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出会う二人

(藍丸双子は皐月が原高校には在学していないし、なのでここに存在するわけがない。)



その事実に私は耳を疑いました。

辺りは先程前方に飛んで行った巨大な物体の所為で、土煙と地面に僅かばかり残った落ち葉を舞いあげる。

視界には殆どのものが茶色で支配されている中、黒一色である堂ケ崎くんの姿だけは妙にくっきりと見えました。

その姿は圧倒的で、優雅で、艶を私に感じさせるのです。

ですがそんな彼がいないと断言した藍丸双子は、さっきまで森の中を散策していた仲間であったはずです。

確かに彼らは生きていましたし、果敢に怪物に特攻していった姿は今でも瞼の裏に焼き付いています。

だから私は堂ケ崎くんの言葉を素直に信じるわけにはいきません。

きっと忘れてしまってるだけだと思うんです、私。




「どっ堂ケ崎くん、こんな時に冗談はやめてよ?確かにあの双子が生きている姿をこの目で見たんだから」


「…でも俺は知らない。それじゃあ彼らの特徴を教えてくれないかな?そしたら思い出すかもしれない。」


「え、えーとねぇ二人とも同じ髪型でね?で長さは…あれ?ロングだけ?それとも坊主頭だったっけ?あれれ?」





可笑しい。

さっきまで彼らのことは見ていて、彼等が存在していたことは確かであるはずなのに事彼らの外見特徴を聞かれると途端に記憶が曖昧になってしまいます。

もうそれはシルエットもはっきりしないぐらいの曖昧さで、私は答えに困ってしまいました。

私はちゃんと答えを出さないといけないと思って思考を巡らせますが何も出て気はしません。

私の後ろでは未だ痛々しい安藤くんが大きな木々にもたれかかっています。

彼に助力を頼みたいところでありましたが、生憎彼は私のせいで怪物の攻撃をもろに受けて耳も聞こえない状態なのです。

助けは望めません。否望んではいけないんです。

今までなんだかんだ私の命は他人に助けられてきましたから、こんな時くらい一人で、答えを出す、くらいは…




「…思い出せない。そう言うことだね早乙女さん。」


「うっうん。不甲斐ないこと、だけどね」



答えの出せない私に少々きりもみしたのか、そう提言を出した彼に私は頷くしかありませんでした。

悔しい。それが私の率直な感想です。

自分が体験したことなのに、今まであった人であるのに思い出せない。

それはとても相手に失礼なことであるし、私の脳に欠陥があると診断されても仕方のないことです。

だから私は彼に糾弾されることを覚悟して身構えてしまったのですが、彼は特に何も言うことはなく黙り込んでしまいました。




「どっ堂ケ崎くん?」


「…………………」



私が恐る恐る声をかけても一切反応することがありません。

この現象について彼なりに考えがあるのかもしれませんので、私も黙って彼の言葉を待ちます。

すると不意に思いもしない方向から声が聞こえてきました。




「それについては我が答を示そう。」


「ひゃっ!?」



思わず変な悲鳴を上げてしまった私は、声を上げた物体から一歩、また一歩と後退りをしていきます。

そうです。堂ケ崎くんが倒したと思ったあの怪物は生きていたのです。

しかも堂ケ崎くんが与えた攻撃がお腹を突き抜けて元々あるはずの血肉がそこにはなく、後ろの景色が見えるほどの空間が空いてしまっているというのに怪物は気にする素振りも見せません。

怪物の白い肉体は見る見る彼自身の血で赤く染められて、普通なら立っていることさえ億劫なはずなのです。

なのになのに…あろうことかこちらに向かってあいつは走ってきてます。何なんですか怪物すぎますよ⁉私は驚愕のあまり腰を抜かしてしまいました。




「いっ生きてる!?」


「…だろうね。手ごたえが可笑しかったもの。」




堂ケ崎くんはあっけからんとそう言い放ち、再び彼に対峙します。

ですがどちらにもさっきまでの緊張感の張りつめた感じがなく、穏やかな空気がそこには流れています。

さっきの一悶着で彼らの中で通ずるものがあったのか、これ以上の争いはするつもりはなさそう。

でも万が一のことを考えて私はその場から一歩退いたのでした。

別に怪物が怖くてにっ逃げたわけじゃないですよ?

私を守るために傷ついた安藤くんが心配で心配で、介抱するために離脱するのですからこれは正当な判断であると主張します。

現に今も息絶え絶えで苦しそうな表情を浮かべている彼を見ると、私は胸が締め付けられるような思いになってしまうのですから





「安藤くん?大丈夫?私の為にごめん、ごめんね…」


「…………………。」



そう彼に近づき自分勝手な謝罪をしたところで、聞こえない安藤くんには何の罪滅ぼしにもなりはしないのですけどでも私は謝らずにはいられないのです。

六宮くんにも自分を犠牲にして助けてもらいましたし、今度は安藤くんにも助けてもらいました。

私は助けられてばかりいるのです。よく人と人とは支え合って生きてるなんて言いますけど、私の場合支えられてばかりで全然返せていない。

そのことが私に重くのしかかりまるで十字架を背負っているようで、私は今すぐこの重みから楽になりたいとそう思ってしまいます。

でもそうじゃないんですよね?

安藤くんは言ったじゃないですか。最後まで諦めない、泣かない、希望を捨てないことが私への願い…でしたっけ?

なら私はそれを守ろうと思います。無理矢理にでも笑顔作ってさ!誰かの希望になるように笑い続けますよ。

けして簡単なことじゃないと思うけど、私はやらないといけないんだ。

それが生き残った者への使命だと私は思うから




「だからだから安藤くんも一緒に笑おう?つらい顔なんてみたくないよ、いつもみたいにさ女の子みんなを虜にしちゃうようなそんな優しい笑顔を、こんな時だからこそしてもらいたいなあ。」


「……………(ニコッ)」



私が笑ったのを見たからか、聞こえないはずの安藤くんは一緒に優しく儚げな微笑を浮かべてくれた。

私は嬉しくなってつい彼に抱きついた。

私の白いカッターシャツが彼の血で赤く染まってしまうけど、気にせず私はより一層強く抱きしめる。

彼が力なく抵抗するけどお構いなしだ。

彼の心臓の音は激しく鼓動し、『生きている』ことを肌で感じることが出来る。

私はしばらく彼に抱きついたまま散って行った人たちを思い、人知れず涙を流してしまうのでした。


















「…なるほど、『藍丸双子』というのは魔人スーツ研究所の関係者だとそういうことか?」


「是、そのように我は感知致した。」





俺がどてっ腹に穴の開けた『ボルカス』に(厳密に言えば腹に穴を開けたのは俺ではなく、彼自身である。元々俺の放った『螺旋昇天掌』は外部破壊ではなく、内部破壊を引き起こすものなのだ。…憶測で言うならきっと彼は俺の爆発的なエネルギーを後ろに飛ぶことで相殺し、殺しきれなかった分を文字通り肉を断ち他の箇所のダメージを最小限に抑えたのだ。明らかに人が出来る芸当を超えていたが、俺も人のことは言えないのでこの件に関して俺から何か咎めるつもりはなかった。)そう確認を取ると彼は頷いて肯定する。

周りはすでに日が落ちかけていて木々の影で殆ど感じることは出来ないが、オレンジ色に染まった静かな森を辛うじて感じ取れる。

二人を助けに入ったときはすでに落ちかけていたので、あまり時間を感じていなかったがそれでもオレンジ色に染まっていく植物たちを見るとやはりそれ相応の時間経過があったのだと思う。

目の前には森重くんが、ボルカスが、言っていた門と呼んでいいのかもわからない『闇門』が鎮座し、そのどこまでも深い底なし沼のような黒に俺は目を奪われる。

彼は闇門とそう呼んだが、正しくそうとしか呼びようがない門のようだ。

俺の全身の血が一気に駆け巡っているかのように脈打つ。




「お主たちの言う『藍丸』とはおそらく幻覚を用いた術式で作られた空白の人物なのであろう。我には魔人スーツを着た人にしか見えなかったゆえそう考察する。」


「…術式か!ありえるな。俺の連れがこっちにこなかったのもきっとそいつらの仕業だろう。」


「是、彼らに捕らえられたと考えるのが自然である。」



そう俺たちは数十分二人を助けたあの場で赤神さん達を待ったのだが、結局彼らがくることはなかったのだ。

距離にして数キロとはいえども姿を確認できる程の距離しかなく真っ直ぐ直線で走って来れば数分でつくはず、しかも赤神さんがいるのだから並大抵の奴には競り負けるわけがないと確信していたのだけど

どうやら『魔人スーツ研究所の関係者』にはかなりの手練れが存在しているらしい。

しかも気配を感じることが数キロの範囲で出来る俺であっても気づかせないとは…敵ながら天晴だ。

これで最初の目論見であったこちらの勢力を整える作戦は増えるどころか半減してしまっい、より生徒全員の救助が困難になったことは明白である。

だれだよー独断専行して仲間置いて行ったやつはーマジさいてー




「…手強いな相手は。的確にこちらの戦力を削いできている。」


「お主の言う通り、我もあるじもあやつらには手を焼いている。」


「…お互い協力した方がよさそうだな。」


「是」




俺は彼と協力関係になることを提案して、それを彼は肯定する。

思えば彼がこうして詳しい説明してくれたのは俺に助力を求めたいからで、その打算を俺は受けた形になった。

こっちとしては彼からの提案には願ったりかなったりなわけで全生徒の救助がこちらの目的なら手段は選んでられない。

今ならば俺は誰とでも手を組んだであろう。

例えそれが世間的には悪の組織だとしても、だ。




「…兎にも角にもその『モルナ隊長』とやらに話をつけないと始まらないね。」


「是、隊長が動かねば我らも動けぬ。頼むぞ『シュバルツ』殿?」



どうやら彼ら死人という連中はモルナ隊長とやらの式神や従魔のような存在らしく、契約者の命令がなければ自由に行動することもままならない。

だから彼がどんなに嫌がったとしても主人の命令が絶対で、俺が同級生の救助の協力を申し込むべき相手は彼の契約者であるのだ。

だがどうも契約者の方は俺のことを知っている関係者であるし、協力することに心配はしてないが不安はある。

今まで異世界転移をしてきて、再び別の世界で同じ人物と再会するということはないことはないが少ない。

しかもそれのどれもがろくな目に合っていないのだ。

だから出来れば旧友とは会わない形で事を収めたかったのだが、こうなっては仕方がないな。諦めるしかない。

俺はなんとか決意をし、闇門が手に触れるギリギリの位置まで足を進めた。

後ろからはゴクリと生唾を飲んだ早乙女さんと、『ボルカス』に背負われたままとなっている清詞がまるで死んでしまったかのように青くなっている顔を俺らに晒しながらぐったりとした様子で寝ぼけ眼で周囲を見ている。

彼らはひとまずここに残り、俺が先に門を潜ることになっていた。

…ボルカスを疑っているわけではないが、罠が仕掛けられてる可能性もゼロではない。

さらにこの先一般人には少々危険な場所である可能性もあり俺が先に中を下見することが最善策に思える。

これには早乙女さんも先程まで命を狙われていた『ボルカス』と一緒にここに残るということに危機感を感じていたようだが渋々了承してくれた。




「…それじゃあ行ってくる。」


「きッ危険がないと判断したら、すぐ呼んでね?この人と一緒にいるのはちょっとまだ怖いから」


「大丈夫だ乙女よ。我は無抵抗な女子供には手を出さんし、モルナ隊長の関係者である『シュバルツ』殿のご友人とあってはなおさら手を上げるつもりはないぞ?」




俺が開けた腹の傷はすっかり元の正常な状態に戻っており、体調も絶好調な『ボルカス』がそう言うと彼女も苦笑いを浮かべて俺に「TASUKETE」のサインを送ってくる。

もちろん俺はそれを無視して、闇門を開けるべく何とはなしに闇の方へと手を突っ込んでみた。

するとどうだろう?闇が人一人は入れるようなスペースを強引に作り出し、一部だけだが闇の隔たりのない不自然なアーチの出来上がりだ。

そこを覗いてみるとうっすらとあちら側の様子が見えるようになったではないか!

これには手を突っ込んだ本人である俺も、この構造を知っているべき『ボルカス』も、何も知らない早乙女さんも全員が声も出せずにただただ目の前の光景に呆気を取られた。



「…こうなるとは聞いてない。」


「だろうな。我も初めて知ったぞ?この仕組みは」


「…?門番なのに開け方は知らなかったの?」


「さよう。我は門番であるからしてそれ以上でもそれ以下でもなく、従って何のためにここを守って何のためにここはあるのかというのは特に意味はないのだ。」


「…難儀な性格で。」


「というかど、『シュバルツ』くんがなんの躊躇もなく手をつっこんだが一番の驚きなんだけどね・・・。何か合ったらどうする気だったの?シュバルツくん?」



早乙女さんが堂ケ崎くんと言いかけたのを慌てて訂正してシュバルツくんと言い直したことに俺は安堵した。

俺は異世界ではシュバルツで通しているのだ、だからここだって例外ではない。

異世界の住人に知られるわけにはいかなかった。

真名も『堂ケ崎』という名字であることもそれが意味することもそう安安と知られてはいけない事柄だ。

だから早乙女さんには移動中こっそりと彼に本当の名前は伏せるようにと促した。

それを守ってくれているようで、ひたすら俺は彼女に感謝するような気持ちで彼女を見つめる。




「…そうだね。でも慣れてるから大丈夫だよ。心配かけてごめんね?」


「?それならいっいいんだけど…」



彼女は凄く戸惑った顔をしたけど、俺は無表情のまま門が開かれたあちら側へとその一歩を踏み出した。

まだ何か言いたそうな顔をしている早乙女さんだけど横にいるボルカスの手前、強気で意見をいう事が出来ないようだ。

…そのまま静かに待ってて早乙女さん。

と心の中で思い、強い光に吸い込まれるように足を進めていく俺。

あまりの眩しさに薄目になった俺がようやくくぐり抜けて、薄目を開けた先に広がっていた光景とはーーー



(至って普通の森だな。なんの変哲もない、ただの森。)



そうそこに広がっていたのは、日本でもよく見られる広葉樹の森だった。

近くには小動物が住まい、空には鳥が鳴き声をあげて飛んでいる。

草が生い茂り、目先数百メートルは平地でそれからは森の入口であり、遠くを見渡すと小屋のようなものが見えた。

先程までいた無音の森とは比べるまでもない。生命溢れる生きた森である。

門の中と外ではこうも違うものかと眩暈がくるのをじっと我慢していると、不意に遠くから声が聞こえてきた。

何を言っているのかは聞き取れなかったが、俺は不信に思いとりあえず声のする方向に足を進めることにした。

恐る恐るあるかどうか分からない罠に注意しながらこそこそと移動する俺の今の姿を誰かに見られたらと思うと、恥ずかしさでのたうちまわりそうだったが仕方ない。

今の俺は生身の人間であるからかなり脆いし、すぐご臨終して天に召される可能性に秘めている。

ならばこそより安全な移動法はカッコ悪いが必然だ。

俺は自分自身にそう言い聞かせながら一歩一歩前に進んでいく。

それに合わせるかのように聞き取れぬ言葉が次第にはっきりとこちらにも理解出来るものとなっていく様子は、もやもやした今の気持ちを取り除くかのようだった。

しかし先程から言葉は「愛してる」だの「一生尽くします」だの愛を囁く単語しか聞こえないみたいなんですけど俺の気のせいですかねえ?




「…ったくどんなバカップルがそんなちゃんちゃら可笑しい言葉、を、言って•••」




そして俺は見た、見てしまった。

木々の間から声を張り上げて叫ぶ薄紫の長い髪をした彼女を。

つり目がちで意思の強さを表しているかのようなその顔を。

周りには人がいないと確信しているからか、かなり聞いていて恥ずかしい言葉を並べ立てる彼女の横顔を、俺はよく知っていた。

正確にいえばおよそ七年前に俺は彼女と今日みたいにこんな森の中で、まるで物語にでてくるような主人公とヒロインのように出会った。

しかし彼女は確かに俺の腕の中で、息をひきとった筈で、こんなところにいる、わけが…




「おっオレット?」



俺は思わず彼女の前に姿を曝け出してしまった。

きっとその時の俺の顔はいつも纏っている無表情ではなく、もっと複雑な悲しいような嬉しいような顔をしていたことだろう。

彼女もいきなり現れた俺に声も出ないようで一時口をパクパクさせて、それが終わると目に涙を溢れんばかりに貯め始める。




「ばっバルツァ…いっ生きてたんだ。本当に…」



彼女の目からどっと溢れた涙と共に細々したそんな声は俺の耳まで聞こえることはなく、木々の間に突如として流れ込んだ突風に消されてしまい、ついに聞くことは叶わなかったが目の前の彼女が言葉よりも分かりやすく現されていることに俺は戸惑いやら照れを隠すことは出来なかった。



ついに第二ヒロイン登場!

やっとハーレムっぽいことできるぜ!ヒャッハー☆彡



次回予告

魔人スーツ研究所サイドのお話。

最初に出た狼もどきとかの説明回です。

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