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茨姫の物語(ドライネーム)

勇気明日照の選択

作者: 仲仁へび



 勇気明日照。


 彼はゲーム好きの少年だ。


 十代半ばの少年。


 黒髪に、黒い瞳。


 体系は細身。


 顔つきは子供らしくあどけなさがあり、見た者に柔和な印象を与える。


 日本で生まれ育った子供の一人として特筆すべき点はない。


 ただ、一つ「ゲーム好き」という点をのぞけば。


 明日照は、三度の食事よりゲームを優先する時がある子供だった。


 新作ゲームはかならず発売日に手にして、ゲームをプレイするほど。


 彼はゲームの知識が豊富だったが、やったゲームは限られていた。


 彼が直接手に触れたゲームは、ここ最近発売されたゲームのみ。







 そんな明日照はある日、とある物語に巻き込まれてしまう。


 それは一つの世界の命運を左右する物語。


 そして、一人の少女を使命から解放する物語だ。


 ゲームで遊ぼうとした明日照は、画面の乱れを見て意識を失った。


 その彼が次に目を覚ましたのは、宇宙のような空間。


 うすぐらく、あてのない空間に漂う彼は、視線の先に光るものをみつける。

 

 その光に手を飛ばした時、


 物語は幕をあけた。






 明日照が降り立った世界は。


 砂嵐の多い世界だった。


 地面はみな、水を失って、長い時が立つ。


 赤茶けた大地が、緑をなくしたまま広がる世界。


 その世界は、枯れ尽きゆく世界と呼ばれていた。


 植物が生えず、大地の潤いがなくなっていくという問題があった。


 人々はその大地の中で希望を失いかけていた。


 だから、雨ごいの巫女を責め立て続け、追い詰めていた。


 人々は、たった一人に世界の窮状に対するうっぷんをぶつけていたのだった。





 そんな世界を目の当たりにした明日照は、少女を助けたいと思った。


 だから、その世界に自分のアバターを作り、重要人物達に接触した。


 彼等はゲームの主要人物だ。


 物語を動かすだけあって、様々縁や能力を持ち合わせていた。


 それらの点と点を、明日照は線で結び合わせていく。


 水がない現状を調査し。


 天気を解析し。


 必要な場所に赴き。


 必要な対策を施して居k。


 英雄と呼ばれるに相応しい行いを一つずつ積み重ね、問題を解決に導き、登場人物たちと絆を深めていった。





 けれど、彼は、最後に負けてしまった。


 ハッピーエンドが待っているはずの、最後の最後の戦いで。


「この世界はもう滅ぶことが決まっていたの。愚かな選択をした人々に罰が与えられるのは当然のことよね」


 たちふさがったラスボスのキャラクター。


 ネメシスと名乗る女は、その世界の人々を軽蔑しながら、最後に喋った。






 登場人物たちは死亡し、彼はゲームに参加する権利を失った。


 彼が行っているのはゲーム。


 だから、アバターが消滅したとしても、


 プレイヤーは死なない。


 けれど明日照は、安全地帯からの参加を拒否していた。


 最後の最後に、「人物模倣」という特殊な奇跡を用いて、ゲームの中の登場人物を模倣し、その世界に降り立った。





「コントローラーを持つことが、俺と向こう世界を分けるなら。俺はそれを投げ捨てる」





 彼はもう、ゲームの世界の人間をキャラクターだとは思ってはいなかったから。


 しかし、友に肩を並べたせいで彼は、その世界に生きる人間として命を落とすことになった。


 それでも彼は、自分の選択を後悔しなかった。


「勝てなかったのは俺たちが弱かったからだ。この選択が間違いであるなんて、みじんも思わない」




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