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落ちる

ウサギは進む

進む

進む

私は追いかける

追いかける

追いかける

なぜ?


◇◆◇


「な・・・んで・・・」


全ての記憶を取り戻した私だったが、いきなり名前を言われ頭の中が真っ白になった。というもの、こちらの世界で本当の名前を名乗ると生きて帰ってはこれないと言われていたからだ。自分から名乗る前にバレているなんていうのは聞いていない。こういう場合どうすれば良いのだろう?誤魔化すにも、もう遅かった。


「うん、本人で間違い無いようだね?反応的に」


黒い帽子を被った男が言った。


「そうみたいだね!良かった、良かった、無事にアリスが着いたみたいだ!そして、無事に記憶を取り戻したみたいだ」


続いて、灰色の髪をした少し背の低い男が答える。


「あ、えっと・・・なんで私の名前を?それに、アリスって…?」


男たちは顔を見合わせてからこう言った。


「色々聞きたい事があるだろう?が、こちらも説明しなくてはいけない事が山程あるんだよ」


「この世界の事とかね!」


「質問は、そのあとにしてもらってもいいかな?」


「まずはお茶にしようか!」


2人に背中を押され、1番立派そうな赤い肘掛付きの椅子に座らされた。2人はそれぞれ両側に座り、カップに紅茶を注いでくれた。


「まずは、一杯飲むといい。落ち着かせる事が大事だ。安心していいぞ?毒やら睡眠薬やら変なものは入ってないからさ?」


冗談のつもりなのかもしれないが、正直今の状況では笑えなかった。しかし、色々わけのわからない目にあい疲れたうえに喉も渇いていたので言葉を信じ、一杯飲んだ。


「落ち着いたかね?」


黒い帽子の方が訪ねて、背の低い方が2杯目を注いでくれた。


「えぇ、ありがとう。美味しいわ」


「そりゃ良かった。なにせここはお迎えの場所だからね、美味しい紅茶でお客様をお迎えしないと失礼だろ?」


「お迎えの場所?」


「そうさ!ここは始まりの場所、そして僕らはお迎え人!アリスを迎え導く役なのさ!」


黒い帽子の男に続き、背の低い男が答える。


「聞きたい事は山程あるだろうけど、とりあえず1から話すとしよう。あ、自己紹介がまだったね?」


そこで黒い帽子の男は立ち上がり、机から離れて帽子をとった。


「私の名前は、イカレ帽子屋《Mad Hatter》だ。そして、そっちのちっさいのが、三月ウサギ《Marching rabbit》。私達はここへ迷い込んで来た少女達の出迎え役をしているんだ」


「小さいとは失礼だね!俺よりちっさいのはもっといるだろう?チェシャ猫とか、ダムとディだって俺より全然小さいや」


「気に障る様だったら謝るさ、すまなかったな。けど、私は君はそれ位で怒る様な心の小さい人間だと思わなかったから言ったのだよ」


「イカレ帽子屋・・・俺の事をそんな風に思っていてくれてたんだね・・・」


「当たり前だろ?ずっと一緒にここでお茶会をしてきた仲ではないか。アリスをずっと送り出してきたからこそわかるのだよ」


「イカレ帽子屋・・・!」


「三月ウサギ・・・」


「いつまで続ける気かしら?いい加減話を進めてくれない?」


「あぁ!そうだった、そうだった。すまなかったね。で、どこまで話していたんだっけ?」


「どこまでも話していないわよ。自己紹介だけ」


(この2人は名前の通りイカレてる・・・こんな調子で大丈夫ずっといくとついていける気がしないわ。私は一刻も早くウサギを追いたいのに・・・)


そこで、ふと違和感に気づく。なぜ、私はウサギを追っていたのか。なぜ。追わないといけないのだろうか。確か穴に落ちる前に白い服を着ているウサギを見つけ、直感的に追いかけなければいけないの思い、追いかけてきたのだが。・・・なぜ・・・?


「疑問は多いと思うけど、まぁまず話を聞いてもらおうかな」


この、イカレ帽子屋の言葉も何度目だろうか。つっこむのも面倒なので相槌だけ打っておく事にした。


「まずはこの世界について、話すとしよう」


◇◆◇


不思議の国

「不思議の国はとってもおかしな国。みんなどこかおかしい、まともなやつなんていやしない。昔はそれでも楽しくやっていたんだよね」


「僕らは歳をとらない!他の国では更新というものが行われているんだろう?姫もみんなも次へ次へと変わっていくと聞いた!」


「こちらの世界で更新するのは、女王様と王様だけ。あと、首をはねられた哀れなトランプ兵ってとこかな?」


「僕たちは歳をとらない、女王様に王様が更新するのをずっと、ずっと見てきたんだ。だからわかるんだよ、この世界はおかしくなっている」


「おかしいのは昔からなんだがね、そういうおかしいんじゃないんだよ?狂ってるんだよ。あぁ、狂ってるってのも、違うよ?あれだよ、世の中の理が狂ってるのだよ」


「そう、それ!決して僕たちの事じゃないからね?ふふふっ」


「で、狂い始めたんだよ。世界がね。君のいた世界もそうなんじゃないかい?白雪姫が目を覚まさなかったのも、この世界に迷い込んできたのも、全てこの世界が狂い始めてきたからなんだよ。そして、この不思議の国も狂い始めてきたんだ」


「この世界はもともと狂っていたんだけどね!ここは時間の狂った世界。他の国と隔離された別世界!同じ世界のはずなのに、別の世界の不思議な世界・・・!」


「もともと狂っていた世界がさらに狂ってしまった。理由はわからない。けど、おおよその見当はついてるよ。恐らく奴ら……蛇と呼ばれる奴らの仕業だね。蛇に関しては僕らは関わることが出来ないから、どうしようも出来ないんだ」


「そう、この世界だけじゃない!他の世界も最近影響が出ている様だよ!ここに来るアリス達が言っていた、みんな狂ったせいで影響を受けたところを元に戻す為にきていたんだ。君もそうなんだろう?スオン?」


「アリスについての説明もした方がいいね。君もアリスの1人になるんだよ。アリスというのはこの世界にきた少女達の事を言うんだ。この世界にきて、願いを叶えてもらおうとする少女の事をね?

願いを求むもの、それがアリスさ。アリスに人種や国は関係ないからね。色んな御伽噺の国の少女がきて女王に願いを叶えてもらっていったよ」


「でも、最近はこの世界がおかしいんだ!女王様が3人!願いを叶えてくれるのは白の女王様だよ!間違えてはいけない!でもね?叶えてくれる願いは簡単なものばかり。この世界ならもっと大きな願いも叶えられるはずなのにね、なぜだかわかる?」


「こんな話がある。とある国の少女が、アリスとしてこの国へ迷い込んできた。その少女の願いは、私はの運命を変えたいというもの。その少女は死ぬ運命にあったようだね。女王様に願いを叶えてもらう為に、お城へと向かって行ったよ。しかし、少女の願いは叶えてもらえなかった。なぜなら、女王1人で叶えられる願いの大きさじゃなかったからだ。運命を変える程の大きな願いの時は、女王3人の力が必要なんだよ」


「この世界に女王様は3人!昔は1人だったのに、歪んだ世界の影響か、三つ子ちゃんが生まれてしまった!三つ子ちゃんの1人が力を受け継げれば良かったけれど、世の中そんなに上手くはいかない。女王が受け継ぐ願いを叶える力は3人の女王にそれぞれ分かれてしまったのさ!そのせいで、女王様1人では願いを叶えるにも限界がある」


「昔は3人仲良くしていた。しかし、赤の女王が消えてから、白の女王と黒の女王の仲が悪くなってしまったんだ。昔は3人仲良く穏やかだった女王様。しかし、黒の女王は凶悪に変貌してしまったんだよ」


「なんでだろうねー?原因はは赤の女王にあるのかな?それとも白の女王?原因なんてなく、ただ黒の女王がグレちゃっただけなのかなー?」


「白の女王は温厚で穏やかな性格。赤の女王が消えてとても悲しんでいた。白の女王は、私たちを人の姿にしてくれた人さ。私はもともと人だったけど、三月ウサギはもとより、チェシャ猫やトランプ兵、ジョーカーなんかは人型になって喜んでいたよ。チェシャ猫は魔力があるから、人にも猫にもなれたんだけどね」


「白の女王様は優しいお方!黒の女王様とは正反対!!」


「でも、本当にそうなのかな?本当に優しいのは・・・ヒヒヒ」


「それで、願いの叶え方!どうするんだっけ?」


「それを言わないとだね。女王の元へ行き願いを言えばいい。簡単だろう?」


「本当に簡単だね!でも、スオンは願いを叶えてもらうんじゃなくて、白雪姫を探しているんじゃなかった?あ、ウサギだっけ?」


「スオンは白いウサギを探していたんだよ。でも、本来は白雪姫を探すはず。どちらを追うのも一緒だよ。ウサギの先に白雪姫が居るからね。・・・でも、急いだ方がいい」


「それは、なんでだい?」


「白雪姫は自分の本当の名前を言ってしまったんだ!だから、急がないと・・・殺されちゃう。この世界でアリスの血はとても貴重だからね。アリスの血はそのものを若返らせ、その肉は病をも直し、その魂は呪いを特に・・・。古い書物の一説だけど、これは事実だよ。白雪姫はアリスではなかったけれど、この世界に迷い込んできた少女はみなアリスと認識されてしまう。急がないと、殺されるよ。その身を女王に捧げる為に、ウサギがもう動き出している・・・」


「スオンの追っている白ウサギは白雪姫を殺すつもりなのか!だから、白ウサギを追えば白雪姫が見つかるんだね!でも、どうやってウサギを探そうか?どこに居るかなんて皆目見当もつかないよ?」


「その心配なら大丈夫!きっとあっちの世界から、時計を貰っているはずだからね」


「時計?なんだい?それは?」


「探し人を探す為の時計さ。本来は女王のとこへ行く為の道しるべとして使うんだけど、白雪姫にも使えるはずだよ。強く願った相手のところへ針が指すんだ。そうすると針が動いてその人物のいる方向を指すからね、指した方向へ向かって行けばいいってわけさ。針は赤いのを見るんだよ」


「成る程!そんな便利なものがあるなら安心だね!」


「そうだろう?白雪姫だけじゃない、他の人の時にも使えるからね。上手く活用するといい」


「よし!それじゃあ、いざ出発だ!!」


「出発の前に、まず、ジョーカーの家を訪ねるといい。ジョーカーはこの国の案内人。きっと何かヒントをくれるはずだよ」


「まずは、ジョーカーの家だね!それはどこにあるの?」


「ジョーカーの家はこの道を真っ直ぐ行って左に曲がって、それからちょっと林の中をくぐった所辺りだと思うよ」


「ありがとう!それじゃあ、今度こそ出発だ!!」


◇◆◇


長い寸劇でも見ている様な2人の会話を見ながら、私はお茶を飲んでいた。会話をしながらでも、飲み終わったらすぐにお茶を注がれる。なんだかんだで、3杯は飲んでしまっていた。これでは途中で用を足しにいきそうだ。


「どうだったかな?説明はこんなとこだけれども。何か質問はあるかね?」


「なんなりと聞いておくれよ!!」


説明らしい説明とは思えなかったが、ずっと疑問に思っていたことを聞いて見ることにした。


「説明は何と無くわかったわ。この世界について、とかね。それでなぜあなた達は私の名前を知っていたの?」


「それは、最初に言ったとおり私達がお迎え人だからだよ」


「そうそう!僕たちお迎え人は、アリスとしてこの世界にきた少女達の情報全てを知っているのさ!」


「この世界に来た理由も、求めている願いも全て私達にはわかるんだよ」


「そうさ!僕たちにわからないことはないのさ!」


「だから、君が本来願っている事もね・・・?」


イカレ帽子屋はそう言って不気味に笑った。


「私は白雪を助けに来ただけ。それ以外の願いなんてないわ」


「本当にそうかね?・・・まぁいい。そのうちわかるさ。なるようになるんだからね。この世界の運命はもう決まっている。私にはわかるよ、君がこの後どうすることになるのか、がね」


「私の事は私が決める。知ったような口きかないで」


「あまりかりかりしなさんな。お茶でもいかがかね?」


三月ウサギが更にお茶をついだ。


「さっきから飲んでるわよ・・・」


「それで、他に質問は?」


「白雪の他にもう1人探している人がいるの。私の世界で道化師と呼ばれてる人が居るんだけど、その人の仲間がいるって……」


「あぁ、道化師か。道化師はどの世界にも存在するのさ。この隔離された国にもちゃんと居るはずだよ。ただ、この国の道化師はちょっと厄介でね・・・だれが道化師なのかわからんのだよ。他の所ではみな一様に同じ様な格好に同じ様な顔つき、同じ様な髪型をしていてわかりやすいんだがね・・・。残念だが、これは私達にもわからないな」


「そう言えば!道化師達が現れてから世界は狂い始めたようにも思えるね!気のせいかな?」


「道化師が現れてから・・・?それ、どういうこと?道化師はずっと居た存在ではないの?道化師はいつ現れたか不明でなんでも知ってる・・・そんな存在だって教えてもらったわよ?」


「他の国ではそう伝わっていたんだね・・・。いや、そう伝えたのか。この国は他と違うから、伝わらなかっただけで・・・」


「説明してもらえる?道化師は一体何者?」


◇◆◇


「言った通りさ。私達にも道化師が何なのかわかっていない。ただ一つ言えるとな道化師が現れたのは今から2、3周期前からって事位かな。周期っていうのは、あれだね。物語の周期の話だよ?だから、君のおばあちゃんか、ひいおばあちゃんが茨姫だった位から現れたのさ。彼らは記憶の捏造をしている。なぜかはわからないがね。もしかしたら、そのせいで世界が歪んでしまっているのかもしれないね・・・。奴らには気をつけて方がいいよ。」


「道化師のいい見分け方を教えてあげよう!道化師は何かあると目が紅く光るのさ!紅く光ったら、道化師かと疑うのがいいと思うよ!まぁ、道化師みんなが悪い奴らなのか。それは僕たちにもわからないんだけどね」


「それより、こんな所でのんびりしてていいのかい?急がないと白雪姫が殺されてしまうよ」


「えぇ、そうね。そろそろ行くわ」


全く、ダラダラと長い寸劇風に説明してたのはどこのどいつよ。なんて言葉を飲み込み、笑顔で2人に礼を言った。


「色々ありがとう、イカレ帽子屋さんに、三月ウサギさん。それじゃあ、私はさっき言っていたジョーカーさんの所へ訪ねてみるわね」


「ジョーカーはちょっと曲者だが、話せばわかるいい奴らだよ」


「気をつけるんだよ!健闘を祈る!!何かあったときは、僕らが助けに行ってあげるから!」


「ありがとう!それじゃあ、また」


2人に挨拶をし、言われた道を真っ直ぐ進んで行った。この先訪ねるジョーカーとやらは今の2人より曲者ということだろうか。正直言って、めんどくさい・・・。だが、この世界の事はこの世界の住人に聞いた通りにするのが1番良いであろうと思い、気が重いがジョーカーとやらを訪ねる事にした。


そして、私は見逃していたのだ。


別れ際、手を振るイカレ帽子屋の目が


紅く染まっていた事を


◇◆◇


進む

進む

茨姫

追いかけるは

白ウサギ

大切な人を守るため

大切な人を見つけるため

勇気を出して進んでく


あなたは

どこ?




説明回となってしまいましたか?

書き溜め分はあと2話分で終わりとなり、更新が遅くなってしまいますが、気長に待って読んでもらえたら嬉しいです!

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