聖女を守るナイトはハードボイルド名探偵です。
第二回なろうラジオ大賞。応募作品です。
お初にお目に掛かる方はお目に掛かります。私は黒銘菓。電子の海で無意味な文字データをバラ撒く趣味をしております。
拙い作品ばかりではありますが、宜しくお願いします。
「依頼内容は聖女様の護衛。報酬は弾む。
但し場所は異世界。
引き受けてくれないか?」
依頼人が不安を浮かべてそう言った。
非常に奇妙な依頼だ。
確実に危険な依頼だ。
俺の答えは決まっていた。
「その依頼、受けよう。」
名探偵は依頼を断らない。
「これより、聖女継承の儀を行う。」
聖堂に儀式長の声が響く。
聖堂に並ぶ真っ白な儀式用の礼服達は眩しく、窮屈だ。
儀式を傍で見てるだけの俺まで採寸されて、サイズぴったりの異様に動きやすい礼服を着せられた。
どこの世界も儀式は窮屈だ。
「民草の安寧を思う者よ、前へ。」
礼服の少女が5人、儀式長の前に出る。
真ん中の銀髪の少女が護衛対象だ。
「祈りを以て剣に立ち向かう者よ、前へ。」
5人の内3人が更に前に。
絹の様な銀髪がなびく。
涼しげな眼が輝く。
優しい微笑みが溢れる。
三者三様。儀式長に更に近付く。
「思いを実現する覚悟の有る者よ、前へ。」
護衛対象だけが儀式長の前に出る。
涼しい眼の少女は袖から僅かに出ている出た指をピンと伸ばし、優しい微笑みの少女は背筋を伸ばした。
「汝、名は?」
儀式長が険しい顔で問う。
「カリーナ・ワトスンです。」
動じない。
「全てを捧げて聖女となる覚悟は?」
睨み付ける。
「既にここに。」
自分の胸に手を当てて堂々と答える。
「……後悔は?」「ありません。」
「そうか、覚悟しなさい。」
そう言いながら粗末な木製の杖を差し出す。
その言葉は異常に重かった。
護衛対象は杖を両手で受け取り、頭を下げる。
服から伸びる腕はとても華奢だった。
「では、カリーナ・ワトスン。汝を誉高きキールメシル教の聖女に認定す……」走り出した。
部外者面して立っていた奴がいきなり駆け出すのを見た儀式の取り巻きが俺の前に立ち塞がるが、関係無い。
「邪魔だ。」
取り巻き連中の肩に手を掛けて跳び上がり、取り巻きの頭上を駆ける。
目的地は儀式の中心。少女が危ない。
取り巻きの頭を蹴り飛ばし、前へ!
聖堂の空を駆けて、前に進む。
狙いはあの刺客。
儀式中の皆が面食らうなか……
ゴッ!
空中回し蹴りが涼しい眼の少女の頭を捉えた。
部外者の俺まで採寸された服を着ているのに、袖が異様に長かったのがこの少女。
採寸時から腕が縮んだか、別人が着ていると考えた。
「ビンゴだな。」
空中回し蹴を喰らった少女は眼を回し、その手に隠していたナイフを取り落としていた。
「おじさま!」
ナイフを蹴飛ばした直後、聖女様が抱き付いて事件が起きる話は、また次回に語ろう。
1000字以内なので足りない部分が沢山。元々足りない実力で更に無念。
時間泥棒失礼致しました。
その上で。
物好きだという奇特な方が居るようでしたら、どうか、拙作で又、時間を盗まれてやって下さい。