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好きな人がいるから

5000PVとユニークサウザンド超!ありがとうございます。

これからも頑張って書いていきますのでよろしくお願いします_(._.)_

高層ビル並に大きな木々、湿っていてどこか薄暗い森の中、二つの足音が辺り一面僅かに聞こえてくる。

彼らは何かから逃げるようにその歩調は非常に乱していて、今にも途絶えてしまいそうなほど弱弱しく感じさせる。

今まさに命の灯が神のいたずらによってか、何によってかは定かではないが確かに消されようとしていた。

だが彼らはその運命に抗おうと必死に足を動かして、前へ前へとその足を進めている。

まるで青虫が足を潰されながらも無様に這いつくばって生き永らえようとするように、彼等の行動は人外の者から、怪物達からすると滑稽極まりない行動だとも知らずに…

彼等は逃げて逃げて逃げようと必死になっていた。




(くそっ!あの時足を捻っていなければもう少し状況は違っていたかもしれないのに)




片割れの男が動きの鈍くなった左足を叩きながら、しかし尚も歩調を緩めることはない。

男の顔には明らかな疲労の表情が浮かんでいた。

どれ位休まずこうして動いているかは最早知る由もない。

それでも男は足を止めるわけには行かなかった。

しっかりと手をつないで引っ張られながら歩いている彼女の方も手を離してしまったらその場に倒れ込んでしまいそうなほどその歩調はたどたどしい。

その状態を見かねた男は彼女の手を強く寄せて、二人三脚をするかのように肩を抱きながら真横につき、ゆっくりと前に進み始める。

スピードは遅くなってしまうが、これで幾分かは彼女も楽になるだろう。

そう男は考えながら歩みを止めてしまったら最後、そこなは死が待っているとどこか確信めいた恐怖だけが今の二人を支えて足を動かしていた。




(小さい頃久音くんに習った緊急回避術。ちゃんと覚えていない自分が嫌になる。何故ちゃんと聞いていなかったんだよ小さい頃の僕。)




この男の小さい頃というのは約5年前に遡る。

この頃から妙に大人び始めて、世界を達観し始めていた彼の幼馴染である堂ケ崎久音は(幼い彼は知る由もないが、このとき既に久音は異世界転移経験100を超えていたという。)同学年の子達と遊ぶこともなんだかバカらしく思えてきていて、それは幼馴染であった安藤清詞も同じことであった。

彼は寂しがった。

今まで一緒に野をかけ、ごっこ遊びをし、一緒に笑い合った友人がいきなり自分と距離を置いてきたのだ。

複雑な心境だったろう。しかし彼はそれを臆面にもださず、ただただ彼を慕い続けた。

そんな時だ突如嬉々として『危ない時にはこうやって逃げよう講座(通称危険講座)』を開いていたのは。(久音は父親に習ったのだと言い訳をした。彼にそれが通じたのかどうかは確かめる術もないが…)

理由としてはただ単に彼にもしものことがあったら後悔してもしきれないし、この前行った異世界で仲間が目の前で交通事故にあったトラウマが発症しての杞憂的なことだったが彼は喜んだ。

また幼稚園のころみたいに一緒にヒーローごっこして(特に久音は正義のヒーローをやりたがっていた。彼はいつも悪の手先役をかってでていた。)いたことを思い出して懐かしくさえ思えた。

でも彼は久音が友人を心配して行ったそれを真面目に取り組まず話も上の空で、久音本人も少し苦い顔をする。

仕方のないことではあるのだ、所詮耳に覚えのない使うかも分からない護身術など小学校の高学年如きが真面目に取り組めるはずもなかった。

それが友人が講師であるなら尚更だ。

なので彼はその講座を受けたとはいっても内容も思い出せはしない。

だからバスからの緊急脱出の際に足を捻るというへまする羽目になったのだった。


彼の行った所為のことだ、自業自得としか言いようがないだろう。

ちゃんとあの時彼の講義を聞いていてちゃんと会得さえしていれば、きっとこんなことには…少なくとも愛華ちゃんだけは早々に逃がしてあげられたかもしれないのに。

そう男は思ったが後の祭り、後悔先に立たずとはよく言ったもので何を言ったところで過去が覆ることなどあり得ない。

男は自分自身の歯がゆさを噛みしめた。





「あっ安藤、くん…私のことは、置いて、早く、逃げて。」



隣から今にも事切れそうな彼女のか細い声が当然男の耳にも入るが、彼は強く肩を抱くその手を緩めやしなかった。

当然だと彼はそう思った。

彼女は彼にとって、凄く凄く大切な人で例え死んでもこの手を離すつもりはない。

しかも彼には亡くなった六宮との約束があった。

『もし俺が死んだとしても早乙女愛華をどうか守ってやってくれ』と涙ながらに頼まれた生前最後の約束事が彼の心の中には深く刻まれている。

彼としてもそれは願ってもないことで、彼は彼女をどんなものからでも守り通すつもりでいた。




「大丈夫だよ―――――早乙女さん。きっとこんなとこ無事脱出して、生きて帰れるんだから僕たち。」




彼は隣の愛華ちゃん(本人の前では苗字読みをしている。いつか名前で言い合える関係になれればとそう思っている。)にぎこちない笑顔を浮かべた。

彼女は泣きそうな顔をして、でもそれを彼に見られたくないのだろうか。乙女の恥じらいとでもいうのか

男の方へと体重を預けて首を無意識に彼の肩に頭を添えて、角度的に顔が見えないように仕向けている。

内心男は心臓バクバクで、自分が多少なりとも好意を持ってる相手にそんなことされると正直生きた心地がしなかったが(いい意味で)

彼は校内イケメン三人衆の一人として(自分としてはイケメン三人衆呼ばれるのに抵抗がかなりある。なんか僕が軽い男みたいに感じるし、僕は男子とも仲良くやっていきたいので変なとこでこじれさせたくはないのだ。)、女性の扱いにこなれていた。

だから難なく彼は彼女の頭をやさしく撫でることが出来た。

それに彼女がさらに顔を真っ赤にしたことは言うまでもないことである。




(あっちはどうなっただろう。無事だといいんだけど…)




こちらに大部分の巨大昆虫たちは引き付けてきた彼だが(今は何故かその姿は見えない。どこに行ったというのか。)しかしあちらにも相当数の巨大昆虫が彼らを追いかけまわしているはずなのだ。

もしかして死んではいないだろうね?春風さんに森重くん。

彼女らまで死んでしまったら犠牲になった藍丸くん達に僕は申し訳が立たない。



(くそっ何故あの時もっと早く、もっと強引にでも撤退命令を出せなかったんだ!僕は)




今も脳裏に焼き付いて離れないあの双子の惨たらしい死に様を彼は思い出す。

二人とも胸を貫かれて、肢体をバラバラに引きちぎられ、あの白い化け物の元静かにその息を引き取ったのだ。

彼らが死んでしまったのは僕の、二人を率いていたリーダーとしての責任である。僕がもっと早くあの場から撤退命令を出していれば…

或いは黒い霧が立ち込めた森を見たときに、あのカーテンのように横に広がる闇を見たときに、引き返していればこんなことにはならなかったのかもしれない。

僕らは単純に反抗心や嫌悪感、その他諸々の負の感情を抱いてしまった『ペラリス』と名乗る研究員の彼から逃げたかっただけなのかもしれなかった。

怖かったのだ、彼が俺たちの命を根こそぎ奪っていくんじゃないかって。

だから安全な場所を求めた。

あいつから絶対見つからない、あわよくばあの楽しかった学校生活に帰れるような、そんなことを夢見て少なくとも僕は動いていたのだ。




(…っでももう、ダメみたいだ。僕たちは多分ここで死ぬ。)




僕たちの前にあの双子を殺した憎き敵が舌なめずりでもするように悠々と目の前に立ちふさがった。

雪のように白いフォルムに顔には不気味な仮面をしている。

両手両足は刺々しい飾りがこれでもかという位に彩られ、全体的な印象としては竜が二足歩行している感じだろう。

表情は全く見えないが長い後ろ髪が感情を表すようにゆらゆらと風もないのに揺れている。

逃げ道はどこにもない。四方八方巨大昆虫だらけで、鼠一匹通る穴すらないのだ。

どうやら彼らはじわりじわりと周辺一帯を囲んで、僕たちをこの白い親玉の前へと誘導されていたらしい。

何と小賢しいというか、こちらを舐めきった行動だと言わざるを得ない。

やろうと思ったら簡単に一思いでやれただろうに。

獲物を前に舌なめずりするのは小物のやることだよ?怪物さん?





「…どうやら、もう逃げることは出来ない、みたいだね。」


「おっ置いて行ってよ安藤くん。もしかしたら安藤くんだけなら逃げられるかも…わっ私なんかが生き残っても、仕方ないもの。足手まといだもの。」




愛華ちゃんは全身を激しく震えさせて何とかそう告げるたようだが、僕の意思は変わらない。

彼女を絶体にこの場から逃がす。例え僕が死んでしまっても、だ。

だから彼女には絶体に生きるんだという強い気持ちを持ってもらわないと困る。

強い気持ちは運命を大きく凌駕する―――昔、そんなことを誰かから聞いた気がするから。

この逆境を乗り越えられる強い気持ちってやつを、彼女にも持ってもらう必要があるのだ。




「それは、出来ない相談だね。」


「あっ安藤くん?」




僕は彼女をその場に優しく座らせて、目の前の怪物に対峙する。

怪物はまだ自分に立ち向かおうとする獲物に、歓喜の雄たけびを上げた。

あまりの声の凄まじい圧力に思わず僕の体はのけぞり膝を地面につけそうになったが、何とか持ちこたえて毅然とした態度で仁王立ちする。

気持ちだけでもアイツに負けることはあってはならない。

今の俺には守るべき人や守るべき意地が存在している。

おいそれとやられてやったりはしないんだからな?




「…早乙女さんは言っていたよね。『自分の命を無駄にしない』って、さ。だから最後まで諦めないで、泣かないで、希望を捨てないで?」



「それが彼が助けたいと思った『早乙女愛華』って人なんだと僕は思うよ。」





僕は怪物の方から目をそむけずにそう言うと、次の瞬間には怪物に向かって一歩前に踏み出していました。

だから彼女が僕の言葉を聞いてどう思ったのかは分かりません。

でも届いてくれているといいな。そして決断してくれるといいな。

生きるんだって、何をしてでもこの場から生きるんだって。そう考えてくれるだけで僕はとても嬉しいよ。

なんて思いながらも僕はおおよそ勝てる見込みのない戦いに自ら身を投じたのでした。
























「おいおい今度はなんだというんだね?」




会長がメガネをずり下げながら、今目の前にある光景に半場呆れ返るように呟いた。

目の前には無数の蜂だか蟻だかの巨大昆虫どもが寄り集まって、壁のように一帯を覆っていた。

目線を上げるとそれは木の天辺に到達したのではないかというぐらいに積み上げられている。

それほどまでに俺らにこの先に行かせたくないのかね。相手さんは



「…どうする?」


「…どうするも何も突破するしかない、と思うけど」



まあそれが出来たら苦労はないのだろうが、実際俺だけならなんなくあの包囲網は破れる自信がある。

しかし一人は腰が抜けた少年(12歳)一人は運動神経はそこそこの一般高校生…(勿論赤神さんは除外。彼女もきっといけるんじゃないかな?)

彼らを無傷のまま突入させるのは流石に無理だ、ね。

せめて多少体捌きがうまかったら昆虫どもの間をくぐり抜けるのはわけなかったと思うのだけど、それを如何にも理系の二人に望むのはあまりにも酷な話だろう。

仕方ない、どこか空いてるところを地道に探すか若しくは厚みが薄いところを狙って特攻するしかみんなが向こう側に渡る方法はないようだ。




「…じゃあここら辺一帯を回って薄いところを「ヴァァ嗚呼嗚呼アアァァァァァア嗚呼嗚呼アア!!!!」」




俺がこれからどうするか3人に表明しようとしたまさにその瞬間、狙ったかのようにそれは来た。

突如この世のものとは思えないほど大きな雄たけびが周囲の音を一気にかき消したのだ。

そしてその爆音は地面を揺らし、空気を揺らして肌をチリチリと緊張が走る。

俺が立っているのもままならないほどにである、こんなの発生源から比較的遠目だからよかったものを近かったら確実に鼓膜破ってるよね。

なんて思いながも俺は冷静に音から逆探知を行いあちらの居場所も何となくだが、把握できた。




「さっ、さっきのは一体なんだったんだ?」


「…あれが白い怪物?」


「だっだと思うけど?まっまさかあそこに行く気か?お前ら」


「…まあそのまさかだよねー」




今だに耳鳴りがするのか両耳を一生懸命押さえている二人は置いといて、俺は背中に背負った森重くんを優しく地面におろした。

彼は俺の意図が全く読めずに、頭にはてなマークを浮かべていることだろう。

でも俺は彼に構わず身軽になった身体を、準備体操をするように伸ばし始めていた。

奴の声はまさに『これから殺っちゃうからねー♪覚悟してよねー♪』みたいな気合を入れるかのような声だった。

おそらくあの声の主は目の前の哀れな子羊に一切の施しを与えることもなく、無慈悲な死を与えんとその拳を振るう。

それだけは絶対避けなければならない。友人は一人でも多くこの手で救わなければならないのだ。

異世界転移したのはきっと、俺の、せいだから

だから多少の無茶を押し通してでもいち早く彼らの元にたどり着かなければならない。

俺は自分の両頬を強く叩いて、気合を入れる。

これからは『日本という国で平和な暮らしをしてきた一男子高校生』ではなく『冷静沈着な戦いの神と呼ばれていた俺』として考え方を切り替える必要がある。

俺は深く深呼吸をして、今まで被っていた全ての化けの皮を猫の皮をまるで突風で飛ばされたかのようにあっさり綺麗さっぱり脱ぎ捨てた。

分かる者にはわかる黒いオーラを全身から放出し、不敵に笑うその姿はまさに俺らが散々言ってきた『化物』そのものであり、それ以上の禍々しい忌むべき存在のように思える。

こうなってしまっては最早制御など効きそうにない。

目的を果たすまで俺は突き進むことだろう。全てを壊して全てを砕いて前へ前へと




「…俺が先行する。置いていかれないようについて来て。」


「…了解。おかっぱは私の背に乗せるから心配いらない。」


「はあ?俺は嫌だぜ?こんな暴力剣士に体を預けるなんて、何が起きるかわかったものじゃない。」


「…いいから、『堂ケ崎』くんの言うとおりにして。」




赤神さんが素直に森繁くんを担いだことを見届けると俺は目の前の巨大昆虫軍団に真正面からぶつかるように加速していく。

その後をやや速度を落とした赤神さんと(じゃないと森重くんが振り落とされる可能性があるからだ)すでに精根尽き果てたのかよろよろになりながらもついてくる目白木会長。

確認を横目でした俺は、一線の黒風となって哀れな昆虫どもに死という制裁を加えていく。

今の俺の姿を見たものは口々にこう思うことだろう―――まるで『死神』のようだ、と

俺の周りには死が蔓延し今この瞬間まで確かに生きていた彼らも次の瞬間には死体へと早変わりする。

彼らは自分が何されたのかも分からずに死んでいく。それは理不尽な虐奪だった。

でもそれでも俺にはそうまでしてでも、守るべきものがある。

数十秒後、見れば既に周囲を囲んでいた昆虫どもの壁は崩壊し、数キロ先にはさらに密集しているであろう壁が見えた。

あそこに奴はいる早く行かなくては

そう確信した俺はその場にとどまり、じっと目をつぶって静かに何かを探るように両手を縦横無尽に動かし始める。

後ろからどうにかついてきた赤神さんと会長の気配を感じたが無視を決め込む。

俺は彼らの命脈を探して全身の神経を集中させていた。

命脈さえ途絶えさせてしまえば、彼らは勝手に自滅してくれる。

あまりにも多い敵の数にこうした方が早いと考えた俺は、早くも見つけた命脈に合わせるように右手をゆっくりと突き出す。

するとどうだろう?今までブンブンと羽音を言わせていた虫どもは一匹残らず地面へと這いつくばって、以降起き上がることもできずに絶命する。





「なっ?そんなあれほどの数をこの一瞬でどうやって?」


「…ぱない。」




会長の驚いた声と淡々とした赤神さんの声をバックに数キロ先の木々の間から俺は今にも手を下そうとしている憎き敵の姿を捉えた。

俺はトップスピードでその場に向かい(俺のトップスピードは音速程度。)敵のその白い手首を掴んだ。

敵も味方も驚愕の表情を浮かべて、たじろぐが俺はそれに構わずこう言い放つ。





「…通りすがりのただの一般人。ここにさんじょー」

安藤くんは早乙女さん狙いなのです。

早乙女さんがチョロインっぽいけど、安藤くんイケメンだから仕方ないね

あと主人公スキルまだ使ってないのに素で強いんですがそれは…?




次回予告

ついに対戦となる白い怪物

でもその対戦は意外な決着に!?

乞うご期待

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