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異世界にはもう慣れました サウザンド!  作者: 八七月
第二章 魔人スーツ研究所
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進む時間

更新かんなーり遅れてしまいましたが、また通常運転で頑張っていきますのでよろしくお願いします

この世界唯一無二の『国家』であるファルベ大聖国、しかし実際には名ばかりの連合国家であることはこの国では誰もが知っている常識である。

正義を重んじ平等主義で年中黒い霧に覆われた『黒ノ自治区』、標高数千メートル級の山々が連なりできた古くから竜が住むと言われている『赤ノ自治区』、娯楽施設が立ち並び終始年がら年中お祭り騒ぎを決め込む『黄ノ自治区』、森に囲まれた古くからの慣習が根強く残された土地『緑ノ自治区』、一見するとただの湖だが水深数百メートルに浮かぶ巨大な潜水艇が存在する『青ノ自治区』、年中雪が吹き荒れ一面銀世界である『白ノ自治区』、死者を偲び異形の者たちが集いし土地『紫ノ自治区』

これら七つの地区が集まって構成されているのが今の連合国家、ファルベ大聖国。

そんな三つ巴ならぬ七つ巴と言うべきこの統制につけ込む隙などテロリストの立場から言わせてもらうと十二分に存在していた。

お互いがお互いをけん制し合い、手を出さぬ地に『アポピス』と呼ばれる対政府軍は新たな生物兵器となりうる『魔人スーツ』の研究所を次々と打ち立てた。

それについて自ら正規の正義軍隊であると評した黒ノ自治区の連中が各地に『アポピス』の動向を探る機関『黒聖警軍』を設立、それについて他の自治区のお偉いさん方はいい顔をしなかったが『アポピス』という集団に一抹の危機感を年々募らせていたことだろうそれは意外とすんなり通った。

…しかし彼らが全ての研究施設を把握しているわけではなく、現にこの研究所(第12施設)の居場所を特定することは今の今までなかったわけだ。



「そろそろ頃合いのようですね。ホント、とても興味深い。」



ケラケラと人を嘲笑うかのように全身青い道化師のかっこうをした男が部屋のど真ん中にふてぶてしくも存在している。

彼は意気揚々とこの所長であることを表す七つ星の憲章胸に掲げていたが、別に彼がこの魔人スーツ研究所のトップであるとそういうわけではなかった。

彼は純粋な研究者であり探究者であり、その為には地位さえも他人より奪い取ることもいとはない。

なのでこの憲章はこの『魔人スーツ研究所』の所長から譲り受けたものだ。

・・・勿論半ば強引に奪いとった、とは言うまでもないし彼のスキル「人の認識を変える能力」をもってすればこのような工作など朝飯前なのである。



さて現在彼がいるのは『第三実験室』でここには先程お茶会によって捕らえた捕虜達が無造作にも寝かせられている。

怪我の具合がひどいものもある程度軽症で済んでいる者も一緒になって安らかな眠りについているのだ。



「準備は上々、後は黒聖警軍のみなさんが攻めてくるのを待つばかり、ですか。」




男はある奇策を行使しようとしていた。

それは本人にとってはちゃんとした意味のある行為ではあるが、他の人から見たらあまりにも常識はずれ。

むしろ味方であるはずの『アポピス』側の人員を苦しめているばかりである策だ。

もし男に意見を言える立場の地位の味方がいたのであれば、間違いなく止めていたことであろう。

しかしそれも先程とある石により全ては消し去られた、もしこれ以上彼を止める者がいたとしたらそれは彼の『敵』でしかありえない。




「折角こちらも多くの犠牲を払ったのです。あちらもそれ相応の対応を見せてもらいたいものですね。」




今頃彼が仕掛けた石の力によって大多数の研究所員がこの世から消え去り、まともな研究所の運営もままならない状態であろうと男は簡単に言ってのけた。

彼にとってこの魔人スーツ研究所は使い捨ての駒そのものであり、同時にただの消耗品の類に相違ない。

この作戦が成功しようが失敗しようが結局この研究所は終焉の時を迎えるだろう。

その時彼が何をするのか何をなすのか、それは誰にも想像がつかない。




「ふふっホント楽しみで仕方ないですよ。」




男の高笑いは『第三実験室』内で大きくこだまし、一時の間留まった。

そして研究所の外の空は真っ暗な星空からだんだんと色を変えて、ついには朝日が出ようとしている。

ついに、ついに始まるのだ。

彼の奇策も久音のクラスメート救出作戦も、今まさにこの瞬間はじまりの朝を迎えようとしていたのだった。











あついあついあつい。

からだがあつい。

まるで自身がやけているかのようにとけてしまっているかのように体には熱がこもる。

あついあついあつい。

このあついのは何時からなのかあるいは生まれたときからなのか、それ自体も定かではない。

自分は誰で何故こんなところにいるのか、考えても考えてもその答えにはたどり着くことはない。

でも時は無情にも過ぎていき、変わらず眼下に広がるのはおおよそ人とも呼べないような人間の山、山、山。。。

それが緑の光を背景にまばゆく映し出されている。

私はそれから少しでも目を逸らすことさえできない。

まるで首や瞼などすでになくて動かすことも、また閉じることもできないかのように

あついあついあつい。

兎も角このあついのを早急に何とかしなければならないだろう。

このままでは気でも狂ってしまいそうだ。

ここがどこであるか、はたまたこれは私の夢の一部なのかもしれないが特定などできない以上この地獄が永遠に続く可能性が極めて高い。

なので速やかにここを脱出した方がよさそうだ。

そう思って何とか体を動かそうとしたものの私の意思に反して体はピクリとも反応しない。

なんでなんでなんでどうして。

動かないはずなどない、拘束具のようなものはされていないしこんなに意識はクリアーなのに

なのになんで動くことが出来ない?



「アッあぇあああああぁあア…」


助けを呼ぼうと大きな声で叫ぼうとするも、口からはまともな一言も発することが出来なかった。

話そうにも口から出てくるのはただの呻き声であり、私は思わず上を見上げる。

すると何かがこちらに落下しているのが見えて、ゆっくりとした速度でそれはこちら側に落ちてきた。

落ちてきたそれは周りと同じような人とも呼べないただの肉塊で、もし唯一違うところがあるとすればそれは辛うじて衣服の切れ端が付着していることくらいだ。

惨たらしい姿に私は思わず顔をしかめようとしたが、私の表情筋は全く反応を見せない。

もしかしてもしかしてもしかして。

よーくよく見てみれば、あれは私の良く知る『軍服』ではなかろうか。

誇りと自愛を込めた我が『アポピス』の正装、あれはその一部であるとそう見受けられる。

ということはあれは私の同胞であったはずのものだ。

それがなぜこのような場所に流れ着いた?思い出せ思い出せ思い出せ。


「あ」



それにいたるのは至極簡単だった。

とても単純なことだったのだ。



…要するに私はきっと彼らと同じく醜い肉塊なのだ。私はあの青いピエロにまんまと騙されて彼が言うに『聖石』というやつに触れてしまった。

きっとここはその中なのだ。



そう思い至った瞬間、世界は一変に一気に視界は闇の中へ。

まるで大いなる意思が私を吸収して一つになるかのようにある一点に吸い寄せられてしまう。

それを一言で表すのならば『負の呪い』。

人の様々な妬みや怒り、強い執着心が懲り集まってできた黒よりも禍々しく泥のようにまとわりつく巨大な塊だ。

私もその一部に成り下がろうとしていた。



「ああっああ…」



しかしそれも今では天が私に差しのべた救いの手のように感じてしまう。

暖かいぬくもりで私を包まれていくようで、きっと私が今も人の形をしていたのなら満面の笑みを浮かべていたのだろうな。

そう思ってしまうほど目の前の闇と言うにもおこがましいほどの禍々しい黒泥が愛おしく感じられる。

私はその身を投げ出すように抵抗することもなくむしろ望むように飲み込まれていった。

残ったのは静寂。相変わらず照る緑色の光に、なりそこないの肉塊の山。

今までの一連の流れなどなかったかのように緩やかに時は進む。

やがてそれが完全に解放されるであろう、その瞬間まで

【グロ注意】あっ遅いか!

でもこんな回もたまにはありかも?なんて




次回予告

目覚める主人公、早朝彼が見たのは彼にとって異様な光景であった?

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