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第3話:5分で終わる魔王討伐-A

 城門から最終決戦は大激戦区だった。


 大魔術でルカが城壁ごと穴を空けて敵を吹き飛ばし、俺は残兵へと斬りかかる。

 今日のルカは冒頭から全開モードだ。城壁に無数の穴を空けて焼却魔法で敵一帯を黒焦げにすると、とどめといわんばかりに水流魔術で城の中へと垂れ流す。


 「道は開いた。行くわよ」


 肩で息をしながらルカが先導しようとする。頷いた俺は水圧で押し開けられた正面の扉の前に立って、俺たちはお互いを横目でとらえる。


 「覚悟はいい?」

 「いつだってできてるさ。なんでもない毎日に戻る覚悟ならな」

 「同感ね。行くわよ」


 俺は剣を、ルカは杖を強く握って城内へと走り出した。水浸しになった赤絨毯を踏み鳴らしながら進んだ先には外から流れ着いた魔獣たちが死屍累々と突っ伏している。


 エントランスを通り抜け、長い通路を一心不乱に走り続けた末に玉座の間が見えてきた。いやに暗いなと思ったら、壁にかけていたであろうロウソクが床に転げ落ちていて水たまりの中で役目を終えている。城内の惨状は目を覆うばかりだ。


 しかし迷う時間はない。いざ、玉座の間へと俺たちは突入する。鎮座する魔王との距離を詰める刹那、唐突にルカが太ももから短刀を取り出して瞬時に放り投げる。一直線に飛んで行った短刀は魔王の頭髪を削ると金属音を鳴らして壁に突き刺さった。惜しい、あと数センチでエンカウントなしで終了できたのに。


 「お前ら情緒ってもんがないんか!ええ?」


 俺たちが到着するや否や、魔王はぷんすかしながら立ち上がった。唯一残っていたてっぺんの髪の毛は削がれ、衣服からは水がしたたり落ちている。ルカの水攻めはこいつの胸元にまで及んでいたようだ。そりゃあ怒るわ。


 「絶対生かして帰さへんからな!」「覚悟しとけやコラ!」などの罵声を上げる中、俺の横に並んだルカは突然膝に手をついて、我慢しきれずに姿勢を屈める。


 「カルー」「どうした?」

 「ごめん。私、もう、弾切れ」

 「開幕からトリガーハッピーだったからな。薄々思ってた」


 床に目を落として申し訳なさそうにするルカの表情は、普段の傍若無人な振る舞いからは想像できないほどしおらしい。


 だから「任せとけ」と軽く背中を叩いた俺は、ルカの前に立って魔王に剣先を向けた。


 「ん?なんや?お前もやるけ?」

 「一応、俺も勇者らしいからな」


 俺の言葉に、魔王が訝しがる。


 「なんで勇者が二人もおるんよ?理もくそもないやないか。ケッタイなことしてくれたな自分」

 「……どういうことだ」

 「こっちが聞きたいわいど阿呆!勇者が勇者を呼ぶとかあり得へんって。ちょっとはこう、魔王的な空気読めや!」

 「いまどき魔王とか流行らないんだよ。スポンサーのひとつもつかないからお前んとこも貧乏してんだろ」

 「黙れ!分かりやすい悪は常に一定の需要があるんや!それでなくてもコンプライアンスに厳しいこのご時世、部下の扱いとかもいちいち気い遣うとんのに。お前らときたらお構いなしに皆殺しにしよってからに」


 立ち構えた魔王の全身から黒波の波動がほとばしる。先程までの緩さを微塵も感じさせないほど殺気に溢れ、威圧感はとどまるところを知らない。


 「いきなり最終回や!死ね!」


 突進の構えを見せた魔王が姿を消して、考える余裕も与えず目の前に現れて手刀を振り下ろしてきた。辛うじて剣で受け止めた俺だったが、押しの強さや腕の硬さがまったくもって尋常じゃない。


 「無駄無駄無駄!アキレスの施しを受けたこの体に恐れるものなし!」


 魔王の素早い攻勢を間一髪で俺も受け止め続ける。首の皮一枚で防ぐだけはなんとかできるがこれでは反撃の糸口がない。あまりの手数の多さに思わずよろめくと、その間にちらりと左側に目をやった魔王は丸腰のルカを見つけて不敵に笑んだ。

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