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「......3次会行かないの?」
いつものトーンだ。でも少し涙声だ。
「行かないですよ。疲れちゃったんで。」
「そっか。タクシー乗らないの?」
「歩きたい気分だったんですよ。」
「何それ。疲れてるのに?」
いつも通りの会話になってきた。薄暗くて表情はよく見えない。
「いいじゃないですか別に。3次会、行かないんですか?」
「私もちょっと疲れちゃって。もいっかなって思って抜けてきた。」
「タクシーは乗らないんですか?」
「私も歩きたい気分だったの。ね、一緒に帰ろうよ。」
歩きながら会話していた。さっきまで泣いていた事なんてなかったような気がしてきた。
寮が近づくにつれて、だんだん口数が少なくなった。
「夜の道怖いから、家まで送ってよー。」
家まで送ることになった。
「ちょっとトイレ行きたいからコンビニ寄ってきていい?すぐ済むから外で待ってて。」
わかりました と言う前に、志帆は店内に入っていった。酔いはもう覚めていた。まだ春を感じさせない夜風は冷たかった。
「おまたせー。」
「え、何買ってきたんですか。」
コンビニから出てきた志帆は手に袋をぶら下げていた。中にはいくつかスナック菓子と、缶酎ハイが4.5本入っていた。
「まだ0時過ぎだし、うちで飲みなおそうよ。お話もしたいし。」
「え...でもさっき疲れたって...。」
「決まりね!さ、行こー。」
「ちょ...待って待って...」
嬉しいけれど、少し複雑な気分だった。
君にとって俺は、なんなんだろう。