V-0(2)
闇に暗躍し、ターゲットの命を奪い取る裏稼業・殺し屋。
これは、その中でも最強と謳われた1人の殺し屋と仲間達の変化の物語。
そんな彼より一足早く食事を終えた青龍は、あることをふと聞いてみたくなった。
「あ、そういえばアレックス曹長。少し聞いてもいいですか?」
「ん? あぁ、いいぞ。私で答えれる内容であれば答えてやろう。親切丁寧にな」
「じゃあお言葉に甘えて……今更ですけどE・Cって何者ですか?」
青龍の口から飛び出したあまりにも初歩的な質問に、アレックスは口から食べ物を噴き出した。
「Hey hey hey! 貴様、何も知らずにやってきたのか!?」
「はい。E・Cを殺せという依頼を受けただけなんで」
その返答と無知さ加減に、アレックスは呆れ果て、思わず頭を抱えたが、約束通り真摯に答えることにした。
「じゃあ教えてやるが、E・Cというのは、あくまであいつ自身が付けたあだ名のようなものであり、本名ではない。本名はロジャー=ラングレー。1922年12月6日アメリカのユタ州生まれ」
「ロジャー、ね……ん? 今、1922年って? てことは…………84歳!?」
「Yes. 84歳の自称現役軍人。と同時に、我々は畏怖の念を込めてこう呼んでいる。『伝説のグリーンベレー』とな」
確かにアレックスは彼のことを『老いぼれ』と言っていた。が、ここまで高齢とは思っていなかった青龍は、開いた口が塞がらなかった。
だが、彼の話はこれだけではない。
E・Cことロジャーは、第2次世界大戦からアメリカが関わる全ての戦争に加わり、最前線で数多くの武功を挙げてきた。もちろん、当時はデミ・ミュータントの技術も無かったから、身体能力強化などは一切せずに。
その異常なまでの実績と年齢からアメリカ軍内では伝説とされ、アレックスもこの作戦に参加するまでは、戦争史を講義する上官のジョークか何かだと思っていたほどだった。
そんな国の英雄が、突如アメリカと世界を敵に回したのは、およそ9ヶ月前のこと。沖縄にある在日米軍基地を襲撃した彼はそこで、輸送機ごと大量の物質や武器、弾薬と一緒にとんでもない物を盗み出していった。
その名はV-0。アメリカ軍が開発した最強最悪の細菌兵器である。
この兵器は毒性や致死性も当然高いが、伝染性も拡散性も免疫への耐性もきわめて高く、しかも困ったことに、現在ワクチンは開発中のため存在しない。故に、それを奪還する任務もグリーンベレーには含まれていた。
「だが、奴があそこまで強かったとは……そこで、青龍。頼みがあるんだが、貴様の力を私に分けてもらえないだろうか?」
「力を、ですか?」
「Yes. 今の私では到底奴にはかなわない。だから、その……貴様のスピリチュアル的なものが必要なんだ。だから、頼む!」
そう言って青龍に頭を下げて頼むアレックスの手には、ある物が握られていた。
V-0の正式名称はvirus-0といい、0は敵対勢力や敵国の人間を無に帰すという意味で名付けられました。




