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夢中邂逅


――――――――――


「ふぅ〜っと」


風通りのいい場所に座れそうなちょうどいい感じの切り株があり登山リュックを下ろして腰掛けた。


奈良県天川村の洞川温泉を抜け山上ヶ岳への登山口から洞川道と呼ばれる参拝道を一時間半ほどで花の吉野山から続く大峯奥駈道と合流すると洞辻茶屋だ、古い時代劇に出てきそうなテーブル兼ベンチのあるいかにも茶屋な雰囲気のその場所は、祭日ともなれば白装束の山伏や登山者達で賑わうが開山中の平日は静かなものだ。

売店のカウンターはシャッターが閉まっているが、貼り出されたメニューは葛湯(くずゆ)やスポーツ飲料、うどんもあるようで朝も早かったのもあり見てるとお腹が空いてくる。

中央に祠があり開祖 役ノ行者が祀られている、手を合わし旅の無事を祈ったらリュックを下ろして床机に腰掛けようとした途端


「ブォーーーン」


嫌な羽音と共に視界にイエローとブラックのヤツが背後から耳元を掠めてきた。

わかっていただいてるとは思うがタイガースファンとかではない、刺されると痛いアイツ、アシナガバチだ。


ハチは黒い物を攻撃する習性があると聞く天敵の熊が遺伝子レベルで伝わってるんだろうか?


いつの間にか長い廊下のように建てられた洞辻茶屋も走り抜け遠く樹間から大台ヶ原方面が見える道まで来た、ここまで来たら大丈夫か…「ブォーン」


まだ駄目なのか


助けてくれ〜っと声に出そうになった頃

辺りは霧に包まれてさっきまで見えていた景色どころか、かろうじて足もとに道があるなとわかるくらいに。

蜂も彼らのテリトリーから外れたからか羽音も姿も見えなくなった…そして冒頭の切り株に腰を掛けるまでにはこうしたエピソードがあったのだが今朝は早起きなのと蜂に追いかけまわされたのもあり座ったら冷んやりした空気と疲れとで意識が…寝落ちそうな……少しだけ目を瞑ろう…かな…


            …

              …

                …


「…さぁ〜次はどう行く?」


「そうだなぁ〜こっちの岩がある方からはどうだろう」


元気そうな声が聞こえてきた


「こっちからがいいと思うわ」


あれ、ここって女性大丈夫なんだっけ?


眠りそうな微睡みの中、何とはなく聞いていた。


「わしもそう思うがな、こっちはそれ、そこまでは大丈夫じゃがその先に壁じゃ」


「オズヌさまはどう思います?」


んン 〜 オズヌさま!?

思わず会話の方に目を向け見てみると5人ほどのグループがルート選択をしているようだ、しかし服装がやけに昔な感じが、昔というよりも…

そう思った瞬間、オズヌと呼ばれていた人がこちらを見てハッとした途端に優しい笑顔を向けた。


どこかで会ったことがあるような?無いような?懐かしようにも感じるが思い出せない、こちらに向けてみせた笑顔には親しみがありそこに居たのかみたいな表情だった。


「オズヌさま、誰か居るんですか?」


一斉にこちらに顔を向けたなと思うと

また微睡みの中に入った時のように霞に覆われて溶け込んでいった。

         …

        …

       …

肌に風が当たり冷んやりしたしっかりと水を含んだ霧にゾクっとなり目が覚める。


夢だったのかな?


それにしてもどこで会ったのか、オズヌと呼ばれていた人、そういえば女性の方も見覚えのある顔だった。


いつどこで…


「あッ!?」


おもわず声が出た


思い出した、中学の林間学校を行く途中にバスの中でみた夢に出てきた少年たちが成長したのか?そんなことある?


複雑な現実と夢さまざまな出来事に想いをはせていると、周囲を覆っていた霧が青い夏空に消えていき太陽が緑に降り注いでいた。


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