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変態たちには気をつけろ

 「おぉ...。わぁ...。すごおぉい...」


 目の前ではマリファとラビビがモンスターと戦っていた。ナイフを手にしたマリアが縦横無尽に駆け回る。すると、体の至る箇所に創傷を作ったゴブリン達が出来上がる。そしてラビビはと言うと、小柄体を活かし凄まじい速度でゴブリンたちを切り刻んでいた。獲物は双剣。ふたつの短剣を器用に使いこなしている。


 うわぁ...。こいつら化け物だぁ...。ラビビも思ってたのと全然違うし...。俺の何倍も強い。ってか、あれだな。この前俺が手で口を塞いでた時も振り払えたよね? なんか罠にハメられてない俺?


 「ふぅ...。どうですか一成さんっ! 私使えますか?」


 ゴブリンを倒し終えたラビビが笑顔で尋ねてくる。


 「あ、あぁ...凄い助かる...り、ます...」


 ちょっと次元が違いすぎて、タメ口で話せない。すごい優秀な部下が入ってきた時みたいだ。


 「わぁッ...ありがとうございますっ!」


 ラビビは短い丸い尻尾を振って喜んでいた。


 でもまあ、あれだ。ラビビは割と普通だな。マリファみたいにヤバい趣味も無さそうだ。


 そんなマリファはと言うと、未だにゴブリンと戦っていた。正直な所マリファレベルならゴブリンなど敵ではないため、直ぐに戦闘は終わるはずだ。しかし、マリファはじわじわと嬲り殺しを楽しむため何度も何度もゴブリンを痛めつけていた。


 南無三...。でもまあモンスターは悪い存在らしいから、それがせめてもの救いか...。どうやらマリファはまだ、人間を趣味の対象にしてないみたいだから、ほんとに助かる。......だんだんマリファ側の人間になってきてるな俺...。


 ちなみにマリファは自分の趣味を変わった趣味だとは認識しているようだが、そこまで変な趣味とも思ってないらしい。

 だったら、俺と最初出会った時のアレはなんなんだって話なのだが、多分、運命の女神の加護の効果だよなぁ。運命が俺と変態をくっつけようとしている! なにそれ? 抜け出せな〜い。


 そしてマリファは、ラビビにも自身の趣味のことを話していた。同じパーティーになるのなら知っていて欲しいだそうだ。まあ、マリファからしたら自身のサイコパスな趣味を、若者が盆栽を弄るのが趣味。というぐらいの認識でしかとらえていない。確かに盆栽弄る若者少ないけど全くベクトル違うよね?


 それを聞いたラビビも特に気にしてないようだった。


 なんでぇ? おかしいよね? 明らかにやばいじゃん? どうしてそこスルーできるの?


 やっぱり変態は変態同士通ずるものがあるのか...。


 そして、意識を現実世界に戻した俺だったが目の前にいるラビビの様子がおかしい。


 「...どうかしたか?」


 正直話しかけるのも怖いのだが、話しかける他ない。俺は恐る恐るラビビに問いかける。


 すると、ラビビは恍惚の表情を浮かべる。


 「見てください! あれホブゴブリンじゃないですか!? うぁあああ大きいぃ.../////」


 すると確かに目の前にはゴブリンの上位種、ホブゴブリンがいた。普通のゴブリンに比べて体が大きいのが特徴だ。


 そんなホブゴブリンを見てラビビは嬉しそうだ。特に下半身を注視している。


 「あの、ラビビさん...? なんか視線の先おかしくないですか? 一体何が大きいんですか?」


 もう俺の声は聞こえていないようだ。目線の先にはホブゴブリンのゴブリンちゃんがあった。


 「やっぱり変態じゃねーか! 流石にホブゴブリンに発情は引くわッ!」


 そんな俺のツッコミをもちろん聞こえていないラビビの顔はとろけきっている。涎まで垂らした顔はガチで怖い。


 「あぁっ、でもダメっ! モンスターなんて汚らわしい存在ですっ! ...でも、素敵ぃ...」


 一応ラビビの中にもモンスターはダメだという感情はあるみたいだ。


 「あぁっ、ごめんなさいっ!」


 そう言いながら走り出したラビビはホブゴブリンをあっという間に切り刻んだ。


 自分で切り刻んだホブゴブリンを見下ろして、少し残念そうな顔をするラビビ。


 いや、もう好きにしてくれ...。こんなやべぇ奴らとこの先やっていける自信ねぇよ...。


 その日の稼ぎは今までで最高の額だった。変態が強いとかこの世界終わってんな!




 俺は今、ギルドに隣接する酒場に来ている。今日は過去最高に稼げたので、贅沢をしようと決めた。


 もちろん変態共も一緒だ。あぁ、ひとりで飲みたい...。


 「私酒場なんて初めてですっ! 楽しみですっ!」


 ラビビは初めての酒場らしくテンションが高い。そしてその視線は、筋骨隆々の冒険者の下半身に向けられている。


 見境なしかよ!


 「私も久しぶりに来ましたね。エルフはお酒弱い種族なのであまり酒場には来ないんですよ」


 「へぇー、そうなんだ。でもまあイメージ通りっちゃー、イメージ通りだな」


 そんなこんなで割と楽しくお酒を飲んでいた俺達だったが、事件は突然訪れる。


 「おいそこのヒョロヒョロの冒険者ッ! 可愛い子ちゃん達連れてんなぁ? お前だけいい思いするのは違うだろ? あぁ?」


 図体のやたらでかいスキンヘッドの冒険者が俺たちの囲むテーブルにやって来た。


 ......もう嫌だ。怖すぎる。こんな変態共のせいで絡まれるとか割に合わん。


 俺はなるべく穏便に済ませるように心掛け、助けてくれそうな人を探すが、他の席に着いている冒険者は自分達の話で盛り上がっていた。


 くそっ! 冒険者的にはこんなこと日常茶飯事なのか! こりゃまずい。面倒なことになった。


 「あの、別に俺たちそういう関係じゃなくてですね?」


 「おおそうか! ならひとりくらい貸してくれてもいいよなぁ?」


 うんいいよ! とは、流石に言えず。


 「いやぁ、それはでも良くないんじゃないですかね?」


 俺と禿頭の冒険者が言い争っているとマリファが会話に入ってきた。


 「あの、私達はものではないので貸すとか返すとかそういう扱いはされたくないのですが、ねぇラビビちゃん?」


 そう言われたラビビの顔はとても輝いていた。


 いや多分こいつ、マリファと違う考えだな。顔が生き生きしてやがる。


 「んだと? 俺に逆らうってのか? ちょっと来いやッ!」


 禿頭の冒険者はそういうと、マリファの細い腕を掴んで外へ連れ出そうとする。


 「ッおい! 流石に────────」


 男として黙って見逃すことも出来ずに止めようとした時、マリファと目が合った。


 ......あっ、うん。そうだよな。うん、この男には悪いが自業自得ってことで。いや、俺は何も見ていない。俺は楽しくお酒を飲んで記憶が曖昧なんだ。


 「へっ! しょーもない男だなっ! この姉ちゃんはもらっていくぞ!」


 そう言うと男はマリファを連れて酒場を出ていった。


 確かに俺はたいしたことない男だ。自信を持って言える。ただ、今回ばかしは凄い決断したんだからな! お前を見殺しにするという決断だ! やばいだろ! 俺も結構悪だな...。


 予想通りたっぷり1時間ほどしてマリファは帰ってきた。その顔は艶があり楽しげだ。


 ......さすがに悪いことしたなぁ。いや...酒飲んで忘れよ。


 俺は二度とこの酒場に訪れないであろう男に向かって乾杯した。


 人様に迷惑はかけちゃダメだゾ☆


 

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