表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
13/38

敵はいつも身近にいる

遅れましたwすいません

ファルベ大聖国―――――それはおよそ1000年前に建国されたこの大陸唯一の大国家である。

種族は人族が大半を占めており、遅れて獣族、妖精族と多種多様な種族が暮らす平和な国。

現在でも色あせないファルベ大聖国という統治国家の基礎は一人の王によって作られた。

それが1000年前7つに分けられた国を一つにまとめて基本律令を定めた、7つの国の一つ『黒ノ国』の元君主ブレッヒェン・シュバルツ様。

彼は『正義』の名の下、他の6人の狂った王達を次々に虐殺し、7つの国の中央へ新たに王宮を建設して国家の基盤がようやく固めれてきたと思われた矢先に彼は忽然と姿を消した。

国を一つにまとめた大英雄のシュバルツ様がいなくなったことで、再びファルべはいくつもの国に分散されてしまうかに見えたがそれを救ったのが先王の意思を継いだエウノミアという一人の少女だ。

そのエウノミアの下大きな血と血で争う人と人、人と他の種族との戦国時代を迎えたものの何とか一つの国としてこれを乗り切ることに成功したファルべは現在もこうして変わらぬ平和を目指した政治を我が物顔で展開しているが、裏で役人どもは堕落を極め最早取り返しのつかないところまできている。

それを正すのが我ら『アポピス』混沌を司る者だ。

我らは彼らが唱える平等を『逃げる臆病者』彼らが掲げる正義を『自らの自己満足である偽善的な考え方』と位置付けて長らく彼らとは戦いを繰り広げてきた。

時には死者数万人という双方尊い犠牲を払った『聖戦』が開かれ、戦いは一旦停戦する署名と刻印を交わしてすでに数十年。

そろそろ仕掛ける頃合いかと我らは準備を開始したのだ。

大きな戦いになるだろう、死者も沢山輩出してしまうことでだろう。

しかし我らが勝たぬ限り、世界に真の平和は訪れぬ。

共に戦おう!共に取り戻そう!怠惰を貪るだけの腐った官僚たちに鉄槌を!

我はそれだけのためにここまで生きてきた。燃やせ燃やし尽くせ!魂涸れぬ前に、我らの理想郷『ユートピアユース』を!

この手につかむまで我々は諦めはしない!絶対に、これは世界が託せし神の意思であられるぞ!












「…ま~た聞いてるんですか~?アルブレット上官?何度聞いても内容は同じなんですよ~?」



横で優雅に紅茶など飲んでいる青いピエロ野郎に、俺は天主様(我ら『アポピス』を率いる最高指導者。御年80歳を迎える大賢者)の有難いお導きを小型の録音機にて何度か聞かせてやったことを激しく後悔した。

そうだ、彼は出会った最初から我らの思想を理解しようとしない愚かな研究者だった。

おそらく彼は俺が何を言ったとしても自分の考えを曲げることはしない。

俺はため息をついて、彼に我らの思想を理解してもらうことを諦める。




「…理解してもらおうと思ってやっていることなのに、君は折れない男だね。感心するよ。」


「お褒めに頂き光栄です。上官殿?」


「…一切褒めてないからな?俺」


彼はケラケラと人を馬鹿にするように笑い、紅茶を一気に飲み干した。

現在俺らは『実験場森林1』と呼ばれている通称黒霧の森を目の前に特殊加工で出来た白いテーブルを何処からともなく持ってきて、二人してセットになっている白い椅子に座りこんでいる。

理由はよくわからん。このピエロ野郎が「…いい天気ですねえお散歩でもどうですか?上官?」と誘われたからついてきただけなのだ。

全く人の気も知らないで、まだ俺には事後処理というめんどくさい仕事がたんまり残っているというのに研究者とは気楽なものなのだな。いや本当に




「…その顔からして先程森の外で起こした爆発事故の処理がまだお済みでないと見えますが、こんなところで油売ってて大丈夫なんですか~?」


「…じゃあ誘うなよ。俺を」




俺はジト目を彼に向けたが、彼は素知らぬ顔で茶菓子を取出し貪る。

辺りに食べカスが飛び散るがそれを気にすることもなく、彼はまたも俺に進言してきた。




「いやいやその被害状況が知りたくてですねえ。一般国民としてはあなたがどれほどの罪なき命を刈り取ったのかが非常に興味をもちましてね?こうやって聞いちゃっているわけですよ。」


「…相変わらず酷く気に障ることをいうやつだな。君は」



俺は彼の戯言に頭が痛くなるのを覚えながら、彼が用意してくれた白い格調高い椅子にて足を伸ばす。

彼が言っていた『森の外で起こした爆発事故』とは恐らく、今日未明未知の機械乗り物が突如森周辺を偵察していた私が率いている隊のあろうことか新兵の機械獣であるレーダーに引っ掛かり、新兵はあちらと連絡を取ろうと試みるもあえなく失敗に終わったらしく

なおもこちらの応答にこたえることもなく暴れる機械乗り物にやむおえず破壊活動を試みるも中に人が100名近くいたことには気づかなかったようで、その中の七割という驚異的な焼死者を出した最悪の事故のことであろう。

その浅はかな行動をした新兵には、懲戒処分をくれてやったが死体の処理に俺はヤキモキしていた。

もたもたしていると奴ら『黒聖警軍』に死体が見つかり、大量殺人罪の疑いで彼らの外部調査が問答無用で開始され。ゆくゆくはここの『魔人スーツ研究所』が閉鎖となるかもしれない。

それだけは阻止しなければならなかった。ここは他の研究所とは違いある特別なものを研究していたからだ、閉鎖されるわけにはいかない。

だから俺は早急に焼けただれた死体たちを処理しなければならない、のだが





「魔人機械獣NO.00215四足歩行型プロトタイプC――――ですかね?懐かしいですねえ私が初めて手を加えた機械獣ですよ。」


「君のおかげで機械獣の火力は段違いに上がったからね。今でも感謝しているよ」



彼はその道のエキスパートだ。

彼に作れない魔人機械獣、魔人スーツはないとまで言われている。

その彼がこちらについているということは大変喜ばしいことでは、あるのだが。。。




「でぇ?その傑作品で人殺しとは、中中穏やかではありませんねぇ?」


「…それは君のいう『傑作品』とやらの犠牲になった大勢の試験者達に聞かせてやりたいものだ。きっと彼らも浮かばれないだろうさ。」




彼は狂人だ。それも『七人の狂王』と呼ばれた悪名高い人たちと同等に。

彼は研究が全て、どんなに犠牲が出ようともどんなに時間が資金がかかろうとも関係ない。

現にこうして彼がお茶会と評した『拉致』によって『神隠し』に合った人たちは少なくないのだ。

近辺の村ではちょっとした事件にも発展している。

我らの隠蔽工作も限界があるため、正直扱いずらい人物であるのは確か。

でもこうして偉大なる功績も残しているからこそ、切っても切れない関係を築かざる負えないのだ。

…まあ本人としたらそんなことどうでもいいのだろうけど。





「のんのん、彼らは世界を救うための道しるべとなっただけです。そうでしょう?アルブレット第一制御部隊隊長殿?」


「…そう、だな。君の言うことは正しい。」




実際俺ら『アポピス』がしようとしていることは現在『神隠し』程度である被害者を有に超えるだろう死者を出す、至って不条理な計画を立案している。

だがしかしそうでもしないかぎりこの世界は、この国は変わろうとはしない。

変えられない、それは一番俺自身が身に染みて体験したことではある。

『力なき意思は万物の妄想でしかない』ってね。

そう達観したからこそ『アポピス』に入り最も機密的な研究施設を守護する制御部隊の隊長を務め、こうして茶菓子でも食べながら要注意人物と談笑でも、しているのだ。




「…で?本当はここに来たのにも理由があるんだろ?だったら勿体つけずに教えてくれてもいいんじゃないか?」


「さて?何のことでしょう?私はただ上官殿と楽しく会話出来ればいいと思っただけです。」




ニヤリッ憎々しい笑みを浮かべて、彼はティーポッドに紅茶を注ぎ込む。

彼が何かを隠していること自体別に不思議なことではない。

彼は比較的長く本部から付き人のように彼を警護している俺でさえその本性がつかめないのだ。

誰も彼を真に理解できることなどできないのではないか?

そう思えるほど彼は深く混沌とした闇をその身に宿していた。




「まあ言いたくないなら深くは聞かないよ。君は大事な重役(VIP)だからね。何か機嫌を損ねて研究をやめてもらっては困る。」


「…その点は心配いりませんよ?私が研究を途中でやめることなど万に一つもありえぬことですからねえ。」




確かに彼が自ら研究を途中で放り投げてしまうことなどこれまでなかったし、また考えられないことだ。

どんな手を使っても研究を完成させるのが彼であり、俺はただそれを誰にも邪魔されないように警護するしかない。

腕っ節が自慢であるただの軍人だ。

だから俺はなんとしてでも彼があれを完成させるまで、守り抜かなければならない。




「ならいいんだ。これからもあれが完成するまで精進してくれ。」




俺はもう用は終わっただろうと立ち上がろうとしたが、どういうわけか全く体に力が入らなかった。

逆に今まで座っていた白い椅子からも転げ落ち、床に体を強打する。




「ガハッこっこれは一体…!?」


「いやいや~すみませんねえ。上官殿。」



彼は力が入らなくなった俺の顔を無理矢理髪を握って起こし、目線を無理矢理にでも合わせた。



「…ちょうど奴らの『餌』がなくなってしまいましてねえ。あなたには大いに感謝していますが、ここら辺でお別れの時間となってしまうわけです。」


「まっまさか君は、俺を、奴らに食わせるために、ここで…」




俺は戦慄を覚えた。

彼は最初から俺を殺すつもりだったのだ。

最初から黒霧の森にいる化物どもの餌として、彼はここをセッティングした。

なぜ俺は彼を信じてここまでノコノコとついてきたのか、何故悠長に話し込んでいたのか今となって俺は自分の行動に疑問を覚える。

俺はあの出来事以来警戒を十二分に行動していたはずだ。

普段の俺なら彼の誘いに乗ることなく、目下最重要課題である『部下の不始末』の対処を第一に行動する。

それがどういうわけか彼の口車に乗せられ、こうして軍人にはあるまじき痴態を犯してしまっていた。




「何故こうなったのかワカラナイって顔してますねえ。上官殿は」


「!?」


「まあ昔のよしみです冥土の土産にでも教えてあげましょう。私にはねえある不思議な能力があるんです。」


「…不思議な能力?」



初耳だった。

彼が何かしらの能力を有しているなど、考えたこともなかった。

彼はここの研究者で、いつもピエロの格好をした、卑怯な手が得意中の得意で、でも人情味溢れていて、人形が好きで、白衣を纏っていて、、、あれ?

いつも見ているはずの彼がなぜだか今は、シルエットさえ思い出すことができない。

どれもこれも曖昧で、不確かで、嘘くさい。



「…少しお分かり頂けたようですね。そうです私の能力、それは『人の認識を自在に変える能力』なんですよ。」


「!?」



彼は俺の表情を読み取ったのか少し感心するようにそう告げた。

だが当の本人である俺は彼が告げた能力に目を白黒させてしまう。

信じられるわけがなかった。

『人の認識を変える』それはつまり『敵を味方に変え操ることもできる』わけだ。

そのようなとんでもない力が人間に、ましてやこんなピエロ野郎にあっていいはずがない。




「信じられないって顔してますねえ。それじゃあ少し私の能力を見せてあげましょう。」



彼が指を軽快に鳴らすと茂みの中からぞろぞろと4人の若者が出てきた。

一人はメガネをかけた青年、一人はまだ大人(この国では15歳で成人する)になってないであろう後ろに大層な精密機械を背負った少年、一人は人形のような顔をしてボロボロの刀を持った少女、一人はお淑やかそうな少女で

彼らは全員が全員虚ろな目でこちらを見下ろしている。




「彼らはあの爆発で生き延び、私の『お茶会』に来ようとしなかった不躾な客人ですよ?上官殿?」


「…」


「でも彼らは今では重要な駒です。死ぬことを恐れず私が『死ね』といったら喜んで首を差し出す可愛いペット兼人質なんですよ。面白いでしょう?」


「…全く君の悪趣味っぷりは聞くに耐えないね。『人を意のままに操る』など面白くもなんともない。」


「…なんですって?聞き捨てなりませんねえ力だけバカさん?」




彼の逆鱗に触れたのか、彼は笑いながらも青筋を立てて抗議してきた。

でも怖くはなかったきっと俺がここで殺されてしまっても、それはこいつに負けたということにはならないからだ。

『恐れをなした時に人は初めて負ける』とは俺のひとつの人生訓。

だからこれっぽっちも怖くはない彼に、言えることはそう多くはない。

だが残さねばならぬだろう。

きっとこれが人生最後の時になるはずであるから。




「君はいつまで経っても我侭で自己中で最低な男だなあ?『メルセリウス=ホーデン』」


「…殺ってしまいなさい。NO.09875」


「…了解。」



彼の怒号が辺りに響いた次の瞬間刀を持った少女の目にも止まらぬ剣技によって、俺の見える光景はぐるりと激しく回転してやがて俺は意識を失ってしまったのだった。




















「…全くムカつく男ですよ!このクソ野郎は!」



私はさっきまで向かい合って話していた汚物を靴で踏み続けた。

何度も、何度も、何度も、何度も、まるで親の敵のようにしつこく粘着質に幾度となく繰り返される残虐な行為を止める者はもういない。



「…いつもいつも偉そうに、私の友人を気取りやがって!目障りだったんですよ私の計画に君は!!」



いい加減踏み続けることにも飽きてきて、足をどけてみると血まみれでぐちゃぐちゃになった人間であった何かがそこには存在している。

折角彼らの餌にしようと思っていたが、こんなクズ肉じゃあいつら見向きもしないだろう。



「…全く死んでも役立たないとは、君らしいですねえアルブレッド上官?」



私はおもむろにズボンのポケットから小さな『聖石』を取り出して、彼の死体に投げ入れた。

すると石が彼の僅かに残った生命力、魔力を吸い取って緑色の光りを周囲に降り注いだ。



「骨や肉片一つ残してやりませんよ?お国の妹さんもさぞや悲しむことでしょうなあ!」



私はさっきまで怒りに任せて踏みつけたことも忘れて、いつものようにクククッと微笑ましい笑いを浮かべる。

そしてそれもやがて収まり、周囲には暗闇と私が用意した白いテーブルと椅子以外の物以外何もなくなってしまった。



「チッこの程度しかたまりませんか。流石私の機械獣の操作が上手いだけで隊長に上りつめた男ですねえ。魔力もしょっぱいしょっぱい」



私は肩をすかして呆れた声でつぶやきますが、誰もそれについて憎まれ口を叩いたりするもの等いません。

まさに自由――――私は今小姑のようにブツブツと説教を垂れていた彼から解き放たれているのです。

この開放感は他では味わえないまさに極上の味です。

私はそれに身体の芯から浸りながらも今もこちらを虚ろな目で見やる4人の人質を眺める。

彼らは皆同様にあちこちに擦り傷を作り、非常に痛々しい姿をしていたが私は構わず天高く登る青い月を見つめます。

今日は三日月のようで細長い形をしていました。

しかしこれはあまりいい月とは言えない。今日は早めに研究所に帰ったほうが良さそうですねえ。



「…まあ仕方ないです。戻って残った奴らの対策でも考えますかねえ」



私は踵を返し、その場を立ち去りました。

残された白いテーブルと椅子が夜風で泣くように音を立てているのを背にしながら振り返ることもなく元来た道を戻っていくのでした。


一応状況についての説明を少しだけしました。詳しくはまた今後だと思います。

…されこれにて一応序章は終わりという事になります。

次からは第二章になるのでよろしくお願いします!






ちなみに今回発覚した青いピエロの『人の認識を変える能力』は万能ではなく、幻聴幻惑において耐性のあるものや魔力がピエロ本人より桁違いになってしまうと効果は薄くなります。

あと獣や『人』以外の種族には全く効きません。あしからず

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ