記憶のその先
着いたようだ…だが、息が切れている。
「ここか…はぁはぁ、」
中に入ろう、そう思った時だった。
「慎くん、ちょっと待って」
呼び止めてきたのは、向井百合だった。
「お前、…奈月はどこだ、何している。」
「あなたを待ってたの、くると思ったわ」
「なぜだ、」
「敵の情報、それと渡す物があってね。
あとこれ、…ピンチの時に読んでねそれじゃ」
向井は手紙を渡してきた。なんなんだ…
「速く行かなければ、ビルも、奈月も、危ない。」
俺は急いでビルに入ってエレベーターまで向かった。
「くそ!しょうがねえ!」
エレベーターは壊れていたから階段で行くことにした
。くそ!足がもげそうだ。
-ビル内部、25階-
「おいおい!その程度か?避けてばっかじゃ俺は殺せねえぞ?」
「くっ…音速なのに…なんで攻撃ができないの?」
攻撃するひまがない…避けるのに必死だ。
level7の会社員も助けながらなんて…
もう、やられる。
「カズキ!目を覚まして!お願い!」
「俺はもう奈月の知っている俺ではない、
ふっ…俺の勝ちだ!」
だめ!避けれない死んでしまう…どうしたらいいの…
-今から2年前ほどのことだった-
私、東城奈月には2歳年下の弟がいた。弟が能力を手に入れてしまったのは私よりも速く、能力は視憶。
視界に入る人間の記憶を見ることができる。
その能力のせいで弟は引きこもってしまった。
「嘉月。学校いくよ。」
「やだ、行きたくない…」
いつも通り、学校に行くよう部屋に入ると、
嘉月の様子はおかしかった。いままでこんなことを言ったことはなかった。私は優しく声をかけた。
「どうしたの?学校でなにかあったの?」
「…」
「悩みがあるの?お姉ちゃん相談のろうか?」
「人の記憶が見える…みんな僕の悪口を言ってる…
もう…行きたくない…」
嘉月は泣き出してしまった。
人の記憶が見える…本当なのだろうか…
でも嘘を言ってるようには見えない。
「じゃあ今日は学校休む?」
嘉月はそっと頷いた。
「じゃあ行ってくるね。」
そう言って私は学校に行った。
「あれ?奈月、弟の嘉月くんは?」
「なんか、学校行きたくないって…変なこと言ってたの…人の記憶が見えるとか…」
「なにそれー学校行きたくない口実がそれ?変わってるねー」
「でも嘘言ってるようじゃなかったから」
「もーそんなんじゃ詐欺合うよ?」
友達はそう言って自分のクラスに入っていった。
嘘…ついてるのかな?
次の日、また次の日もその次の日も…
嘉月は学校には行かなかった。
一週間がたった。
嘉月が私に声をかけた。
「お姉ちゃん…」
「どうしたの?」
「今日は…行く…」
嘉月がそう言ってくれて、私は嬉しかった。
いつも通りの嘉月が戻ってくれるのかなと。
そう思っていた。放課後だった。
「あ、嘉月帰ってる。学校どうだったんだろう」
私は嘉月の部屋に向かった。
「嘉月、」
ドアを開けた時だった。
「え、あ、いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
私は部屋の前に座り込んで、動けなくなった。
ちょっどお母さんが仕事から帰ってきていた。
「どうしたの?奈月え、ええ!?」
母も大泣きした。父に電話をした。
「なんで…なんで嘉月が死なないと行けないの?」
家族は悲しみと涙に包まれた。
机には遺書が置いていた。
-僕はもう生きるのがつらい。お姉ちゃん、お父さん、お母さん、ごめんなさい。
信じてもらえないと思うけど、僕は能力を手に入れてしまった。能力は視憶。視界に入った人間の記憶を視ることができる。でも、この能力のせいでぼくは苦しめられた。僕の悪口を影で言ってる友達の記憶が見えちゃって。誰も信用できなかった。
久しぶりに学校に行ったらまた悪口を言っている記憶が見えて、もう僕はつらくなって、自殺をしてしまいました。本当にごめんなさい。
私はまた大粒の涙が流れた。後悔しかなく、弟になにもしてやれなかった自分が嫌になった。
でも私まで引きこもったら、同じだ。私は嘉月の死を無駄にしないように前に進むことにした。
そして、それから私も能力を手に入れてた。
1つは音速移動、もう1つは能力者感知。
高校に入ると、その能力に反応した。
「えー今日から担任になる田中ですよろしく、次はみんなから自己紹介しようか、1番からいこっか。」
7番目のときだった。
「えっと…尾形和樹です、よろしくお願いします。」
私の能力が反応した。尾形和樹、能力は創炎。
そいつはマスクをしていたが、なんとなく嘉月に似ていた。なんだか涙が流れてしまった。
休み時間、尾形くんを呼んでみることにした。
「えっと…尾形くん?ちょっと来てくんない?」
そう言って屋上に呼んだ。
「なんだよ、なんか用か」
「あなた、能力者だよね?」
「な、なんでわかったんだ!お前、何者だ。」
「私の能力は音速移動と能力者感知。」
「な!?2つ!ありえねえ…」
「俺は能力者を束ねているんだ。お前も来い!」
そう言ってそいつは私の手を握って外に出た。
「おら、乗れや」
「バイクなんかいいの?」
「大丈夫だよ、免許もとっちまったし、自分でお金出したんだし。そんなことはどうでもいい。行くぞ。」
私は驚いたが、嬉しさも感じた。能力者の役に立つことができるかもしれない。そう思った。
「あ、えーと…」
「奈月でいいよ、よろしくね。」
「あ、ああ。俺も和樹でいいぜ」
そのまま、沈黙が続いた。
その時だった。
「な……!?」
「どうしたの?和樹」
彼はバイクから降りた。
「おい!貴様!なにしている!」
「ちょっとはなしてよ!」
「おい!はなせ!」
かれの仲間であろう2人の人間が研究者に捕まえられていた。
「お前たちを力を科学に取り入れてやる。」
「百合とアツシをはなせ!」
彼は怒りに任せ、研究者とその車を焼き払えるほどの
炎を放った。
「そんな!うわぁぁぁぁぁぁ!」
「和樹!やめて!そんなのダメ!」
和樹は数分前の和樹ではなかった。
「邪魔だ!!」
和樹は私にも普通の人間には避けきれないほどの炎を放った。私はその場には入れず逃げることにした。
私はそのまま家に帰った。