上弦の弓月
1
夢が嬉しき天堂を見る、その朝の影のことを、ぼくは今でも覚えている。
ㅤただ、ぼくは眠ることもなく、そして日々が静かにたゆたうことも、その朝風が今でも夢を掌ることを知っている。その夢はたそがーれにカーテンが降りるとき、ぼくはいつも、その静かにうつりうつりゆく、その天堂の影は下界を縋っている。
ㅤ土を捏ねて神を造る。
ㅤ此の十字歌の上に、汝を永淵に叡遠とした神に神を神へと神が祝福する、その在りし日の愛でる永遠の日々は汝に哀しき。
ㅤ峡谷から風の伊吹が聴こえる
ㅤあの夜は朝に来たりて
ㅤそれは神の金貨に依るものである
ㅤ霧が街を覆い隠して復活を祭りて
ㅤあなたに給仕いたします
ㅤあなたを私に仕立て
ㅤあなたに仕えます
ㅤあなたを壊して
ㅤ――私はだれ?
ㅤ歓喜の朝よ。とこしえの夜よ。
ㅤㅤㅤ貴方はだれ?――
残酷な朝は死者を葬送し、その神の子の復活を待つだけである。
希望の夜は死者を葬列し、その人の子の死を待つだけである。
ㅤ採光の聖は過去を照らし、喝采の聖は未来を呼び寄せる。
ㅤ神へ誓い
ㅤ神を願い
ㅤ神に会い――そして神を殺す――
ㅤすべて人は史書に描かれてあるモザイク国家は群れである。
ㅤろうそくで作られた人の代わりで出来た国家は群れである。
数字で割り振られた人の識別番号による国家は群れである。
終わりの歌を歌えよ。
歌を歌えよ。終わりの
ㅤ歌えよ。終わりの歌を
ㅤ歌えよ。終わりの歌を
ㅤ歌を歌えよ。終わりの
ㅤ終わりの歌を歌えよ。――そして始まりの歌を歌えよ――ㅤ
2
ㅤパラパラと音が乱れる。それは夜に調べる、その朝の鏡の日を。ぼくたちの夢は、誰もが知っているし、知らない声が聴こえることもない。ただ、ぼくたちはそのうつらうつらとのぞみ往く、その日差しの中に、巻き上げるカーテンの中に静かな光が見える、そのたそがれの朝の澄んだその空気を、ぼくは、今でも覚えている。
朝の鐘が鳴った。
朝は静かに、そして静やかに、ぼくたちの灯狩りの夢をたそがーに染める、その朝の日々に日々へとぼく自身を祀り上げる、その音程の息吹を以て。
夜へと、夜を歌う、その鏡の影の景色の跡に、ぼくたちの日々の祭りの影は差す。さあ、朝の月が昇った。朝だ。
ぼくが起き上がったときに、月は上弦の糸を結っていた。それはあと少しで弓月の形をしそうなほど、その繊細な、振るえる薄白い黄色の光を、ぼくは見ていた。その月は寂しさを見せびらかすこともなく、ぼくたちの天界に張っている。
ぼくは下に降りて、窓のカーテンを開けた。陽光の日差しが眼に降り注ぐ。それが原始の太古に灼熱の砂漠として降り注げられたその神の恩寵の調べの中で、学士が出席した。あなたは、神学、法学、医学、どの学士かね? と問う言葉が続く、その神のタタール、アンフェレス、コンポーラと続く、長い巡礼の旅路をぼくに思わせた。ぼくはその光を狩ることもなく、薄く淡いその線が静かに春を迎えるその黄金色の朝灯を浴びては、ぼくは神を殺した聖書を読み上げている。創世記から始まるこの原始の物語は、いつも終わりを迎えることがない。ぼくたちが神話の続きを作り上げているからだ。
絃は響かせる、その蒼い悲しみの夢を以て、ぼくはうつらと覚める、その言葉の鏡による、その陽光を翳して事象を壊したその神を以て、夜は訪れる。夜の巡礼地はひそやかな緩やかな朝を知っている。ただ、夜を壊して、壊して、ぼくは日々を装飾した、その黄昏に行く音を整える。
3
聖なる春よ
おお、何を話すか
その神の映り行く形なき世界を