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異世界にはもう慣れました サウザンド!  作者: 八七月
第二章 魔人スーツ研究所
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朝起きると起きたイヴェント

ユニークが5000を超えました!ありがとうございます!これからも頑張って参りますのでどうぞよろしくお願いします。

目覚めの朝、太陽が何とかその重い腰を上げると一寸先も見えずに暗闇に包まれていた森に暖かい光が差し込んだ。

今まで気温の低かった夜であったということで、森にとってそれは恵みの光であったと愚考する。

鳥たちも元気よく囀り始めていて、何とも清々しい朝だ。



「…よし、そろそろ起きますか。」



俺堂ケ崎久音は、ある程度の重さを感じさせる布団を翻して、今まで暖房に使っていた電子機器をまた元の空間に戻していく。

ちなみに電子機器は、全部日本にある自宅から拝借したものなので帰りで壊れぬよう細心の注意を払って戻して行く。

しかし数としてはものの3つほどであった為、すぐにもそれは片付いてしまった。

現在の時間としては午前5時ほどだろうか?日の出をようやく迎え、お年寄りはその身を起こしてラジオ体操でも開始しているだろう時間帯である。

すこしだけ廊下に出てみるとまだまだひんやりとした冷気が小屋全体を包んでいた。



「…体調は至って良好、と。絶好の救出日和ってか。」



俺はその場で大きく伸びをする。

元仲間であるモルナの魔力を吸い取った所為からか随分と体が軽い気がした。

これなら今日の救助作戦は、ある程度無茶したとしても何とかなりそうなものである。

俺は廊下に出るため開けたドアを閉めて毎日の日課になっている筋力トレーニングを静かに開始した。

常人には真似しようにもできぬであろう体の関節全てを稼働させる柔軟運動やスキルを用いた重力トレーニングも行い、軽く汗も出てきた頃合いに部屋の外からかすかな声が聞こえてきた。

いくら人より聴覚が優れている俺でもここからでは内容すべてを聞き取ることはできない。

わかるのはそれがけして友達と話すようなフランクな会話ではないということだけだ。



「…モルナの言っていた増援だろうか?早朝からご苦労様なことだな。」



昨日あった説明通りに増援が今この時到着したのではないだろうか。俺はそう考えた。

理由としてはまずモルナの気配がこの小屋にないし、従者の気配も丸々消えてしまっている。

あるのは今も療養中であろう清詞の気配とそのそばで佇む早乙女さんの気配だけだ。それ以外に人の気配は感じなかった。

増援は間にあわないのではないだろいかと疑いをかけていた俺は少しだけその事実に安心したが、それと引き換えにどのようなメンツが揃っているのか著しく好奇心をくすぐられることとなる。

…モルナ直属の部下たちである以上、軟弱な輩ではないと思うのだが知的好奇心は尽きることはない。



「…少し覗き見でもしてみるとするか。気配を消していればバレはしないだろう。」



俺はトレーニングによって流れた汗を近くにあったタオルでふき取って、黒いカッターシャツに袖を通す。

この森に来る前の服装に着替えて、それではまだ少し肌寒さを感じたのでクローゼットにかけてあった黒いジャケットを羽織る。

そして俺は部屋を後にして廊下に出るとそっと声がする場所へと足音も立てずに向かうこととした。

この広葉樹のような森へと入る時のような、人に見られればかなり恥ずかしい格好をしていたが気にせず向かう。向かう。向かう。



「…ここ、か。声がするのは」



移動を開始して数分も立たぬうちに声のした現場に到着した俺は、物陰からチラリと広々とした空地を覗く。

見えた光景はそこだけ木々が避けるようにして更地となっており、草一本として見えない空間である。

存在するのは数十センチの高さがある切り株に立ったモルナとそれに並ぶようにして立つ従者の方々数名、増援だろうと思われる十数人の同じ格好をした女性が多い部隊であった。

彼女らは真剣なまなざしで目の前の隊長――――モルナ=リズフィードの話を聞いている。

内容は昨日の説明で聞いたよりもより詳細に噛み砕かれた細かいものだったわけだが、大筋では変わりない文面である。

それをつらつらと淀みなく、しかも何らかの凄みを感じさせて言い切る彼女に俺は懐かしさを感じた。


7年前の彼女もこうして自らの軍隊を率いて七つの別々のくにへと遠征へと赴いていたものだ。

当時の俺は王ながら彼女の凛々しく高貴に溢れた後姿を見て舌を巻いたものである。

そして現在もそんな変わらぬ姿を見せるモルナに俺は感嘆を禁じ得なかった。



「…おい。そこいるのは誰だ!ここは一般人が覗いてもいいような場所ではないぞ!」



すると俺の気配が漏れ出てしまっていたのか、特殊部隊の見張りの方に見つかってしまったようだ。

…これは少しめんどくさいことになりそうである。ただちにこの場から立ち去らないと捕まって、取り返しのつかないことになるやもしれない。

しかし相手の気配を探ってみるとすぐ近くまで来ているのが分かった。

今すぐに立ち去ろうとするも相手の視線がすでに俺を捉えようとしていたのだ。

これでは逃げようにも逃げられない―――――そう悟った俺は逆に堂々とした立ち姿でおもむろに能面を取出し、装着する。

能面は比較的ポピュラーな女系の面を採用、見る角度によって様々な表情を見せるとされるお面で能面と言われれば真っ先にこれが思いつくのではないだろうか?

白塗りの無表情はそれだけで怖さがにじみ出てしまっていて、初めての方はまず間違いなく警戒心をあおられることになろう。

そんな護衛の僅かな隙に乗じて逃げ出せればいい。そう思考しての所為であったのだが。



「!?怪しい奴め!そこで何しているか!」



瞬間俺の姿を見つけた護衛は、狙い通り一瞬息をのんだもののすぐにこちらへと近づいてきた。

異世界人としてはこの無表情にも近い能面はとても奇妙なものに映ることだったであろう。

しかしそれでも見張りとして主に不審者を捕らえてみせるという任務を全うしようとする相手に俺は少なからず賞賛を送りたい。

だから俺は無抵抗のサインとしてそっと両手を上げたのだった。

俺にはすでに抵抗の気力は残されていなかったのだ。




「…よし、お前はそのまま進め。モルナ様の前へ突き立ててやろう。」




こちらが何の反抗もするつもりがないところを見て、見張りは掲げた槍の先端をこちらに向けた。

そしてモルナが集会をしている更地へと槍で牽制されながら誘導されていく。

俺はおとなしくそれに従い、押される形で前へ前へと進む。




「…モルナ様。我らの話に聞き耳を立てていた不届きものを捕らえました。如何いたしましょう?」




護衛は言う、冷淡にも私情を一切込めない声音で言う、十数名の精鋭達もざわざわと囁きあう。

風が吹く。近くの木々から木の葉が舞い散る。

時間が止まる。そこにあったのは木々が擦れ合う音だけだ。

最初に音を発したはモルナが前へと歩く足音だった。

彼女は俺の目と鼻の先に立つ。俺の能面に奇妙な目線を送ることもなく、ただその顔には不敵な笑みを浮かべている。

…それが今はとても嫌な予感しか俺には感じさせなかった。



「…ほぅよくやったギャクシー。なるほどなるほどこれはとても怪しい者だなぁー。見れば見るほど奇妙な仮面をつけているし、外して素顔を暴いてやろうか。」



ニヤニヤと俺の周りをぐるぐる回る回る鬱陶しい彼女。

薄紫の長い髪から風で流れて甘い香りが鼻をくすぐる。

…本当に卑怯だ。この仮面のオトコの正体を彼女は察しているのに弄んでいる。昨日の接吻から顔をまともに見ることもなんか気恥ずかしい俺はそっぽを向いてそれに抗う。



「…ええい、鬱陶しい!脱いでしまえっそんなものっ!」



等々まどろっこしく感じたのか、彼女は強引に能面のひもを解いて朝の日がさす大地に素顔を明らかにさせた。

俺の肩の近くまで伸びた黒髪がバサリと流れるようにたなびく。

こちらへと視線が突き刺さる。しかしそれは先程までの胡散臭いものを見る目からきょとんっとした驚きすぎて最早言葉も出ないような何とも素っ頓狂な瞳へと変化していた。



「…ふふっ昨日以来でようやく会えたな。おはようバルツァ」


「…おはようモルナ。」



俺はそれ以外に言葉を探せないまま、その場に立つ。

彼女の意地悪そうな笑顔が目の前で突き刺さり、じっと見てはいられなかった。

勿論普段から無表情な俺だ。傍からはいつもの表情を浮かべていると思われていることだろう。

が、顔には出さずとも体は明らかに熱を発して、この場からただちに逃げ出してしまいたいと足はすぐにでも動けるような準備をしている。

しかしこうなってしまった手前、いきなり姿を消してとんずらこいても仕方ない。

彼女らは救助作戦で行動を共にする仲間であり、確執を作ってしまっては後々面倒なことになるかもしれない。

俺はじっと我慢してその場に居続けた。…勿論体はちゃっかりと逃げる準備を整えていたわけだが




「…突然驚かせてすまない。彼は私の知り合いであり『あの件で』とても重要な人物だ。」



モルナは話す。語りかけるようにこれ以上刺激を与えないかのようにそっと優しく、激怒した人を宥めるように

皆聞き入る。誰も彼も真剣な眼差し、翌々見渡すと美人さんが多い。

というか女性しか存在していないので、男である自分がかなり浮いていることに気づいた。

これが所謂ハーレムって奴か?羨ましいと思ったこともないが、ただただ居心地が悪いのみだなこりゃ。

俺は今にも人を殺してしまいそうな彼女達の気迫を感じ取って、そう考えてしまった。



「紹介しよう。彼は――――キュー二ェ=ドグラーニャ。わっ私の…婚約者だ!」



最後少しの照れで上ずりながらも言い切った彼女の頬は赤い。

しかも内容が内容で、目の前の彼女たちは目を点のように丸くして『隊長』であるモルナをただただじっと見つめ続けたのだった。

次回予告

モルナの部下である副隊長目線で久音くんとモルナさんを描いていく。

そしてとうとう出発の、時?

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