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歌劇 浪速統領地獄の道行 現世復活の段

 ここはあの世の底の底、誰が呼んだか氷結地獄。世間の荒波切り抜けて、浪速のてっぺん取った漢の落ちた場所。


 テメェで招いた事とは言いながら、今日も統領責められる。漢の花道歩んだ先の、末路がこれじゃあ情けなや


 今日も統領漢泣き、情けねぇやと漢泣き、そんな好機がある訳ないが、返り咲けるとあるならば、俺ゃあ何でもしてこます!


 ムッソリーニは漢でござる〜!

(拍子木と共に幕が上がる)

 


 

 (死者たちの声)

 「統領ドゥーチェ!ワイらの死に意味はあったんでっか?」


 (花道から頭を抱えて苦悩する統領が出て来る)


 当たり前やないか!お前らの死がローマを蘇らせるんや!


 「統領ドゥーチェ!これが、あんさんの望んだローマ帝国でっか?


 そうやない!そうやないが、仕方がなかったんや!ワイもよもや糞髭があんな男とは思わなかったんや!


 「統領ドゥーチェ!ワイらあんさんを信じて死んだんでっせ!責任取ってくんなはれ!」


 アホンダラ!男が一度自分で決めた事、人に擦り付けんな!ワイが悪いんやない!ワイに騙されたお前らが阿呆なんや!


 「でも、見てくんなはれ!ワイの女房が!ワイの子供が!死んだんや!あんさんのせいで死んだんや!ワイらもどこで死んだんや?アフリカ?地中海?嫌や!こんな地の果てで死ぬのは嫌や!みんなみんな!あんせさんのせいや!」


 ど阿呆共!泣き言言うなや!それもこれもローマの為や!ローマや!栄光のローマの為や!だから!だから!


 「統領ドゥーチェ」「統領ドゥーチェ」「統領ドゥーチェ統領ドゥーチェ」「統領ドゥーチェ


 止めてくれ!ワイを責めんでくれ!こんな事になると思はなかったんや!神さん!あんた酷いお人や!何で、先にこんな事になる言うてくれんかったんや?ワイが悪いんか?男が野望を持ったらあかんのか?


 (脇から出てくるブルータス)

「分かる、その気持ちよーく分かる。でもなぁ、人生そんなもんや、ワイもカエサルを殺ッた時は勝った思ったもんや、よもやボンボンのオクタウィアヌスがあそこまで強いとは思はなかってんなぁ」


 お前と一緒にすな!糞ボケ阿保のブルトゥス!ワイは正当に権力を手にしたんや!国王の認可だってちゃーんとあったんや!

 (続いて出て来るユダ)

 「そう言いはるんわ、あんさんの自由や、そやかて、ここにわてらと並んでいらはるんやろ?悔い改めんと、いつまでたっても此処にいる羽目になりまっせ?わてもなぁ、あそこでお師匠を裏切るやなかった、まあ、あんさんとちがって、わてはお師匠に許して貰えてますんで、一年の半分は天国に行けますがねぇ」


 ユダ!このクソぼけぇ!なんでお前が許されて、ワイが駄目なんや!酷いやろ!不公平や!キリストはん!身贔屓のし過ぎや!

(叫ぶ統領、ここで中乗りになり、ライトの当たった書き割りの悪魔に話し書ける)

 

 ああルシファーはんでっか?ワイは新参者やさかい、噛むならそこの黄色い奴先にしてくんなはれ!痛い!止めて!ワイは骨やないわい!犬かあんさん!


 それもこれもアイツらのせいや!ワイが地獄におるんも、栄光のローマが田舎もん共に蹂躙されんのも、クソ国王!裏切りもん!後、糞髭!死ね三枚舌!ワイがあの髭殺そう言うたのに聞かんからや!地獄に落ちろ!ああここが地獄やった、、、、納得いかん!ワイにチャンスをくれ!もう一度チャンスを!もう一度機会があるんなら今度こそ!

 

 (死者たちの中から一名前に出て来る)

 「統領ドゥーチェ後悔してますやろか?」


 あん?誰やあんさん?ここは地獄の最下層やで?そんなピカピカなおべべ着て、なんや、トミオやないか!確か、あんさん、天国に行ったんやろ?ええなぁ、ご先祖さんの信心深い御かげや、こんな所おらんと、さっさと帰らんと罰があたるで。


 「黒シャツ隊の木っ端隊員の名前を憶えてくれてたんでっか?さすは統領でんな」


 ワイはなぁ、これでも国家の指導者だった男や、ワイのロマンに付きおうてくれた馬鹿垂れの名前くらい、ちゃーんと覚えてるわ!さっさと帰りぃ!


 「ワイはその馬鹿垂れ代表で此処に来たんや、どうや統領、も一度娑婆に戻ってひと騒動おこそやないか!」


 阿保ぬかせ!そんな事できる筈ないやろ!ここは地獄、ここに落ちたら、神さんがええと言うまで出られん決まりや!あんさん、教会で寝てたん違うか?良くそれで天国に行けたもんや。


 「それなぁ、どうやら変わったらしいんや、神さんがアンポンタンで、キリストはんがイカンゆうて、あのバカ騒ぎで死んだワイら盆暗連中は、娑婆に戻れる事になったんやと。どうやええ話やろ?ワイも天国には飽き飽きしてた所や、なにしろカミさん連中が、四六時中一緒やろ?おちおち浮気も出来んわ、可愛い天使が飛び回ってるのに生殺しや。どうや統領ドゥーチェ戻ろうやないか!あのローマに!」


 ほんまか!なあルシファーはん!ほんまかそれ?ああ渋い顔しとる!おもろいなぁ!よっしゃ!男ムッソリーニ、再度の進撃や!行くで!第二次ローマ進軍の始まりと行こうやないか!


 「それでこそ統領ドゥーチェや!皆!異存はないなぁ!ホレそこのお前!何時までも恨み言っとらんと、お前もローマの男やろ?統領ドゥーチェの男気にホレたんやろ?浪速ローマの男の心意気見せたらんかい!」

 (舞台上が明るくなり、死者達が喋り出す)

 「それもそうやな」「地獄もあきたしなぁ」「ワイは始めから統領ドゥーチェを信じてたで!」「調子のいい奴やなぁ」


 (中のりから花道に降りる統領)

 

(死者たちローマ式敬礼で声を上げる)

 

 地獄に花咲く事も有る!嗚呼再びのローマ進軍の時来たれり!漢統領のお帰りや!どいたらんかい!女房を隠せ!漢の花道ここに有り!


 (花道で見栄を切る統領、統領の周りに集まる一同、そのまま合唱) 

 

  「「Viva!Viva!Viva Duce!帰還だ!帰還だ!我らの統領!クソ国王をいてこませ!」」


 ヴィットーリオ・エマヌエーレ3世の脳天にラリアットが炸裂し、突如議会に乱入してきた黒シャツ隊により、第二次イタリアファシスト政権の樹立が宣言されるのはこの後すぐの事であった。

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