分流の悟り
掲載日:2025/11/07
山寺は静寂に包まれ、老僧の明空は塔の頂で夜の巡回をしていました。彼は山あいの向こうに広がる、幽暗な古木の林をじっと見つめます。
弟子の清遠は、茅葺きの小屋で苦行に励み、仏法を深く悟ろうとしていました。清遠が求めているのは、師の教えや門派とは異なる、真の道です。逃避ではなく、真理への探求でした。
明空が山の縁まで歩み寄ると、水が流れる音が聞こえてきました。
一本の細い流れが、主となる滝の岩の隙間から分かれ出て、それまでの流れとは違う方向へ奔り去ろうとしています。
明空はすべてを悟りました。清遠は、この分流する水と同じなのだ。源の清らかさを宿しながらも、定められた道筋を離れ、自らの世界を切り開く運命にある。
翌朝早く、その分かれた水は、すでに遠くへ流れ去っていました。
これは、選択であり、また、一つの継承の形でもあったのです。




