ビル爆破事件
「はぁ、なんだか無駄に緊張しちゃったな……」
誰かに街中で急に声を掛けられるなんて、久しぶりでびっくりしたし……。
いやそれよりもあの写真、本当なのかな。やっぱり気になるな。
最近頻繁に発生しているとニュースで話題になっているビル爆破事件。
調査委員に聞き込みをされているカオル。
そして最近よく見る、聞き込みをしている集団……。
そういえばあの調査員は色々おかしかったような……。
あの人たちは何者なんだろう……?
ミナは違和感で頭がいっぱいになった。
「あー、もうっ」
ミナは気付けば来た道を戻っていた。
***
あの聞き込みをしている集団をなんとか探しだそう。
あの辺りにさっきはいたから、こっちかな。
見つけたら警察に突き付けよう。カオルが無実だと証明するためにも。
ミナは小走りで動き回り、調査員を探した。
ミナが公園の近くに差し掛かると、先ほど質問された田島の姿が見えた。
「こういう人を見かけませんでしたか?」
「知らないねぇ」
田島はまだ聞き込みをしていた。今のうちに警察に電話をしなければ。
ミナは慌てながらもカバンからスマホを取り出す。
そうしているうちに二人の男の会話が聞こえてきた。
「そろそろ交代の時間だぞ」
「おっす」
「あんまり無理するなよ」
「うっす」
「情報は手に入れたか?」
「そうっすね、ちょっとは手に入りましたよ」
そういってどこかに歩き始めた調査員と思われる若い男。
情報が何とかと言っていたけど、どこに向かうんだろう。
組織のアジトがわかるかもしれない。危険だけど少し後をつけてみるか……。
気づかれないようにミナは後をつけていった。
若い男はしばらく町中を歩き、やがて一軒の雑居ビルへと入っていった。
外から見るに、いかにも怪しそうなビルに見える。
なんでこんなところに入っていったんだろう……。
「どうだ、例の情報は手に入ったか」
「はい」
ビルの入り口付近で二人の男が会話していた。
なんかやばそうな会話をしている。
もしかしたら……怖い組織に首を突っ込んじゃったの?
そう思っていたら、ミナのスマホが鳴った。
ああ今鳴らないで、と必死に止めるも音は漏れ出てしまっていた。
なんでこんな時に鳴るの……。
「だれかそこにいるのか…?そんなところに隠れていないで出てこい」
「……はい」
いわれるがままにミナは姿を現した。
そして若い男の隣に立たされた。
「最近の調査員は入れ替わりが激しくて、顔も覚えられやしねえ」
どうやら私も組織の一員だと思われちゃったようだ。
「じゃあ今からすぐに現場に向かうぞ。ほら、返事は」
「はい」
わー、とんでもないことになっちゃったよ。
***
ミナは別のビルの中に言われるがままに連れてこられた。
「皆わかっていると思うが、今日は作戦を決行する。
これはあくまでちょっとした脅しだ」
組織の幹部らしき人物が指揮を執っている。大きな男で威圧感がある。
「あの方の依頼で今回の作戦は請け負っている。
なので我々のこの行動は正義の行動なのだ。わかるな」
部下たちは黙って、幹部らしき人物の話を聞いていた。
「では下の者は配置につき、上の者は作戦を実行せよ。作戦開始!」
大変!まずは何とかしてここから抜け出さないと。
***
なにやら不審な動きをしている者がいて、幹部から注意を受けていた。
「貴様ここで何をしている」
「お前、調査員じゃないな?」
「くそ、ばれたか」
不審な人物は必死に抵抗を続け、次第にその抵抗は激しさを増していった。
そしてミナの近くで、殴り合いの喧嘩が始まった。
ダメ、もう見ていられない。
「やめてっ…」
震えるようなミナの声が絞り出されると……。
そこから、ミナの意識はなくなっていった。
***
ミナはある人に手を取られた。
「ここから逃げましょう、ここにいては危険です」
「どうやらそのようね」
ミナは人格が変わったように、はきはきとした声で話した。
「状況は?」
「どうやら上でもうすぐ始まるようです」
***
意識が戻った時には、私はあのビルの外のどこかの部屋で寝ていた。
テレビが流れていた。頭がぼんやりしている。
速報です。先ほど何者かの手によって、ビルの一部が爆破されました。
最近相次いでこのような事件が多発しており、
警察では、同一犯の犯行ではないかと関連を調べています。
あー、やっぱり……。
そういえばあの時、誰かに絡まれた気がしたんだけど……。
どうなったんだろう。思い出せない……。
「頭痛い」
天井を見ながら、また意識が遠のいていくのを感じた。