中国からの殺し屋(2)
闇に暗躍し、ターゲットの命を奪い取る裏稼業・殺し屋。
これは、その中でも最強と謳われた1人の殺し屋と仲間達の変化の物語。
見舞いを終えた龍達は、病院で言っていたとおり、その足で武文の家を訪れた。
そこには武文はもちろん、海姉弟を分析するために呼ばれた未来と愛花。さらには、澪と王龍に殴られてあちこち骨折した紫乃もサポートのために彼の家に来ていた。
「先生! いいんですか? 体の方は」
「えぇ。王賀さんのおかげで、多少は」
「多少って……せやったら、無理せん方が……」
「ありがとう。でも、大丈夫。どんな形でも彼の側にいて支えになりたいから」
どんな姿になっても武文に寄り添い、彼のサポートをしたい。誉められものではないが、それでも彼女は自分にできることを少しでもしようと、未来と愛花に昨日のことを詳細に話していた。
そんな恋は盲目を体現するような彼女のおかげで、分析班に成果があった。
それは、凜華の流星錘は手を開いた状態から一気に指を曲げることで毒が放出される構造だということと、その毒が青酸カリだということである。
それを聞いた龍達は、流星錘の弱点にピンときた。
「もちろん、彼女もそこは熟知している。だからそうならないように、いつも瞬殺を心がけている。逆を言えば、それさえかわしてしまえばこちらの独壇場だ」
「だね。じゃあ僕らは……」
「うん。志村先生と大牙君がやり損ねた仕事、すなわち、現在組長代理をしている長里を始めとする暴力団の組員を、1人残らず殺して。その際、海姉弟が邪魔するようなら、始末してくれてもかまわない」
サイトリーダーである武文からの正式な指令。それを聞き了解した龍達は、おそらく海姉弟との戦いは不可避だと考え、気を引き締めた。
一方その頃、敵陣営である暴力団では、チャイナドレスに身を包んだ美女が長里との用談を終え、廊下を歩いていた。
彼女こそが、大牙に深手を負わせた流星錘使い・海凜華である。
長里と話している間、鉄仮面でも被っているかのような無表情で、淡々と仕事の話をしていた彼女だったが、弟の王龍が待機している部屋に戻るとすぐ、不満そうにため息をついた。
「その様子からして、やっぱダメだったか? 凜姉ぇ」
「えぇ。それどころか、これまでの褒美と前金だとか言って、キスされそうになった」
「ははっ、バカだなあいつ。そんなことしたら今頃、一服盛られてただろうに」
「そうね」
王龍がそう言うのには理由がある。
裏社会で生きてきて14年。殺し屋としてのスキルを磨き、時には女の武器を使ってまで懸命に生きてきた彼女には、その過程でついてしまった悪癖がある。
それは、心を許した者以外と接吻すると、体が拒否反応を起こして、相手を瞬時に毒殺してしまうこと。そのせいで、何人もの男が命を落としている。
そんな死の口づけを交わしても大丈夫な数少ない人間が、彼女の愛する者でもある弟・王龍である。
彼は、自分のために手を汚す姉の背中を見ている内に、彼女に汚れ仕事をさせないよう自身を鍛えていた。
結局、その望みは叶わなかったが、鍛錬のおかげで彼の肉体は2メートル近い長身のマッチョに成長し、最高の相棒として姉を守れる存在となった。
強い絆と愛で結ばれた中国からの刺客・海姉弟。彼女達を倒すには、実力もさることながら生半可な覚悟では不可能だろう…………
弱点は後々わかるとして、煽るだけ煽ってみました。
下手くそだったら、すみません。