5
家に入るのは1ヶ月半振りだった。
「家に入るの久し振りすね。」
しまった。思ったことをそのまま口に出してしまった。
「...そんな久し振りじゃ無いんじゃない?最後に来たの、いつだったかなあ。」
わかってます。
「あれ、いつでしたっけ。忘れちゃった。でも久々な感じがしました。」
言ってまた、悲しくなった。なんでだろう。すごく嬉しいはずなのにね。
「まーいっか。とりあえずかんぱーい。」
「かんぱーい。」
結局その日は最後まで、特に大した話もせずに終わった。相変わらずの笑顔を見せる志帆に、自分からは何も聞く気にはなれなかった。
相談があるって言ってたような気もするけど、忘れてるフリをした。
「や、悪いんで、帰りますよ。」
「いーから泊まってきなって。外寒いよ?」
「でも...。」
「つべこべ言わないの!」
2人きりで女の子の家に泊まるのは、初めてだった。もちろん、志帆はベッドで、自分はソファ。
志帆は軽い感じで 一緒に寝よ? と言ってきたけど、そんなこと出来るわけなかった。
電気を消して少し経ってから、 起きてる? という声がした気がするけど、聞こえ無いフリをした。
眠れるわけがなかったけど、一生懸命寝ているフリをした。
鼻から音がピーピー鳴って無いかなあ。寝息の音ってこれくらいだっけ。寝返り打ちたいなあ。
そんなことを考えているうちに、本当に眠くなってきた。
志帆がソファに近付き手を握って来たけれど、そんなこと全く気づかない。
今日はフリをしてばっかりだなあ。