05 召喚の日 ③
忙しすぎて書けん・・・
やっと召喚・・・なのか・・・?
蒼の神殿
デステニア王国において、重要な儀式が行われる際に使用される最重要施設だ。
多くの吟遊詩人達に偉大さ・雄大さを謡われ称えられるその神殿は、実際のところそれほど大きな施設ではない。
一般開放されることのないこの神殿に、噂を聞きつけた他国の大使が一目見ようと訪れるものの、みな拍子抜けした顔で帰っていく。
ぱっとみたら、ただ外観が青いだけの四角い建物だ。中級貴族の屋敷程度の大きさの四角い建物。単純に地味なのだ。
この神殿を遠目でも見ることを許されたある人は、吟遊詩人は大げさだと失笑し、ある人は、こんなものを有難がるこの国の程度が知れると嘲笑した。
だがそれもしょうがないのかもしれない。彼らは外から眺めることしか出来なかったのだから
「……美しいな」
何度来てもそう思う。
大広間の中に降り注ぐ蒼い光、無意識に視線を上に向けた先に広がるのは蒼穹。
蒼輝石で魔術的に構成されたこの神殿から、外を見ると薄い青で色づけされた風景が目に入る。空もまた然りだ。
そして外からの光は、内部を青く神秘的に照らし上げるのだ。
街の吟遊詩人に歌を教えたのは、この神殿内部を見たことがある者に違いない。ブリッツは幻想的な風景に息を漏らしそう思った。
「ブリッツ副長、準備が整いました」
部下の声で一気に現実に引き戻される。
ふう、と息を吐く。今度はため息だ。
「わかった。始めるぞ」
蒼輝石の床に描かれた変形八芒星の召喚陣。それぞれの角に青のローブを身に纏った者たちが佇んでいる。
ブリッツは嫌悪感も露わに顔を歪ませた。
部下が悪いわけではない。
始祖の代より継がれた、この荘厳で美しい誇るべき施設で、こちらの都合で強制的に人を召喚するという醜悪な儀式を行うことに
尊敬する先祖たちに唾を吐くような忌避感を覚えるのだ。見ると召喚陣の角に立つ七人の部下達も似たような表情をしている。誇り高い王宮魔術師団、皆自分が何を行い何を汚しているのか痛いほど理解しているのだ。
その誇りを理解しない輩が一人、ブリッツの後から入ってきた九人目の男ロイズだ。
「さっさとやれ! 陣の枷も外していいんだ、今度こそ成功させろ!」
実力も無く、取り入るしか能の無い新団長のセリフに空気が凍る。
なおもロイズがヒステリックに喚き散らした。
「成功しないとこの国は終わりだ! お前たちも終わるんだぞ! だから真剣にやれ!」
成功しないで終わるのはお前だ。
部下たちの突き刺さるような冷たい視線が雄弁にそれを物語る。
そもそも真剣にやらなければ凶悪すぎる術式の反動で命を落としかねない。そういう類の秘術であることなど、腐っても王宮魔術師団に所属できる能力がある者なら理解できそうなものだが、目の前の男にはそれがわからないようだ。
右に視線を向けると7人の部下の一人であるギルバートが人を殺しかねない強烈な視線をロイズに向けていた。
このまま構えていても良い事などなさそうだ。
ブリッツは無言で変形八芒星の一角に立つと詠唱を始めた。
■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■
2089年10月24日 11:07AM 運命の時
『いよいよ実験が始まる模様ですっ! 何度も繰り返しますがこれは歴史的な実――』
「うるせえ……」
容赦なく副音声をOFFにする太郎。
さすがに研究所スタッフの実験説明の間は副音声は入れられなかったが、高精度同時多重翻訳ボトムを通してもなお異次元言語でしゃべってるとしか思えない研究所スタッフの説明に司会者は我慢出来なかったようだ。
研究所スタッフは相変わらず淡々と宇宙語をしゃべりつづけていた。たまに「理論」とか「法則」とかが聞こえるのでかろうじて人間語でしゃべっていることだけは何となくわかる。
イツキが横を見ると太郎がフンフンと大きく頷いていた。なんというかちょっと引く。
そして説明も終わり、実験を始めるようだ。現場の映像はどう見ても素人が撮っているようでブレブレだ。一際大きく視点が移動し、白衣を着た男性の手元を映す。そしてその男性がタッチパネルを操作し、最終的に芝居がかった仕草でタッチパネルの上に手のひらを置いた。指紋認証にでもなっているのだろうか。
そしてまた目が痛くなるような乱暴な視点移動をすると、カメラは透明な円筒形のケースを映す。
大きさは視点移動とズームが乱暴すぎてよくわからなかった。
と、突然そのケースの中に亀裂が走る。ケースが壊れたのか!? と一瞬不安になるもそれは杞憂のようだった。ケースではない、”空間”に亀裂が走っているのだ。
「なっ!」
「これが、この先が異次元なのか……!」
絶句するイツキと太郎
二人だけではないだろう。世界中でこの実験を見ている人たちが今この瞬間絶句しているに違いない。
一瞬視点移動でスイッチを押していた男性が映されるが満足そうに微笑んでいる。
成功だろう。世紀の実験は成功したのだ。
「っ!!! っ!!! ……っ!」
太郎はその感動を言葉に出来ず、ただひたすらガッツポーズをして横で暴れている
世界中の科学ヲタ共がこうやって喜びを爆発させてるだろう、先ほどの司会者などは絶叫して倒れてるのではなかろうか。
何となくすごいんだろうな、としか思えないイツキが、いつの間にか踊っている親友を微笑ましく見やってから映像に目を戻した時
それは起こった
破砕音。
爆発音ではない。圧倒的は破裂の音。
一瞬だけ上半身を消失させたスタッフが映り、そして
映像がブラックアウトする。
「なんだ……? 何が起こった……?」
太郎がまるで現場にいるかのように焦って呟く。
「し、失敗……?」
「んなわけあるか! もう基礎実験は何回も成功させてるんだ! 失敗するわけねえ!」
「だって……! 破片で上半身もってかれてる人が映ったって!」
「そんな、だってあの実験は……」
ディスプレイに目を戻すと、映像はスタジオに戻され大口を開けたままポカーンと立ちすくむ司会者。
誰もが何が起きたかわからない。
この番組を見ていない人にはそもそもわからないだろう。
屋上から外を見れば当たり前のように道路には車が走っているし、真下のグラウンドからは体育中の生徒の歓声が聞こえる。
実験がどうなっても世界は変わらずまわり続ける。
だからイツキは根拠なく親友に呟く。
「だ、大丈夫だって! きっと何か――」
空震
途方もない大轟音と共に
空間が揺れた。
それはあまりに馬鹿馬鹿しいほど文字通りに”空間”が揺れたのだ。
――地震!?
イツキはとっさにそう思うが、そんな甘い考えを捨てざるを得ない。地面は揺れていない。いやそんなことより……
「あれは……何だ……?」
呆然と呟く親友の視線を追う。そこには、
見渡す限りの広い青空に、雄大な空を分断するかのように
「亀裂が……っ」
――ドンッッ
空震
空を縦断する亀裂が広がる。
たまらずイツキが振り向いて叫ぶ
「太郎! 何が起こ――」
振り向いて目に入ったのは闇。
何が起こったか考える暇もなく、イツキは少しの光も届かない真っ暗な空間にいた。
キョロキョロとまわりを見渡しても何もない。完全なる無、だ。
外なのか内なのか、それすらも判断つかない完ぺきな闇、だがイツキには混乱する暇すら与えられない。
一瞬浮遊感に包まれたと思うと、上か下かもわからぬ闇を、イツキは落下した。
やっとだ・・・ やっとチョイハーレムを書けるのだ・・・っ!