Interlude
――あなたは可能性を考えているのですね。
彼女の言葉を始めは理解できなかった。
<可能性?>
<そうです>
<よくわからないんだけど>
<自分には何ができるのか。そういう意味での可能性です>
自分には。
私には何もない。
機天使のパイロットとしての知識以外はほとんど持っていない。そう思う。
<私は、何もできないよ>
<No.何もというのは間違いです。あなたはパイロットです。戦うことができます>
<そうだけど、私は戦いたくないな。これ以上>
出撃命令が来なければいい。
島がなぜ地上の国と戦っているのかは知っている。
私たちが生きるために必要な資源を得るために半ば傭兵として同盟国に協力している。
だけど、機天使――熾天使レベルの戦力を地上は求めていない。
力だけで考えるならば、一国を滅ぼすのに熾天使一機で充分だ。
しかし、国を一つ滅ぼせば新たなる戦争の火種を生む。国を失った人たちは、土地を奪われ、地上をさまようことになる。素直に居場所をくれる国はほとんどない。
ゲリラの始まりは、そういった行き場を失った人たちだという。
力によって居場所を奪われた人たちが、今度は力でもって、居場所を得るために戦い、奪う。
そういうのを「イタチごっこ」というらしい。
科学の島は、地上から争い事をなくすために、その元となるであろう武力や科学力を背負って飛んだ。
だけど、地球上のすべての科学技術を奪うことは不可能だった。
事実上、地上にあって不都合なものの多くが島に積み込まれた。
だから地上に降りること、落ちることはあってはならないことだった。
島が落とされることはあってはならない。
科学の島は、国連というたくさんの国の集まりである組織によって建造され、浮上した後、何年かは守られた。
島が自衛手段を手にするまで。
自衛手段というのが航空型機獣である機天使だ。
本当は各国の争いを収めるための国連軍に属するはずが、親にあたる国連自体が分裂し、軍も自然消滅してしまったため、今は傭兵として、地上に戦力を貸し、その見返りとして物資を得ている。
それは、間接的に物資を奪っているだけ。
傭兵、援軍はただの大義名分。
実のところ、生きるために戦っている。
わかっている。
だけど戦う以外の方法はないのかと考えずにはいられない。
<戦わないとしたらどうするのですか?>
<……わからない>
戦わなくていいならうれしい。だけど、戦う以外の生き方なんて知らない。
ただ横になっているだけでは気が滅入る。
戦わなくていいということは、私にとって自由をあたえられること。
だけど、自由が大きすぎて何をすればいいのか、何ができるのかわからない。恐怖を覚えるくらいだ。
わからない。
戦いたくない。
じゃあ、何をしたい?
何もない。
わからない。
<わからないからこそ、自身の可能性を考えているのではないですか>
ロゼは言う。
私の唯一の話し相手で、友達。
AIが、私の友達。
私に可能性なんて、あるのかな。




