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第2話:回想

 その日は一日中、俺は来場対応で西へ東へと走り回っていた。平仮名で"まえだかなた"と書いた間抜けな名札を左胸につけて、ライブチケットのもぎりや屋台の見回り、果ては迷子になった子供を肩車して一緒にお母さんを探したりとノンジャンル極めたりだ。


 ようやく子供を下ろして大通りの時計を見ると十七時ジャスト。学園祭実行委員としては模範に満ちた行動力だが、行事内において青春は永遠に訪れない気がする。


 -学園祭行ったよー。


 打ち上げで賑わう中、一通のメッセージチャットが届いた。お互い会ったこともないけれど、学園祭のグループチャットという一員に過ぎない関係から、催し物の関係で個人的に相談を重ねるうちに気づけば彼女とは毎日チャットを送る仲になっていた。


 容姿はおろか、声すら聞いたことがない相手。名前もチャット上の『はる』の二文字しか知らない。でも、どこまでも前向きな性格に惹かれている自分がいるのもまた事実だった。


 -来てたなら連絡くれればよかったのに。どうだった?

 -好きな人できた!


 シンプルにして残酷な一言が、雷に打たれたような気分にさせる。動揺する行程を省いて唐突に俺の淡い思いは砕け散った。


 -すっごいかっこいい人がいたの!

 -さぞイケメンなんだろうね。

 -そりゃあもう!とにかくね、ほんっとう、あんなの見たら惚れるに決まってるよ。


 今日の目玉だったロックバンドはそういやイケメン揃いの大人気のバンドだった。なんてことを思い出しながら、俺は「声はかけたの?」と心にもないことを尋ねる。


 -いや……それが、その。


 言葉を淀ませる彼女は、その続きを送信しようとしない。


 -話、聞こうか?


 メッセージを送ってからしばらくしてやっと返事がきた。単純な話、声をかける勇気がなかったらしい。

 ショックではあるけどそれを前向きに応援してこそ男だろう。俺にできることは数少ないけどせめて気の済むまで話を聞いてあげよう。声ではなく、メッセージでだけど。

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