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198.目が覚めて

 ……やば。物凄く体が重い。これは魔力を使い過ぎた反動だな。流石に初めて使うレベル10の魔法を連続して使えばそうなるか。


 瞼も重くて眠っておきたい衝動にかられるが、ここは起きなければ。俺は意を決して目を開けるとそこには


「すやぁ〜」


 物凄く幸せそうな顔をして俺の上で寝る香奈の姿があった……んんっ? 何故こんな事に? 理由は解らないがこのままでは仕方がないので、香奈を起こそうと動くが……何故か両腕が動かない。


 右側を見て見るとそこには、俺の右腕を握っているアレクシアが寝ていた。反対側を見るとそっちにはクロナが寝ていた。何でみんな俺の部屋に?


 とりあえず今何時なのかわからないので外を見ると、まだ太陽が出始めたばかりのようだ。


 しかし、目が覚めた俺としては、この状態は中々きつい。特に何故か俺の上で寝ている香奈が。……あちこちが柔らかい。


 俺が身じろぐのに気が付いたのか、左側に寝ていたクロナが目を覚ました。目を擦ってぼーっとしている姿は可愛い。そして俺と目が合うと猫耳がピコピコさせて、ピンッ! と立つ。


「レ、レイ様! 目を覚ましたのですね!?」


「ああ、おはようクロナ」


 俺が挨拶をするとクロナは嬉しそうに俺の手を握って来る。前の戦争でも気を失ったからクロナも慣れているのだろう。


 俺が体を動かしたせいか、俺の上に乗っていた香奈がアレクシアの方にずれ落ちて行って、そのままベッドから落ちてしまった。


「ふんぎゃあッ!?」


「……」


「……」


「……んん? 何よ? うるさ……レイ! 起きたのね!」


「あ、ああ、おはようアレクシア。それより、今ベッドから……むぐうっ!」


「もう! 毎回毎回心配させて! レイのばかぁ!」


「ああっ! ず、ずるいです、アレクシア様! レイ様! 私も物凄く心配したんですから!」


 俺が目を覚ましたアレクシアに抱きしめられるのを見て、クロナが自分も心配したんだ! と俺の腕を抱きしめてきた。うおっ! クロナにも柔らかいものが……11歳にしては発育がいい様な……いや、こんなものなのか?


 それに苦しいぞアレクシア。久しぶりに胸に挟まれたが、苦しいものは苦しい。俺の顔の形に合わせて形が変わるのでフィットして余計に。


「いたたぁ〜……せっかく従兄さんの上で寝てたのに落ちちゃった……って何をしているんですかアレクシアさん! クロナちゃんまで!」


 そこに、先ほどベッドから落ちた香奈が起き上がってきた。そして今のベッドの上の現状に苦言する。良し、そのままアレクシアを引き剥がしてくれ、香奈。俺もアレクシアに抱きしめられて嬉しいのだが、このままでは呼吸が出来ない。


「ずるいです! 私も抱きつきます!」


 ……え? 香奈が意味のわからない事を言い、ベッドが揺れる。そして、俺の上に再び柔らかい感触が。左腕にクロナ。右腕と顔にアレクシアが。腰から上が香奈に抱きしめられて身動きが取れない……そろそろ呼吸が……。


 ◇◇◇


「はい、あ〜んです、レイ様!」


「いや、俺自分で食べ……」


「あ〜んですっ!」


「……あ〜ん」


 自分で食べられるからいいと断ろうと思ったが、クロナの有無も言わせないほどの覇気に俺は黙ってしまう。


 今部屋にいるのは俺とクロナだけだ。アレクシアはメリア将軍たちに俺が起きた事を伝えに行く、と部屋を出て行き、香奈は麻里ちゃんに報告しに行くと出て行った。


 クロナは俺がお腹を空かせているだろうからと、部屋に備え付いている台所を使って簡単な料理を作ってくれた……よくよく考えれば、クロナの手料理食べるのって、これが初めてだな。


 食べ物は起きたばかりの俺の胃に優しように、お粥と、果物をすり潰したデザートだ。それをわざわざクロナがスプーンでよそって食べさせてくれる。


 少し恥ずかしいが、クロナが楽しそうにやっているのでこのまま食べさせてもらおう。


 それからしばらくすると、アレクシアがメリア将軍たちを連れて部屋に入ってきた。エレア、シズク、バードンは心配したと言ってくれて、ダグリスだけは俺がクロナから食べさせてもらっているのを見てニヤニヤと笑ってやがる。お前は後で殴る。


 その後に香奈が麻里ちゃんとルシアーナを連れて入ってきた……既にルシアーナは知っているのだろう。顔色が物凄く悪い。目の下にクマも出来ているから寝てないのだろう。


 それからみんなが俺のベッドを囲う様に座り、話を始める。俺はどうやら1週間ほど寝込んでいたらしい。まあ、いつも通りだな。アレクシアにその間あった事を聞こうとすると、物凄く困った顔をしているが、何かあったのだろうか?


「アレクシア?」


「レイ。慌てずに聞いてね?」


 アレクシアはそんな事を言ってくる。本当に何があったんだ? とりあえず、聞かない事には話が進まないので俺は黙って頷く。


「あの魔族が襲ってきた日の後なんだけど……皇帝陛下と第1皇子に宰相、他護衛の兵士の死体が謁見の間で見つかったわ」


「なっ!?」


 一体どういう事だ? なんで皇帝陛下たちが死んでいるんだ? 襲撃にきた七魔将や竜たちは城壁のところで食い止めて、帝都内には入れていないはず。それなのにどうして?


「そして、その犯人が今行方不明になっている海堂 匠って事になっているわ」


 アレクシアの言葉にルシアーナがビクッとする……益々おかしい。海堂は確かに魔神に取り込まれたりはしたが、襲撃の際は勇者組と一緒にいたはずだ。それなのにどうして海堂が犯人に?


「勇者のみんなもそう発言したんですが、第2皇子のロズベル皇子が信じてくれなくて」


 俺の疑問に麻里ちゃんが答えてくれた。


「第2皇子は生きていたのか?」


「ええ。側にSランク冒険者のガルガンテがいたみたいで、助かったの」


「……嵌められたのか」


 俺のつぶやきにアレクシアも「たぶんね」と答える。明らかに無理矢理すぎる。


 勇者組という目撃証言があるのに、海堂を犯人とする帝都。それに男の皇族で唯一生き残った第2皇子。偶々側にいたガルガンテ。疑うならここなのだろうが、証拠が無いからな。何も言えない。


「今帝国はどうなっているんだ?」


「第2皇子が帝位を継いで運営しているわ。大将軍にガルガンテがついて。だからみんなが怪しいと思っても言えないのよ」


「そうか……まあ今はどうしようもできない。何も証拠が無いからな。それよりもこれからなのだが……」


 俺はみんなとこれからの話をする。これからの戦いは個人個人でどうにかなるものでは無い。大陸に散らばる封印を守らなければならないからな。そのためには他の国とも協力しなければ。


 さて。どうしたものか。とりあえずは一旦王領に戻るか。みんなも心配しているだろうし。それから各国にアレクシアと俺の名前の連名で手紙を出してみるかな。アレクシアが言うには俺の名前は有名みたいだし、見てくれるだろう。

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