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三題噺もどき3

ルーティン

作者: 狐彪

三題噺もどき―ごひゃくきゅうじゅうなな。

 


 バタバタという足音で目が覚めた。


 誰かというのは考えるまもなく母でしかない。朝からこんなにドタバタと動けるのは母しかいないのだ。あと単純に仕事があったりするのが母だけというのもある。

 父も妹二人も、今日から冬休みである。

「……」

 輪郭のはっきりしない視界は、気づかぬうちに抱いていた鯨の人形が支配していた。

 ホントは夏用の涼しくなる奴なんだけど、最初からそんな機能は働いていなかったようなものなので、冬に抱いても少々温かくなるくらいだ。

 昨夜は寒かったからなぁ……いつの間に引っ張ったんだろう。

「……」

 鯨の穏やかな寝顔をぼうっと眺めながら、未だにバタバタとしている足音を聞きながら、はて今は何時だろうと考えてみる。

 今日は早番ではないはずだから、早朝ではないだろう。遅番でもないだろうから、そんなに遅い時間でもない。……時計を見た方がはやいな。

「……」

 鯨とは反対側に置いてある携帯を見るために、体を動かす。

 毛布が引っ張られて動くので、小さな隙間ができてそこから冷えた空気が入ってくる。寒いので辞めて欲しい。足で適当に戻しながら携帯を手にする。

「……」

 7時半か……起きてもいいが、何もすることないからな。

 かといって、妙に寒くて目が覚めてしまった感じがある。寝直すような気にもなれそうにないし。案外目を閉じてしまえば寝れそうな気もするけれど。それは違うような気もするし。そんなに思案するならさっさと起きてしまえばいいのにと思うが、寒いので布団から出るのも惜しい。

「……」

 あぁ……だけどそうだ。

 今日は予定があるのだった。

 時間の指定はないけど、外に出る用事があるのを忘れていた。思いだした。

「……」

 まぁ、その用事の相手がいつ起きるのかも分からないので、早めに起きたところで意味はないかもしれないが……もう起きてしまってもいいか。待つのはいつものことだし、どちらにせよ昼過ぎまで待つなんてことはないだろう。こっちが起きて居れば気づいて起きてくるかもしれないし。用事はさっさと済ませてしまいたい。

「……」

 そうと決まれば行動は割と早い。

 ついさっきまで温かかった布団の中は徐々に冷え始めているので、冷たくなってきた足を曲げて、体を起こす。足先が随分と冷えてしまった……冷え性の人ってどうやって寝るとき足を温めているんだろう。靴下とか履くのは嫌なんだよな。

「……」

 冷気にさらされた体が冷えていくのを感じながら、足を床に下ろす。

 その辺に放り出していたルームシューズをひっかけながら、とりあえずお手洗いに行く。

 ……どうやら足音は消えた上に、人の気配がリビングからしないので母はもう出たようだ。早いな相変わらず。

「……」

 部屋に戻り、ベッド横の棚から眼鏡を取る。

 行動する前に眼鏡をかけた方がいいのだけど、なぜかお手洗いから戻ってから眼鏡をかけるのが癖になっている。何も見えないわけじゃないからなぁ……輪郭がはっきりしないってだけの話で。

「……」

 それから携帯を充電器から外し、コンセントを抜いておく。

 眼鏡の下に置かれていたケースをとって、携帯をはめて置く。外さなくても充電は出来るんだけど、なんとなく……夜寝るときに携帯をいじったりするんだけど、その時に邪魔に思ったことがあって、それからずっと寝るときはケースから外している。

「……」

 一端机で落ち着こうと思って、ベッドから机に場所を移動する。

 なぜか、その上に置かれていたコートをベッドの上に放り投げて置く。

 どうせ、昨日の夜に置いたんだろうけど、せめてクローゼットに直すか、椅子に掛けるかしたらよかったのに。

「……」

 そういうならなんで今ベッドに投げたんだって感じだが。

 どうせ今日外出するときに着るので、その辺に置いていた方がいいのだ。

 ……とやっていて今日も帰ってきてベッドに置いて寝るときに机に置くんだろうな。

「……」

 さて。起きて動いたのはいいものの、何もすることがないぞ。

 机にいったん落ち着いたところで、この部屋はあまりにも寒い。

 リビングに行って炬燵にでも入っておこうかな。

「……」

 ついでにカフェオレでも飲みながら、この間買ったシュトーレンでも食べて居よう。あれ案外美味しくてはまってしまった。元々パウンドケーキとかかなり好きな方な上に、ドライフルーツも結構好きだから食べてしまえばはまるのは当然だったかもしれない。

「……」

 あぁ、そういえば今日は聖なる夜か。

 メリークリスマス。











 お題:鯨・机・コート

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