柚の生態(2)
闇に暗躍し、ターゲットの命を奪い取る裏稼業・殺し屋。
これは、その中でも最強と謳われた1人の殺し屋と仲間達の変化の物語。
学校を出て15分後。龍達はとある賃貸アパートの1階突き当たりにある部屋の前に到着した。ここが柚の家である。
そこは、翔馬が小学3年の頃まで住んでいたボロマンションと目と鼻の先にあり、引っ越し先の家ともほど近い。
小学校からの付き合いとはいえ、1回も家に招かれたことのない翔馬は、まさか彼女がまぁまぁのご近所さんだったとは知らず、意外に思った。
そんな翔馬の発見はさておき、今日来たのはちゃんとした用事があるからである。
武文は、紫乃から渡された宿題とプリントを小脇に抱えてインターホンを押した。
程なくして、柚の返事が聞こえた。その声は明らかにいつもより小さく、それだけで体調の悪さが伺い知れる。
「猫宮さん。先生から宿題を届けるよう頼まれたんだ。中に入れてくれる?」
武文にそう言われた柚は即答できず、しばらく沈黙したが了解し、チェーンロックを外して玄関を開けた。
龍達の前に現れた柚の姿は、冷却シートを額に張り、肌掛けをまるでマントのように肩から羽織っていた。
「ちわっす。先輩。大丈夫っすか?」
「そうでもない。今も少しクラクラする」
「そうでしたか……なんか、申し訳ありません」
「いいよ。ま、立ち話もなんだし、とりあえず上がって」
彼女にそう促された龍達は、お言葉に甘えて家の中に入ろうと、一歩踏み出した。
その直後、柚は立ち眩みを起こして、その場に倒れ込んだ。
柚の一大事だと思い、何とか彼女をベッドまで運ぼうと近寄った龍達だったが、心配も束の間、彼らは我が目を疑った。
倒れた拍子で肌掛けがはだけ、下着を一切着けていない柚の特徴的な小麦色の肌が露わになったのである。
「いぃっ!?」
「おーっ! こいつは思ってもみないサービスショット。いや、サービスタイムの幕開けだあっ!」
「言うとる場合かドアホ! 澪。ちょっと手伝え!」
雲雀はそう言って澪に手伝いを頼み、彼女と共にスッポンポンの柚を部屋まで運んだ。
ラッキースケベに近いこのハプニングに、龍と武文の頭は一瞬真っ白になり、翔馬はバレンタインのリベンジができるのではと燃えていたが、いつぞやの宙の証言もあった通り、この程度はまだまだ序の口の方である。
宙のいつぞやの証言については、『赤い目の真実(2)』をご覧ください。
とにかく、ここから柚の残念な部分が色々と露呈します。




