125.看病
俺はぐっすりと眠っているハクの頭を撫でる。ハクとの戦いから既に数時間はたった。既に太陽も登って、今から起き出す人もいる時間帯だ。
ハクを助けた後、俺は家に連れて帰り、ハクを看病している。エアリスたちも看病すると言ってくれたのだが、これは俺のただの自己満だ。みんなにさせるわけにはいかないので寝て貰った。
プリシアは最後まで渋っていたが、無理矢理部屋に戻らせた。プリシアは多分ハクのあの言葉を聞いたのだろう。子どもが大好きなプリシアは、それがあまりにも辛かったのだろう。
ここに来た兵士たちには、後日王様に説明するからと言って丁重に帰って貰った。兵士たち全員が顔を引きつらせていたが、何故だろうか? それだけが不思議だ。
そんな事を考えながらハクの頭を撫でていると、ギギィィと扉が少し開いて、そこからひょこっとメイちゃんが顔を出す。しかし、それとは御構い無しにとエクラが部屋に入ってくる。
「……お兄ちゃんおはよ」
「ああ、おはようメイちゃん。エクラもおはよう」
「キュウ」
メイちゃんは少し申し訳無さそうに挨拶するが、俺が笑顔で返してあげると、メイちゃんはにぱっと笑顔になる。そして音を立てないように部屋に入ってくる。優しいなメイちゃんは。エクラは定位置である俺の頭に乗る。
「ハクちゃんの調子はどう?」
「まだ、目は覚まさないけど気持ち良さそうにしているよ」
「よかったぁ。心配であまり眠れなかったんだぁ。プリシアお姉ちゃんもずっとお月様見ながらお祈りしてたし」
「……それは有難いが、プリシアがそれで体調壊したら俺が悲しむから。メイちゃん、ハクは大丈夫だからプリシアは寝ろって俺が言っていたって伝えてくれるか?」
「わかった!」
メイちゃんは元気よく返事をして部屋を出て行く。エクラもそれについて行くのと同時に、入れ替わるようにエアリスが入ってくる。
「レイ、おはよう」
「ああ、エアリスもおはよう。どうしたんだ?」
「ああ、おはよう、じゃ無いわよ。あなた全く寝てないんでしょ? 少しは寝たらどう? 私が見ているから」
エアリスの言う事は有難いが、俺は首を横に振る。
「ハクに目が覚めるまで、看病してやるって言ったからな。起きるまで側にいてあげないと。エアリスこそ学園だろ? もうすぐ時間じゃ無いのか?」
「その感じだと、今日は行かないみたいね。はぁ、わかったわよ。師匠には私から話しておくから、また詳しく話してよね。……ん」
そう言い、唇を突き出してくるエアリス。俺は苦笑いをしながらも
「ありがとう、助かるよエアリス」
チュッと触れる程度のキスをする。エアリスも満足そうに微笑みながら部屋を出て行く。俺はエアリスが出て行くのを見送ってから再びベッドの側まで戻る。俺はゆっくりとハクの頭を撫でながら、目が覚めるのを待っていたのだった。
◇◇◇
「レイさん、お昼どうしますか?」
俺は何度目かわからないが、おでこの上に乗せているタオルを替えていると、プリシアがゆっくりと入ってくる。メイちゃんとエクラは遊びに行って、ロイはその護衛についって行ったそうだ。迷子にならないと良いが。
「ああ、ここで食べるよ。プリシアも今日は休んで良いんだぞ。あまり寝てないだろ?」
「それを言ったらレイさんなんて全く寝てないじゃ無いですか。それに私もハクちゃんの事が心配で……」
そう言い俯いてしまうプリシアに俺は苦笑いする。全くこの子は。そんなプリシアに俺は手招きする。プリシアは首を傾げながら俺の側に寄ってくるが、俺はプリシアの手を握り微笑みながら
「それなら今日は一緒に過ごそうか」
「……! はい!」
プリシアは嬉しそうに返事をし、急いで部屋を出て行く。多分昼食を取りに行ったのだろう。
それから、プリシアは部屋まで俺の分と自分の分の昼食を運んでくれて、一緒にお昼を食べた。メイちゃんたちにはお金を渡しているらしいので、自分たちで買うだろうとの事。
その後はハクの看病をしながら、プリシアと色々話をした。メイちゃんが色々な動物と仲良くなって連れて帰ろうとするとか、ロイの剣術が素人でも分かるくらい上達しているとか、教皇国にいるシスターに仕送りがしたいから時間があれば働きに出たいなど。
メイちゃんのは動物の言葉がわかるせいだろうな。うーん、少し考えてみるか。メイちゃんがちゃんと育てるなら別に連れて帰ってきても良いと思うし。……何十と連れてこられたら困るが。
ロイの剣術は本当に上達が早いと思う。この調子で上達すれば、俺も剣では勝てないかも。そこまでの実力になったら剣じゃなくてロウガを使うけど。
働きに出る事に関しては、プリシアが諦めてくれなかった。家のことをしてくれているから、それに対するお金を渡しているので、それを仕送りにどうか? と言っているのだが、そのお金はメイちゃんたちのために使いたいと言う。
「私、本当に幸せなんです。大好きな人と毎日過ごせて、好きな事をさせてもらって。それにあまり私たちの事を甘やかすと、アレクシアさんたちに怒られますよ?」
だからこれ以上のお金は必要ないと言う。家の用事も午前で終わってしまうらしく、午後が暇だから何かしたいと言うのもあるらしい。そこまで言うのなら、俺もこれ以上止める事は無い。
「ただ、無理だけはしないでくれよ?」
俺は、そう言いながらプリシアの頰を優しく撫でる。プリシアも俺の手を取って嬉しそうに頬擦りをしてくる。
そんな風に色々話しながら看病をしていると
「う、うぅん……」
「ハク!?」
「ハクちゃん!?」
ハクが身じろぎをし、少しずつ目を開かせる。そして少しの間、ぼーっとして天井をキョロキョロしてから、俺たちに気づいたのか、今度は俺たちの方をぼーっと見る。そして
「……お、にぃ?」
俺がわかったのだろう。俺のことを呼ぶ。プリシアは余りの嬉しさに涙を流す。俺はそんなプリシアに苦笑いをしながらもハクの手を握り
「ああ、俺だ。おはようハク」
返事をしてあげる。ハクもプリシアにつられたのか、涙を流しながら
「……おは、よ。おにぃ」
と、返してくれた。……無事に目が覚めて良かった。俺もプリシアのが移ったみたいだな。目から汗が流れてくるぜ。
◇◇◇
ナノール・ワーベスト国境
「ようやくワーベストを抜けたな」
「はい。あと少しでナノール王国の王都へ着きます、坊っちゃま」
「……良い加減坊っちゃまはやめてくれないかセルズチャン。俺ももうすぐで20だ。もう坊っちゃまって歳じゃないだろう」
「ホッホッホ。わしからすれば坊っちゃまは幾つになられても坊っちゃまですぞ」
「まったく。クラリエは大丈夫か?」
「はい、問題ありません、ミスト様」
「そうか。無理はするなよ。お前には色々として貰っているからな」
「はい。ミスト様は全く役に立ちませんからね」
「……時折、ナチュラルに毒を吐くのはやめて欲しいのだが」
「ホッホッホ」
馬車は進む。
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