表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
11/38

試される意地

馬鹿な!?ありえぬ、ありえぬ!!!

我はいきなり目の前に現れた黒髪の全身を黒い衣服で固めた少年に久しく感じることのなかった驚きを隠せずにいた。

その者は我が妙技『虫囲い』を破られたことに、戸惑いを見せてしまった隙に我の手を掲げて見せたのだ。

よもやこのような者がまだいたとは…我もまだまだ精進が足りぬらしいのう。

我は雄叫びによって鼓膜をぶち破り最早息も絶え絶えなクリーム色の髪をした少年を横目に(後ろにいた黒髪の少女はクリーム色の髪をした少年のその天晴な漢気に免じて、最初から攻撃対象にはいれていない)、殲滅目標を黒髪の少年へと移した。

この者は果たして人間であろうか?

そう疑うほどに禍々しいオーラを全身に纏い、気を抜けば我自身が飲み込まれそうになる。

この感覚は我が主様以外にはついぞ出会ったこともない。

我は久しぶりに血がたぎるような思いで、握られた手を強引に振りほどいた。

黒髪の少年は特に抵抗することもなく、その勢いのまま後方へと距離をとる。




「…我は黒聖警軍第2支部特殊部隊モルナ=リズィフィード隊長の第一ノ死人であり闇門を守る門番である、名を『ボルカス』と申す。そなた名はなんと言う」




我は思わずそう自己紹介をしてしまい、直後僅かばかり後悔してしまうのだが致し方ないことだったのだと悟る。

強者にはそれなりの敬意を示さずにはいられない我だ。

おそらくこの者に本気を出しても勝てるかどうか分からぬでだろう。

だからこそ滾るこの血が、真っ赤にまるで炎のように赤々と冷静ではいらぬ。

われはこのモノの名を知って、何とか打ち払って、もっともっとあの方に役立ちたい。

そう願わずにはいられないのだ。

さあ黒髪の者よ。その名を我に刻ませろ。我を楽しませよ。その名を我の礎にしてやるというのだ、これほど光栄なことなど早々ないのだぞ?

さあ教えるのだ!貴様の名を、黒の者よ!




「…お前に教える名などない。…だがまああえて言うのならば『シュバルツ』だ。俺の名前はシュバルツであるとそう覚えておくといい。」



目の前の男が発した名前に我は体の機能を全て停止させた。

なんと…いうことだ。もしかして『彼』か?『彼』なのか?…いやそんなわけはない。いくらそんななんでもそんなこと起きるはず、ない。

主様も言っていたではないか、『この世界中探してもいないかも知れない』と

そんないるかどうかも分からぬ者がまさかこのタイミングで都合良く現れるものであろうか?

我は掲げていた両手をするりと落とし、そのまま俯いて頭の中の重要フォルダーを今一度確認すべく深い深層心理の中へとダイブしたのであった。















「…なんだあいつ?いきなり止まりやがった。」



俺は目の前の人間より3倍程度でかくて白い『ボルカス』と名乗る竜人に似た生物が戦意を喪失したかのように俯いたので、肩透かしをくらったみたいに闘志が抜けてしまった。

どうやらあの敵さんは俺の名前を聞いてああなったことから(異世界では堂ケ崎久音ではなく『シュバルツ』と名乗るようにしている。以前に自分の本名を言ってえらい目にあったからだ。言霊って怖いんだよ…)、俺の名前にこちらに危害を加えることをためらう何かがあるみたいなんだけど…

特に心当たりもないので俺は彼のことは一時脇に置いておくとして、友人である安藤清詞の元へと駆け寄る。

近くにはクラスメートの早乙女愛華さんが、地面に座り込んで足元を濡らしながらガクガク体を震えさせてこちらを見つめていた。




「…どっ堂ケ崎、くん、なの?本当に?」


「…そうだよ。俺が堂ケ崎久音だ。だから怯えなくても大丈夫」




俺は彼女の言葉を肯定して、今にも死にそうな清詞に手を差し伸べた。

彼は全身に切り傷を負って傷口から血が滲んでいるが、大事には至らなかったみたいでなんとかフラフラになりながらも俺の手を取った。

耳からも血が出ている。

多分目の前のデカブツの雄叫びによって鼓膜が破れているのだろう、こちらの音は全く聞こえてないはずだ。

だから俺は声じゃなくて行動で彼を労わるように、抱きしめた。

彼もそれに力なくそれに答える。




「どっ堂ケ崎くん、安藤くんは、私を守るために、自ら先頭に立って、私を、かばって、奴に、奴に…」


「…わかってるよ」




全身傷だらけの彼を見ればわかる。きっと漢らしい仁王立ちで自分より大きな相手に立ち向かったことだろう。

彼はそういう男だ。自分を顧みず他人を第一に考えて行動する。

…本当にお前という男が幼馴染で友達で俺は誇らしい限りだよ。




「…他の人は?一緒じゃないの?」


「あっ藍丸双子は奴に八つ裂きに、されて、森重ちゃんと春風ちゃんは、途中ではぐれちゃった。きっと二人とも、もう…」


「…了解、とりあえずこいつには色々と聞くことがありそうだね。」




俺はギアをまた入れなおして、『ボルカス』に対峙する。

彼はどうやら言葉を理解し、そして話せるようなので事情を聴くためにも無暗に殺すことなく口が利ける程度には手加減する必要がある。

本当は友を傷つけられた罪でその首を切り落としたいところなのだ。

俺は燃え滾る怒りの感情を表には出さずに、あくまで冷静で冷淡な『堂ケ崎久音』という男を保たせていた。




「…早乙女さんはとりあえず下がってて?巻き込まれたら怪我じゃすまないよ」




早乙女さんは物凄い勢いで頷いて清詞を連れて数メートル後ろに下がる。

俺はそれを横目で確認して、『ボルカス』の動きを逐次観察し始めた。

全身を白で覆われた装甲に、刺々しいまでの装飾、顔は表情が見えない仮面を被っていて奴が何を考えているか非常にわかりづらい。

今この時、懐に入り込んでの攻撃を模索するが奴は無防備状態に見えて実に隙がなかった。

無計画な特攻での力技はやめておいた方がいいみたいだ。

俺が特攻を諦めた次の瞬間に、機械音のようなアナウンスが静かな森の中に響いていく。

それはその場にいくつかの時を有してやがては消えていった。

俺は一見して訳のわからない単語の押収を聞き流しながらも、本質を見極めんとさらに耳を傾けた。




「≪検索終了・結果完全一致により彼が隊長の『重要人物』であると断定されます。≫――――――お主、モルナ隊長の関係者であるか。失礼した、魔人スーツ研究所の関係者だと疑いをかけてしまった。」


「…魔人スーツ研究所?」




俺は初めて聞く単語に思わず聞き返してしまう。

が聞き返しながらも何となく理解できた。きっと右の道にいった心山くん達が報告してくれた『建物』がきっと研究所なのだと今まで異世界を渡り歩いた勘がそう訴えている。



「…おや?魔人スーツを知らぬのか?まあ身体能力を数倍に引き上げる奇跡の服であるからな。内容は一般には秘匿にされているし、お主が知らぬのも致し方ないと見える。」


「…それがこの近くにあると?では何故君はここで門番なんかしている?それに確か黒聖警軍がどうとかって、、、」


「黒聖警軍も知らぬのか?お主、今までどう生きたら我らを知らずにいれる?我らは世界の治安を守りし立派な責務を日々全うしておるというのに」


「…なるほど」




どうやら先に彼が言った組織は、日本で言う『警察』か『軍隊』に近いものなのであろう。

彼の古臭くて何処か回りくどい言い回しから何とか判断をする。

しかしそれならばいっそのこと俺たちが襲われた理由がわからん。

彼の言う闇門というのがそれほど重要で秘匿なものであるのか、あるいは何か別の目的があるのか…

というかもう殴っちゃっていいですかね?俺今腹パンを思いっきり決めたい気分なんですけど





「…でもそれならいっそのこと分からない。何故俺らが襲われる羽目になったのか、何故俺の仲間を殺したのか、正当性があるなら今のうちに述べろ。でないとサックリと殺っちゃうぞ?」


「弁解の余地もない。その怒り、我が受け止めよう。」


「…ほほう、自分から捧げるか。大した覚悟だねえ」




俺の腹パンを受けようなんざ、命がいくつあっても足りないと思うけど仕方ないよね?彼が自ら望んだことだし

俺は無表情の仮面を捨て、ギラギラと悪そうな笑みを浮かべた。

それに一抹の動揺も見せぬまま、堂々としている彼を見て改めて強者であると実感する。




「…じゃっ、とりあえず腹に一発受けてもらいましょうかねぇ?」


「御意。それだけで済むのなら是非もない。」



『ボルカス』は構えを解き、全身の力を抜き去ったようでユラユラと体を揺らした。

…これはもしかしたらぶっ飛び記録更新となるかもしれない。

俺は呼吸を整え、一気に加速し彼の懐に入り込むと体全体を螺旋に描きながら手のひらを軽く目の前の巨体に押し当てた。



「無手『螺旋天昇掌』」



そう俺が技を告げた瞬間周りに激しい衝撃音が鳴り響き、3mは有に超える彼の巨体が回転しながら後方数百メートルまで飛んでいく。

勿論周りの木々も巻き添えをくらって、なぎ倒されながらである。

並みの生物なら間違いなく死んでいたであろう。

だが彼も只者ではないようで、俺の意図を見定めて急所は僅かにそらされてしまったようだ。

残念、過去最大5キロを観測した技の記録更新とはいかなかったようである。




「どっ堂ケ崎くんって一体何者!?」


「…さあ?何者だと思う?早乙女さん」




ボルカスが飛んで見えなくなると早乙女さんがそう僕の黒いカッターシャツを掴んで聞いてきたので、とりあえず悪ぶって聞き返してみました。

どうも私が異世界転移累計532回男です。以後お見知りおきを




「えっーと、、、化物?」


「…もうちょっとオブラートに包んでくれてもいいですか?」



普通にショックだよ?普通を日々心がけて密かに尊敬の念を抱いていた早乙女さんにそんなこと言われるなんて…

俺は普段では地味で平凡な生活ってやつを心がけてるんだから、こんな時くらい実力を曝け出してもいいでしょう?

異世界では俺勇者だか魔王だか英雄だかって言われてんだから、まだそっちで言われた方がここまで傷口も開かないですんだはずなのに…ぐすんっ




「…っで、でも、助けに来てくれた、んだよね?あっありがとう。」


「…どういたしまして。」



彼女がぎこちないながらも笑顔を見せると、俺もつられて微笑を浮かべてしまった。

…なるほど、クラスで早乙女さんのことを『癒しの姫君』とよんでいた理由が何となく理解できた気がする。

彼女の笑顔は人を元気にする、勇気づける力を持っているみたいで自然と心が晴れやかになってつい笑ってしまうのだ。

あぁ…こんな人が彼女とかになってくれたら、毎日が楽しんだろうなあ




「!?やっやっぱり堂ケ崎くんは眩しすぎです。見ていられません!微笑でその威力とは…彼女さんが羨ましいですね!!」


「…ソウダネ。ははー」




これだ、きっとこれなんだよ!俺が彼女できない理由は!

こんな綺麗な人に彼女がいないはずがないってみんな思い込んでしまっているんだ。

どんなに俺が彼女なんていないって言っても冗談と捉えられておしまい。

恋に発展することはまずない。みんな萎縮してしまって手を伸ばしてこない『高嶺の花』『みんなの憧れ』?

そんなのクソくらえだ!俺は捨てられるのならいつだって捨てていいぞ?こんな顔面なんて!

俺は今すぐ泣いてしまいたいのをなんとかこらえて、棒読みながら彼女に返事をした。




「…それはそうとあいつらまだこっちに来れないのか?ちょっと遅すぎるな。」


「あいつら?堂ケ崎くんの他にも助けようとしてくれた人がいたの?」


「…ああ、会長と赤神さんと森重くんかな?森重くんがここまで先導してくれなかったらきっと俺はここまでたどり着いてないと思うよ。」


「もっ森重くん、生きてたんだ。良かった一人でも生きていてくれて」


「…早乙女さん」




彼女は酷く憔悴しきった顔で力なく笑う。

俺は何も言えずにそのまま黙ってしまった。

だってここに来てしまったのは少なからず俺のせいでもあると思うから、だから彼女が責任を感じる必要はないはずなのだ。

でも彼女はそれでも自分のせいだと思ってしまうのかもしれない。

誰のせいでもないと思うが、それは俺の口からはおこがましくて言えはしない。

だから慰めることができるのはやっぱりその立場にいる人にしか出来ないのでないか?

俺はそう思い、彼女に慰めの言葉をかけずにただ目の前の煙が完全に晴れるまで2人は黙ったままだった。




「…私は間違っちゃったのかな?堂ケ崎くん?六宮くんを犠牲にして生き残って、あまつさえ藍丸双子を見殺しにしてしまった。私は悪い女だよ堂ケ崎くん。」


「…早乙女さん、悲しんでるところ悪いんだけど一ついいかな?」



俺はひとつの気になるフレーズに物申したくて思わず彼女に許しを請うた。

早乙女さんは目に涙をためて俯きながらも返事をする。




「…何?」


「…えーと俺の記憶が間違っていなければね?『藍丸』なんて双子、修学旅行には勿論、皐月が原高校には在学してないはずなんだけど」


「え?」




俺の一言で彼女が一気に驚きの表情に変わってしまったことは最早言うまでもなかった。

藍丸双子なんて存在しなかったのさ!(`・ω・´)キリッ

それと白い化物は一応味方?だったらしいっすwただの化物ではないのだよばけものでは!




次回予告

藍丸双子は幻覚?そんな馬鹿な!?

でもそんなことには関係なく開かれる闇門、果たしてその先には何があるのでしょう?

乞うご期待

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ