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2 旦那様 

 

「おい、旦那様がお帰りになるんだぞ。頭下げろ」


 執事が声を荒げ、少年と他の使用人は一斉に仕事を中断し、頭を下げた。


 屋敷の扉が開けた。旦那様と護衛が入ってくる足音が静かな広間に響き渡る。


 少年が仕える主人、旦那様はいわゆる上級貴族の一員だ。おそらく。判別するだけの知識を与えられていないからだ。


 旦那様に仕えるために必要最低限な情報だけ与えられている。例えば、身長や腰や肩の寸法。高貴なお名前ももちろんお持ちのだが、使用人が呼ぶことすら許されない。


「ぼっとするな、持ち場に戻れ」


 旦那様が他の部屋に入ることを確認し、初老の執事は乱暴な口調で指示を出した。


 本日少年に振り分けられた仕事は、中庭に落ちている枯れ葉を、一人でなんとかするという。


 広大な屋敷の中庭には、木々が色とりどりの葉を風に乗せて舞い散らせ、中庭を埋め尽くしていた。


(日が暮れるまで終わればいいけど…)


 この中庭の掃除はいつも終わりのない苦役だった。


(そういえば、旦那様と同じ部屋にいることすら、久しぶりだった)


 実のことを言うと、旦那様の顔がもうあまり覚えていない。思い出す少年の手がかりになるのは、食堂に飾る肖像画しかない。少年は週に数回、その肖像画をぴかぴかに磨くように指示される。


 その作業をするたび、肖像画に描かれている、薄っぺらい笑みを浮かぶその金髪碧眼の美丈夫を嫌でも目に入ってしまう。時折、その美しいお顔の裏には、自分とは違う種類の生き物が棲んでいるのではないかと疑うことがある。


(無意味なことを考えるのはやめよう)


 少年は葉っぱをかき集め、この美しい中庭の広さを少しばかり憎む。


 王国の中央、広大な森に囲まれた旦那様のお屋敷は、上級貴族の豪奢さと威圧感を一度に感じさせる場所だった。


 少年が屋敷に雇われたのは六年前、彼が七歳の頃だった。


(はじめて旦那様に会ったときのことなんて、もう思い出せない)


 少年は木製の熊手を手にし、石畳の隙間から葉をかき出した。金色や赤色に染まった葉は、次々と彼の集めた山に積み重なっていった。


「領主様のお屋敷に働けるなんて、幸運だね」孤児院の院長は、喜んでくれていた。


 孤児院にいた頃に耳にした旦那様の評判は、理想的な領主そのものだった。領民には寛容的で、領地の管理にも大変熱心であったと。


 少なくとも六年前はそうだった。


 実際、うろ覚えではあるが、最初の1、2年の暮らしはそれほど悪くなかった。素朴ではあったが三食がきちんと出され、昼には休憩時間があり、日が暮れるとある程度の自由時間も許されていた。使用人たちの顔にも、もう少し笑顔があった。その頃のことを思い出すと、「普通」という言葉すら頭に浮かぶ。


 だが、いつのまにか、旦那様が執着しはじめた。


 執着する対象は、他でもなく、富だった。


※読みやすいよう、一話を半分ずつ上げることにしてみた!


先のことはざっくりとしか決めていないが、主人公をめちゃくちゃに甘やかす予定!


ファンタジーものなので、ありがちな設定で遅いかもですが、よければいいねやブクマお願いします!

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