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◆落ちる◆

針に指を刺しまして

深い眠りにつきました

それは

嫉妬

憤怒

から生まれた

魔女の

呪いの始まり


◇◆◇


夕日が綺麗に輝く頃、気づけば私は塔の前に1人立っていた。

いよいよ、この時が来たのだ。内心では行きたく無いと思うものの、身体は勝手に塔の中へと進んでいく。いつも外から見ていた高い高い塔。石積みで出来た塔はひどく古ぼけていて所々にヒビがみえる。


目の前にある重い鉄の扉についている丈夫そうな錠前と鎖。簡単に壊す事は出来無いだろう。しかし、私はなぜかその錠前の鍵を持っている。どうして持っているのか、私にもわからない。その鍵を錠前の鍵穴にさし左に回す。『カチャッ』という小さな音と共に錠前と鎖が崩れ落ちるように地面に落ちた。それを確認し、開けた時につかった鍵をポケットに入れた。


重い鉄の扉を押し開け中に入ると石で出来た階段があった。上へ上へと続く長い螺旋階段。ドレスの裾を持ち上げ、一歩、また一歩と登って行く。度々ある窓から外の様子を見る。一つ段を登る度遠ざかる地面、城、そして私の日常。今ここに居られる事を噛み締めながら、また一段一段登っていく。


てっぺんまで登りきったところで、木で出来た扉があった。この奥にまだ見たことすらない糸車と、それを回している魔女が居るのか。少し緊張しながら、その扉に手をかけた。


中に入ると小さな部屋の様になっていた。予想以上に部屋は広くなっており、中には上質そうな立派なベッドと2人掛けの小さい赤いソファーが置いてある。そしてベッドの反対側、開けた扉に隠れるように糸車が置いてあり、黒い帽子付きのマントを頭からすっぽりと被った魔女が、質素な木の椅子に座りながら糸車を回し糸を紡いでいた。


(これが糸車か・・・。魔女もどんな顔なのか拝んでやろうかと思ったのに、顔もわからないし・・・)


「もし、そこのお嬢さん。」


声をかけられハッと我にかえり魔女の方に向き直る。


「はい、なんでしょう?」


(なにがなんでしょうだ。我ながら白々しい)


「糸を紡いだ事はあるかね?ここらじゃ17年前辺りに糸車の焼き払い条例が出ていたからね。全て焼き払われてしまった。これはそれの唯一の生き残りじゃよ」


「そうだったんですか。父から焼き払い条例の話は聞いていましたが、残っていたのですね。初めて目にしましたがこんなすごいものがあるなんて・・・」


(なんてわざとらしい言葉。別の事を言おうとしても口が勝手に動いてしまう。これも運命のひとつなのかね…)


「気に入ってもらえたかね。どうだい?1度やってみるのは」

「いいんですか?それじゃあ、少しだけ・・・」


(やりたくない。こんなもの)


そんな私の気持ちとは裏腹に、身体は糸車に吸い寄せられる。


「ここをこうしてだね…ゆっくりでいいんだ、やってみなさい」


魔女の教えなんて何も頭に入ってない。どうせ身体が勝手に動くのだし、指をさすのだ。聞いていても仕方ないだろう。


「ところでお嬢さん、時計は持ったかね?」


不意打ちのその言葉に、一瞬何を聞かれたのかわからなかった。


「あれを持っていなければ、戻ってくる事も行くこともできぬ。大丈夫じゃろうな?」


(時計・・・あの変な懐中時計の事?でも、魔女がなんで…)


「え、ぇぇ。しっかり持っていますよ?」


自分のポケットの外側から、時計があることを確認する。


「そうかい、野暮なことを聞いてしまったね。どれ、こちらにきて糸を紡いでみなさい」


(なんでそんな事……白雪の所の魔女と私の魔女は別者。あの時計の事を知っているのは、私とマレフィスとプリク、そして白雪のお母さんの嬢王様だけのはず。この魔女はそのどれにも当てはまらないはずだわ・・・なのに、なぜ?)


「どうしたのかね?早くこちらに来なさい」


魔女は待っている。ここで時間を使うわけにはいかないしそんな事考えていても仕方なかった。しかし、気になってしまったことを確かめないで眠るなんて、私に出来るわけがない。怪しみながらも平然を装い魔女の方へ行った。そして魔女の横に立ち一言聞いてしまったのだ。


「なぜ、あなたがここに?」


フードを被っているせいで、表情は見えない。が、そこにいる人物が今どんな顔をしているのか私には手に取るようにわかった。大嫌いなあの表情の無い目。そして不気味に口元に笑みを浮かべているのだろう。


「やはり、僕の見込みは間違っていなかったよ。」


明らかに、魔女にふさわしくない発言ではない言葉を発したのに驚きと確信を持って振り向いた。が、その拍子に尖った針に誤って指をさしてしまったのだ。


チクリという地味な痛みだった。まるで薔薇のトゲが刺さってしまった時の様な・・・。そのまま床に倒れていく茨姫。倒れ眠りに落ちようとしていくさなか下から真っ暗なフードの中が見えた。


「なんで・・・貴方が、ここに・・・」


消え行く声と共に床に倒れこんだ茨姫。


「一つ良いことを教えてあげます。あちらの世界に私達の仲間が1人。頼るといいでしょう、きっと何かの力になってくれるはずですから」


魔女はそう言うと赤く目を光らせニタリと笑った。

そして、彼女は聞くか聞かまいが疑問と確信をもった表情をしながら深い深い眠りに落ちた。


◇◆◇


「全く、見破るとは流石ですな。バレない様にしっかり変装したつもりだったのだけれど・・・スオン様は勘が鋭い」


魔女はブツブツ独り言を言いながら、スオンを抱き上げ、目の前のベッドに寝かせた。


「その勘が上手くあちらの世界で役に立てばいいですが」


そういうと、被っていたフードを外しマントを脱ぎ手に持った。


そこにあったのは、スオンが嫌悪する存在・・・道化師。


「私の役目はここでおしまいです。それでは、いい夢を。」


そう言うと、その部屋を出ていき、スオンが一段一段噛み締めながら登った階段を意気揚々と降りていった。


「せいぜい頑張って白雪姫を助けちゃって下さいよー。私達の為にも、しっかり仕事をしてくれないと困りますので」


それは今まで誰も見たことの無い、道化師の心からの笑顔であった。


◇◆◇


「ここは・・・どこ?」


ふと、目を覚ましたそこは花畑が綺麗な何処かの草原だった。大木の下で居眠りでもしていたのだろうか、手には開いた状態で落ちている分厚い茶色の本。


「あれ、私なんでこんな所に?だって、私は確か・・・」


そこで、彼女は気づいた。


自分が何者なのか、なぜここにいるのか、ここが何処なのか、何もわからない事を、知らない事を、覚えていないことを。


記憶の混乱に困惑していた所を黄色いシャツに赤いベストを来たウサギが横切った。


「ウサギ・・・」


頭の中を何かがよぎった。


(私はあれを追いかけなければいけない、そんな気がする)

なぜかはわからない、本能のまま。気がついた時にはウサギを追いかけ走っていた。


花畑の中を抜け、小さな穴の中に入っていくウサギ。四つん這いになりながら、服が汚れるのも気にせずに追いかけていく。


「待って、行かないで!貴方に聞きたい事があるの!」


聞こえていないのか、ウサギはどんどん進んでいき、見えなくなってしまった。それでも追いかける事をやめない。このまま進まなくてはいけないと思ったからだ。


そして、落ちていった。


深い深い穴の底へと・・・。


◇◆◇


ここはどこ?

私はだあれ?


いよいよ不思議の国篇に入ります!

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