プロローグ
親戚のおじさんは言った。
「騎士は弱い者の味方だ。立場や力の弱い者を守る。大切な者を守る。彼らを守る為には命を懸ける。何故か分かるか?」
僕は頭を振る。
「それが騎士だからだ。大切な者達を守る盾であり、脅威を退ける剣だからだ。騎士は強くあらなければならない。じゃないと誰も守れない」
「おじさんのはなし、むずかしぃよ」
そう答えると、おじさんは声を出して笑う。
「ジーナスにはまだ難しいか。お前も大切な者が出来たら自ずと分かるだろう。」
「おじさんのたいせつな人ってだれ?」
「そうだな。家族、友人、騎士の仲間、そしてお前もな」
「えへへ。僕もおじさんのたいせつな人なんだね」
嬉しかった。
「ジーナスよ、騎士になりたいか?」
「なりたい。僕もおじさんみたいになりたい!」
おじさんはまた笑う。
「そうか! だったら剣を教えてやろう。お前に覚悟があるのなら」
「ある!」
即答した。
元々は騎士になるのが夢だったが、おじさんの話を聞いてその想いがより強くなった。
「分かった」
次の日からおじさんの元で訓練が始まった。
訓練といってもまずは体力作りからだ。まだ5歳だから力や体力がついていない時に剣を振ると危ないらしい。
◆◆◆◆◆ ◆◆◆◆◆ ◆◆◆◆◆
おじさんの元で訓練を始めて2年が経った。
日課として10キロを走り、終わると休む暇なく木でできた剣を1000回素振りし、終わると休む暇なく腕立て200回、腹筋200回、反復横とび200回をし、休む暇なくまた走る。これを3セットを繰り返し、やっと朝食となる。
そしてある程度力も体力もついてきた頃、おじさんが一本の剣を持ってきた。
木でできた剣ではなく、刃の付いたちゃんとした剣だ。
「この2年間、弱音を吐かずよく耐えたな。今日からは剣を教える」
「はい、お願いします」
おじさんは剣を手渡してきた。
鉄でできた剣なので、ずっしりとした重さかと思ったが軽い。
「軽いですね」
「鉄剣なのだが、これを軽いと感じたのなら、体力作りも無駄ではなかったな」
おじさんは剣を取ると自分の正面で構える。
剣を降り下ろす、突く、突き上げる、袈裟切り、薙ぎ払い、最後に再び正面に剣を構えた。
流れるような一連の動作に目が離せなかった。
「これが王国剣術の基礎だ。すまないが俺には基礎しか教える事ができない。まぁ何事も基礎が一番大事だ。今俺が見せた動きを反復し体に染み込ませろ」
「わかりました」
剣を受け取りやってみる。
「うっ、以外と難しい……」
重くは感じないが、慣れない剣に振り回される。
「俺はこれから遠征に出る。激戦地に行くことになっている。もしかしたら生きて帰れないかもしれない」
「おじさん……」
おじさんは声を出して笑う。
2年前のあの日、騎士とはどういう存在か教えてくれた時と同じ笑い方だ。
「心配するな。すぐに帰ってくる」
おじさんは頭を撫でると去っていった。それがおじさんを見た最後だった。
三日後遠征に出発し、その一週間後に戦死した、という報せを知った。
おじさんは自分の死期を予期していたのか?
戦地から帰ってきたおじさんの亡骸を見て、おじさんに誓う。
「大切な人達を守る為に強くなります。見守っていて下さい」
おじさんがいたから夢で終わらずに済んだ。
全てはおじさんのおかげだ。
おじさんの分まで強くなる。騎士になって、大切な人達を守れるくらいになる。
そう誓った。
久しぶりの投稿ですので、おかしな所があるかもしれませんが、読んでくれると嬉しいです。