをやるなどと」


「そっそうです。ヴァイス様!彼らには危険すぎます。一歩間違えば死んでしまうかもしれないのですよ!?」



とっても物騒なことを話している。

死んでしまうとかなんだとか、不敵な笑みを浮かべるのはロクタヌ=ラグウンディのみで他の二人は隣に居て彼女を止める。

しかし彼女にとってこれは決定事項。八重歯も怪しく光りその言葉を彼女は告げた。



「お前たちには修業をしてもらう。過酷な修行となるだろう、あるいは死んでしまうかもしれん。でもな、このままではアイツの重りが増えるだけだ。それは得策じゃねぇ分かるよな?」



頷くしかない、彼の強さを過去の映像ながらこの目で見た彼らに選択肢は最早なかった。



「…つつ異論はねぇみてぇだなァ。よろしい、ならば修業開始だ愚者共。俺様直々に鍛えぬいてやんよォ」



彼女の真っ赤に燃える紅の瞳がより一層怪しく光った、そんな気がした。

細かい設定などは今度設定の章で上げときます・・・


次回予告

彼ら4人(ナチュラルに森脇君をはぶく)修業が始まるが、そのころ主人公は教会へとその足を進めるのだった――――

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