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出会いのパーティ

「今日は集まってありがとう」


 ビルのパーティ会場で始まった、創設100周年記念祭。

 会場には多く人たちが詰めかけていた。

 広々とした会場には記念の花や、お祝いの品が所狭しと並び、華やかさに一役買っていた。

「おおおおお」と一面に大きな声が聞こるほど、会場は大いに盛り上がっていた。


 私の名前は相田あいだミナ。

 十年来の友人に招かれて、このパーティに出席していた。

 本当はあまり乗り気じゃなかったのだけど……。

 友人がどうしてもというので、嫌々出席することになった。


「うーん……やっぱりな」


 周りを見渡すと、このパーティの参列者たちは、みなお金持ちっぽい人ばかりであった。

 私なんかが場違いじゃないかしら……と思っていると、大きな甲高い声が聞こえた。


「あ、ミナ!来てくれたんだね!久しぶり!」


 声をかけてくれたのは、私の友人の久保くぼミキ。

 学生のころからの親友で、当時から私と何かと気が合っていた。

 趣味や好きな食べ物などが一致していて、何かと私と共通点があった。

 それでどんどん仲良くなっていって、今でもちょくちょく連絡を取り合う仲だ。


 しかし最近、ミキは結婚して本当に浮かれている。浮かれすぎていて怖いくらいだ。


 ……先日、ミキの豪華な結婚式が開かれた。

 もちろん私も結婚式に呼ばれたのだが、生憎その時は都合が合わず出席できなかった。

 ミキはその時の事を非常に残念がっていた。

 私も本当に申し訳ない事をしたと思っている。

 このパーティに出席したのも、せめてもの罪滅ぼし、というのも兼ねているのだ。


「あのね、今日は本当に来てくれてありがとう」


 ミキは嬉々として言った。


「私なんか場違いじゃないかしら」


「大丈夫だよ」


 精一杯、高そうなものを身に着けてきた。

 でもそれでもやはり周りを見ると、圧倒されてしまう。

「そんなに自分を卑下しないで」とミキに言われるも、どうしても気になってしまう。


 そう言いつつ、自分の事をさりげなくもアピールしてくるミキ。

 ミキのファッションをくまなく見ると、その出で立ちは高級ブランド物で覆いつくされていた。


「ミキに比べたら私なんて…」


「今度なんか高そうな洋服でもプレゼントしてあげるからさ」


 そう言われてミナは、ついまんざらでもない顔になってしまった。

 ミキは最近、幸運にもお金持ちの夫に巡り会ったらしい。

 お金持ちにすがるのは悪いと思いつつも、プレゼントと聞いてラッキーと思ってしまった。

 そんな自分に嫌気がさしていた。


「はぁ……」といろいろな思いがこみ上げて、ついため息が出る。

 こういうところはもうこれっきりにしよう……。

 そう思ったら幾分か気持ちが楽になった。

 でもこういう時だからこそ、楽しまないといけないのかもしれない。


「仕方ない」


 そう思いつつ、パーティのご馳走を目の前に私はひれ伏した。


「欲望には負けるよね」



 ……ご馳走を十二分に楽しんだ後、ミナはどうするか迷っていた。

 ミキは他の友達と話があるということなので、いったん別れた。

 話し相手がいなく、ミナは暇を持て余していた。


「それでは次のイベントは……」


 イベントの司会者の言葉。

 ミナはそんなものにこれっぽっちも興味がなかったので会場を離れ、テラスの方に足を進めた。

 テラスは夕暮れの日差しを受けて、オレンジ色に包まれていた。


「うん?誰かいる……」


 そこには体格の良い紳士が立っていた。

 近くの若者たちと何か言い争いをしているようだった。


「でもな、お前は……」


 若い男の一人が何か言い放った次の瞬間、紳士に殴り掛かった。

 それを見た若い男がまた一人、また一人と次々と乱闘に加わっていく。

 殴る、蹴る……。暴行は次第にエスカレートしていった。


「やめてっ…」


 震えたような小さな声でミナは言った。ミナはその光景を見ていられなかった。

 暴力は世界で一番嫌いなのだ。だからミナはそこからすぐに立ち去った。

 助けを呼ぶことも必要だと思った。


 そしてその数分後に私は助けを呼んで、その場所に戻ってきた。

 先ほどの体格の良い紳士一人だけが、そこに立っていた。

 あのあと一体どうなったのかは、ミナには想像もつかなかった。


「大丈夫ですか?」


 その紳士は優しい口調で私に問いかけた。


「もう終わったようなので、大丈夫ですよ。それよりもあなたのほうが心配です」


 私は気付かれていたのか……。

 そんなに近付いていなかったはずなのに、気付いていたらしい。


「ちょっといざこざがあったんだが、もう終わったので大丈夫ですよ」


「本当に?」


 足を見ると擦り傷があったので、私は応急処置をするようにと勧めた。

 紳士は大丈夫というが、どう見てもそうは見えなかった。

 そして治療をする、しないの問答がいくらか続き……。

 そこから雑談が始まり、なんだかんだと会話が弾んでいった。

 私はなぜかその紳士に妙に親近感が沸いていた。


 話の終わりにこの紳士が、自分の名前をカオルだと名乗った。

 ミナも名を名乗り、結局治療をしに二人はパーティ会場へと戻った。


 この紳士は後にミキの旦那だと発覚するのだが、それはまだ先のお話。

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