当たり前の優しさ(5)
闇に暗躍し、ターゲットの命を奪い取る裏稼業・殺し屋。
これは、その中でも最強と謳われた1人の殺し屋と仲間達の変化の物語。
と同時に、柚は目眩を起こして龍の体に倒れ込んだ。どうやら無理がたたったようである。
「うわっ! ちょ、大丈夫!?」
「そうでも、ないみたい……」
柚からの返答を聞き、龍は彼女をベッドに戻そうと起き上がろうとした。
だが、何故か柚は、敵である龍に身を委ねたまま、離れようとしない。
「……ごめん。しばらく、こうさせて」
「え?」
「いいから。でないと……」
そう脅された龍が了解すると、柚は彼の温もりを全身で感じ、
(……龍君って暖かい……心もそうだから、なのかな? 敵なのに、殺さなきゃいけない相手なのに、こうしてるとすごく心地いい…………)
と、感じたままのことを思い、彼に甘えた。
その心を感じ取ると、龍は彼女の頭を撫でて、
(そうだよ。猫宮さん。甘えたい時は甘えていいんだ。甘えたり、照れたり、寂しがったりするのも、君の愛らしい一面。大事にすべき自分自身なんだ。だから猫宮さん。今は自分に正直になって。大丈夫。ここには、君を傷付ける人なんていないから)
と、心の中でそう伝えた。
それがお互いに共鳴したのだろう。自然と気分が高まった2人は、熱いキスを交わした。それは目的あってする感情の欠片もないものではなく、まるで恋人同士が愛を育む時にするような情熱的で優しい口づけだった。
「あ……」
「しちゃったね。なんか、照れくさいな」
「……口に出さないでよ。バカ……」
仇とそんなキスをしてしまった柚は、耳まで真っ赤にしてそう呟いた。
その恥じらう姿に、龍は愛らしく思っていたのだが、密着していることで彼女の一糸纏わぬ素肌が全身に触れている。
刺激が強すぎると感じた龍は、『このまま』と言われた手前どうしたらいいかわからず、困惑する。
それを見て龍の心を察した柚は、彼の額に軽くキスし、
「少しは落ち着いたら? バーカ」
と、言って微笑んだ。
その言葉と表情は、小悪魔的で妖艶だったが、どこか可憐な少女を思わせるようなものだった…………
それから一夜明け、雲雀と澪が柚の家に戻ってきた。龍が朝になっても帰って来なかったため、心配して来たのである。
龍が鍵を閉め忘れたおかげで中に入れた2人は、無事、龍の生存を確認したが、雲雀らの顔に安堵や喜びなどといったものはなく、むしろ不愉快さが滲み出ていた。
それもそのはず、龍は恋人のように柚と添い寝していたのである。
「……心配して来てみたらこれかい」
「完全に予想と真逆でしたね。ちょっと嫉妬しちゃいます」
「せやな。それに、そこの変態ドリル女の変態病もうつってるかもしれん。ま、そういうわけやから……」
そう言うと、雲雀はピョーンとジャンプし、
「起きさらせダブルドアホーッ!」
と、言いながら、怒りと嫉妬のダイビングエルボーで龍と柚を叩き起こした。
無論、この出来事は武文の耳にも入り、メンバー間の風紀が乱れるという理由から、2人は正座させられ、武文と雲雀と澪から長時間の説教をくらうこととなった。
まぁ、そんな散々な結果に終わったが、1つだけ龍と死獣神にとっていいこともあった。
それは、龍の当たり前の優しさと暖かい心によって、柚の凍てついた心にある変化が生じたことである。その変化についてはまたいずれ………………
怒りと嫉妬を露わにした2人や未来と違い、柚はヒロインとして分類するなら、ヤンデレ&ツンデレの小悪魔なダークヒロインといったところでしょうか。
なんにしても、これだけの女性に囲まれてオクテな龍はいったいどうするのでしょうか?




