待ち構える新キャラさん
赤や青や白や黒、全ての色が均等に混ざって虹色のように見える建物たち。
目の前には目を閉じてしまいたくなるほど鮮やかな光景が広がっている。思わず見惚れてしまう一同に声をかけるのはモルナだった。
彼女は森の中で着ていた戦闘服をそのまま普段の生活でも着れるものとした服を身に纏い、憂いを込めた表情でこちらを見つめつつ言葉を綴った。
「…とてもきれいな景色であろう、この国の王都と名乗るだけあってかなり力を入れたらしいぞ。」
モルナは文面上この景色をほめていながらも一瞥もすることなく俺たちの前を悠然と歩く。
こうしてはいられない、遅れてはならんとその後を総勢二十名になろう彼女の隊員たちと生き残った五名の我がクラスメートと共に追った。
現在俺たちがいるのは王都の中心から少し離れた黒聖警軍本部。
見上げるほど高い大きな円状の建物には窓らしきものすら見えず、どこか要塞を思い浮かべる外観である。
建物の中も入り組む迷路のように複雑であり、もしモルナたちがいなかったのならとっくに迷ってしまっていたことだろう。
迷いなく進む彼女たちを慌てて追いかける俺たち、階段をいくつも上り下り。
つく先も見えず不安ばかりが募る。するといきなり彼女たちはその場に立ち止まってしまった。
目の前には茶色く無機質極まりない大きな壁がそびえ立つのみで他には何もない。
しかし彼女は動かない、まるで何かを待つようにじっとその場に佇むのみだ。
「…あのぉ何をしているんですか?早く、先に行かないと。」
いつまでも辿り着く気配すらないモルナに肝を冷やしたのか早乙女さんは申し訳ないといった具合ではあったが、モルナに質問を投げかけた。
早乙女さんの後ろにいる森脇くんも目白木くんも、包帯を全身に巻いて赤神さんに肩を抱かれつつもその場に悠々と立つ清詞も同様にこの状況に少なからず苛立ちを感じているようだった。
対して俺と赤神さんは無表情を決め込む。その仮面の下では何を考えているのか誰にも悟ることなどできないだろう。
赤神さんはどうだか分からないが、俺はモルナを心から信頼している。彼女が意味もなくここに留まるはずもない。
ここに仕掛けでもあるのだろう。これまで歩いた本部内へと続く道はここに来るためのもの、そうなんだろうモルナ。
「何、そう急かすでない。今開くだろうさ本部へと続く本当の道が。」
モルナの発言を他の五人が深く吟味するよりも前に目の前の壁に変化が訪れる。
今まで茶色く薄汚れた印象にあった壁、周りの壁と遜色ないその壁が少しづつではあるが開こうとしていたのだ。
開かれる速さは限りなく遅いが確かに動いている。
中からの光がこちらを淡く照らしていく。
暖かさすら感じるその光に包まれると見えたのは先程までの歩いてきた道が嘘のような綺麗に整頓された廊下である。
五人の高校生がいきなりのことで立ち止まり困惑の表情を浮かべながらも、彼女たち特殊部隊には何かとやることがあるようだ。
視界が完全に開けた瞬間に特殊部隊の皆は散りじりとなり、既に近くには存在していないのである。
これには俺も少し驚いてしまった。
「…アンドゥ―とやらはあちらの医務室へ行くとよい。あそこなら最高の治療が受けられる。そうなるとサウトゥーメも医務室かのぅそう伝えておくとするか。そしてモリィワとメジィーロとバックホームは一応能力開発室におるリリン博士を訪ねよ。洗脳とやらがまだ解けていないかもしれんからな。」
モルナの言われたとおりに次々と俺のクラスメートはそれぞれの場所へと移動していく。
それに彼女たちの意思は関係なくただただ連行されるように、この場を去った。
半場強制的に、ではあるがやらねばならないだろう体の休養のためである。
ここは我慢してもらいたいものだ。
そして早くも皆目的の場所へと移動していき、残ったのはモルナと俺だけとなる。
彼女の従者たちはここに入ることを許されず馬車の中で待機していたので本当の二人っきり。
俺はどこに行けばいいのだろう、体の調子は悪くないし彼女の付き添いと言うことになるのだろうか。
俺は彼女の言葉を待つ。
しかし彼女はただ穏やかに笑うのみで、いつの間にか隣へと移動していた。
「…さて二人きりだなバルツァ。少し、そこら辺でも歩こうではないか。」
そう言いながら彼女の腕は俺の左腕をしっかりと捕まえる。
モルナが寄り掛かった俺の体には彼女の体温が伝わっていく。勿論胸の柔らかい感触も伝わって、非常に恥ずかしい。
今は二人きりこうして立っているが少し進めば本部勤めの隊員もいることだろう。
そのような中まるで恋人であると強く主張するかのように歩く必要はあるだろうか。
いや必要ないだろう。
でもでも男として、このままでいたいと告げる自分も存在しているのも事実としてある。
どうすればよいか俺には分からぬ。このまま繋がったままを良しとするか否とするか、俺に選ぶことは出来ない。
「…もっモルナ、さん!?そっそのどちらまで、行けばよろしいですか?」
「ふふっとりあえず奥の部屋まで、だな。それまでこうしていようではないかバルツァ。」
完全に密着した形となり歩く廊下はどれだけ長いことか。
周りの視線を集め、その顔には驚きを隠せないといった隊員たちの姿。
注目されることに慣れている俺であっても流石に今のこの状態は恥ずかしすぎる。
自然と早歩きとなるのはごく当たり前の事でそそくさとその場を立ち去っていく。
普通このような時は女性の歩みに男性は合わせるというのが筋であろう。
しかし俺としてはそのような余裕は皆無に等しく、モルナも普通とはかけ離れた女性であったので事なきを得たが決してよいことだとは思えない。
思わないが、仕方のないことだろう俺には女性への免疫がないにも等しいのだ。
俺に近づいてくれるものもここ最近ではめっきりと減り、いつしか一人でいることが多くなっていた俺はこの場面でどうすればいいのか分からないでいた。
といえども俺たちの早歩きは普通の人からすると走っているのと変わらない。
奥の方にあったはずの扉はもう目の前に近づいている。俺は最後の力を振り絞って何とか扉の前へと歩みを進めることが出来た。
「ふふっよい心地であったぞバルツァ。そなたの隣はやはり落ち着くな。」
「…いや、くっつきすぎだ。恥ずかしくて死んでしまうかと思ったぞ。」
俺とモルナは奥の部屋へと向かう扉に立つ。
他の扉は半透明となっており中の様子がうかがえたが、ここは別らしい。
俗世から隔離されたかのようで拒絶の意思をひしひしと感じる。
その敵意にも似た扉の雰囲気に少しだけ冷静になった俺は何とか言葉を紡ぐことが出来た。
「その程度で死ぬ弾ではないだろう。…少しは私にサービスをしてもいいと思わないか?」
「…まあ確かに、モルナはよくやったと思うが。」
俺はここまで来るまでにしてきたモルナの所業を思い出す。
彼女は王都へとたどり着くまでよく俺たちの健康状態を気にかけていた。
献身的ともいえるその姿は正に隊長の鏡ともいうべきだろう。それに彼女は日本語を理解することが出来たので、伝達役にも買ってでた。
食料や乗ってきた馬車とやらも彼女の資産の一部らしい。
道理で隊員たちが乗っている馬車よりも豪勢であったはずである。
また近くに同級生たちのお墓を作ると彼女はそう言ってくれた、これで少しは彼らも報われるだろう。
などなどモルナはよくやってくれていた。俺たち5人を安全にここまで送り届けた。
それだけでも十分褒美を受ける権利はあると思う。思うが、モルナは本当にこれでいいのか。
もっと彼女には幸せになって貰いたい。
そう考えるのは俺の身勝手な考えだろうか。
「…しかしこれだけというのは、何というか、モルナに悪い。何か他にやれるものがあればいいんだが」
「よい、私にはバルツァだけいてくれればそれで。」
後ろからギュッと抱きしめられる。
俺は戸惑いを隠すことが出来なかったが、密着するモルナの体は少し震えていた。
俺は少しだけそのままでいることにした。
彼女には色々迷惑をかけている。
俺と言う存在をここまで信頼してくれていることに嬉しく思いながらも恥ずかしさだけが募っていく。
そして数十分その場に立ち動かないでいると目の前の扉が勝手に開いていくのが見えた。
重厚な扉だったらしく耳を塞ぎたくなるほどの不快音を立てながらも開いた先には白髪の少女の姿。
ふてぶてしくも両手を腰に当て、不愉快が前面に出ているかのような態度だ。
眉間にしわを寄せこちらを睨んでくるその少女に俺は覚えがある。
そう彼女は正しく―――――
「…全く、いい加減にしろよ貴様らッ俺様が待っているんだから早く扉を開けて顔を見せやがれってんだッ」
漢らしくも荒々しい自分勝手な少女、彼女はかつて『白雪の暴姫』と呼ばれたヴァイス=ク=ブレッヒェンその人であった。
モルナ「さてこれから皆のことは何と呼べばいいのかな?」
目白木「(ここは少し英語感を出すか…)メジィーロでお願いする。」
森脇「(なんでメジロギじゃねぇんだろう。まあここは乗っておくか)モリィワで」
早乙女「(ふぇ!?これは流れに乗らなきゃいけないの、かな?)さっサウトゥーメで、お願いしますぅ」
安藤「(早乙女さんかわいすぎるだろう…)あ僕はアンドゥ―でお願いするよ。」
赤神「…バックホーム」
モルナ以外の一同「え」
赤神「バックホーム」
堂ケ崎「…理由を聞いてもいいかな赤神さん?」
赤神「…みんなで必ず家に帰るんだって気持ちを込めて、みた。」
一同「…おぅ」
みたいな会話があったとかなかったとか
次回
新キャラ七王の一人さんが暴れだす!一体何がどうなったんだッ!?




