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Interlude2

 パイロットは消耗品、というのが科学の島での常識だった。


 人は年を取る。老化する。

 成長の先に待つものは退化だ。どんなに優秀なパイロット、優れた能力を手に入れてもそこに留まり続けることはできない。

 それはパイロットに限った話ではない。人間や動植物など寿命を持つもの皆が持つ、この世に生まれると同時にその身に宿す「衰え」という病。


 この「衰え」に抗う研究は各国で行われた。

 「コールドスリープ」という一時停止の状態も生み出された。

 しかし、人類はいまだこの「衰え」という課題を踏破できないでいる。

 与えられた身体から脳だけを取り出し、機械の身体へと移し替える、もしくは若い身体への移し替えは行われたが、結局、脳にも寿命は存在した。


 不老不死。


 そこに人類であれ、どんな生物であれ到達した時、「生」という概念は崩壊する。

 生と死は表裏一体。死なない生き物というものは結局のところ、生きているとはいえない。ただそこにあるだけの物質と変わらないと説いた学者がいた。


 話は戻るが、パイロットの損耗は老化だけではない。

 死や怪我や病気など、様々な理由で引退せざるを得ない場合が生じる。

 いくら遺伝子から疾患の種を取り除いたとしても、AIがパイロットの生命維持や身の安全を最優先に考えたとしても、その因子を完全に取り除くことはできない。

 アナフィラキシーショック。

 サイトカインストーム。

 免疫機能が高すぎるために引き起こされる病気というものも存在する。

 そして人間である限り、気持ちの揺らぎは生じる。


 人類は季節の緩やかな温度変化にさえ反応してメンタル、自律神経に不調をきたす。

 浮遊する島。

 狭く、閉じた世界。

 パイロットになり、地上へと降下する。それだけでもかなりのストレスが生じる。

 そしてそこには戦いがある。

 怪我の恐怖、死の恐怖がある。

 絶対的に守られる島とは真逆の世界が地上にはある。

 戦えずに離脱する者もいる。

 訓練では優秀であっても実戦で身動き一つとることができなくなる者もいる。

 パイロットは消耗品。ゆえに予備を用意する。


 だがその育成も簡単ではない。

 すべてをAIに任せればいいのではないか。

 過去にそうしたAIによる戦争は行われた。

 しかし、問題点はすぐに浮き彫りになった。

 AIは与えられた命を全うするためには手段を選ばないし、人間で言うところの良心――ブレーキが存在しないのだ。

 効率を重視したAIが導き出したのは、すべてを破壊しつくすことだった。

 退路も補給路もまだ使われてもいないのに、すべて破壊した。それはたった一時間程度で行われた。


 それからAIのみでの戦争は禁止された。

 現在、土地や資源を巡っての戦争が地上で行われているが、殲滅戦――無差別攻撃で得た土地の復興作業は戦争を起こすよりもお金がかかった。

 ゆえに、正式に国と認められていない集まりであっても、AIのみでの戦争は行わないという条約に従った。

 そして、AIを使用するにしても、セーフティとして、パイロットはもちろん、指揮官も人間であることが条件付けされた。

 大量破壊を行わないために戦闘兵器には人間が乗る。もしくは遠隔操作を行うことが定められた。


 結果、戦士は再び戦地へと飛び込むこととなる。

 彼らを奮い立たせるのは「死にたくない」、「生きたい」という欲望だ。


 ――それを「仕事」だと割り切れる人間がどれだけ存在するだろう。


 生き延びて普段の生活に戻ったとしても、全身を包み込んだいつ死ぬともわからない恐怖はある日突然、風の便りのように戦場経験者を襲った。そして、心を、理性を粉々に打ち砕き、戦場で渇望した日常を蝕む。

 島はいつだって臨戦態勢――応戦中だ。

 ただその戦火が届いていないだけで、日常はほんの束の間の休息なのだと、戦争と日常のギャップを減らすことによってパイロットたちの精神状態を保った。

 しかし、それでも病む者はいる。

 そして、投薬治療でもどうにもできない者は、他のパイロットに悪影響を与えないため、作戦に支障をきたさないために、制御不能になる前に、破棄される。


 島では始めから役目を与えられてこの世に生れ落ちる。

 その役目は変えられない。戦士ならば戦え。戦うほかに道は用意されていない。

 洗脳に近い教えを植え付けることで、精神的負担を軽減させた。

 戦士として生まれたのだから、人を殺しても当然のことなのだと。

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