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とある剣士の数奇な転生  作者: 告心
孤島編
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3/22

病気

 それは何となく主食が血という吸血鬼生活が嫌で、どうにかして他の食べ物を手に入れたいと必死に頑張ってゴロゴロと移動しながら、捨てられて一か月目の朝におこった出来事である。


 もうその頃になると、首も座っているようで寝返りやら這いずり位の移動は可能になり、見通しのいい砂利の上に寝転んでいた状態から、こそっと隠れるようにして藪とか木の下までゴロゴロとちょっとずつ移動している。


 見つかりにくく自分の身を隠したことで、序盤の魔物やら動物に狙われまくった状態からは多少の余裕もでき、今は自分の剣気と肉体の能力開発を考えながら、生き残るために取り敢えずどうやって栄養を取るかを考えていた。


 朝から創志が前日に殺して餌にしといた死肉を漁りに来た鳥を、丁度顔の横に落ちてくるように剣気で狩り、時間が経ってから酸化した血液よりもまだまともな味のする新鮮な血液を啜っては、ゴロンと仰向けになりながら。


 今の主食というか、食べているものは血液である。血液というのは、やはり体に栄養を運ぶという役目を賄うだけあって、少なくとも死なない程度には体の状態を維持し、成長させる能力もあるらしい。移動もできない、食べられそうな食料もないというないないづくしの状況で、衛生面とかまで考えた完全な食料を手に入れようと思っていたわけでもないのだが、魔物の血は何故か体に上手く適合したようで、大分調子がいい。詳しい原因も気になるが、どうせ今必要な事でもないので、ファンタジーだからという理由で納得しておこう。


 今まで襲ってきたのは、狼二匹、狐が三匹、タヌキ三匹、鳥と野犬は多すぎて既に数を覚えていない。大体見た目が似ているので便宜上そう読んではいるものの、今告げた襲ってきたうちの約半数は魔力を体内に持っていた。そして残りの輩は干渉種の特徴を持った、周囲の魔力を引きずった攻撃の範囲拡張と速度上昇など攻撃を使ってきた。


 ここで一つ問題が発生する。


 こちらを赤ん坊だと油断して襲ってくる動物たちに関しては何の問題もなかった。だがしかし、それ以外、例えば創志の周りに落ちているかつて動物だった遺骸を見て、警戒心全快で攻撃をぶっ放してくる動物たちには正直言って面倒とか言ってられないほどの命の危険を感じた。一度飛んできた氷の槍の大群を剣気で逸らして反撃するときなど、腕とか足に擦ってから本当に生きた心地がしなかった。


 冗談ではない。


 剣気という武器があるとかないとか、弱点をどうにかして失くしておくという次元の問題でもない。こっちはまともに動けない状態で攻撃もままならない状態の戦闘など、戦術的にもあり得ないし戦略的にもどうにかしてフォローをいれて改善する必要がある。目に見える弱点を露出させたままに戦闘を繰り返すなど生きたい生きたくない以前の問題で、そんな状態で連戦を繰り返すなど「お前は生きることを舐めてんのか」と英雄に説教されて拳骨を落とされた記憶が蘇る。


 人知れず裏の麻薬密売組織を壊滅させるために、剣闘大会に出場する裏側で暗戦と決闘を繰り返した所為で疲れ果てて、どうせ攻撃も当たらないんだからとほとんど防具なしで戦いに出たのは苦い記憶だ。


(最低限の実力と罠と囮と逃げるための道具を作っておこうか……力だけでは解決できないことばっかりだからな。人間なんだし知恵を使わないと)


 生前はむしろ力にものを言わせて、押してダメなら押しまくれとかいう強引な人間が漏らしたと思えないような思考回路だが、彼だってやる時はやるのだ。


 むしろ無力な赤ん坊にならないと、ごり押しを止めないという何ともまあ怠惰な思考回路が垣間見える点であったがその点については黙殺していた。


★★★★★ 


 そうして出来るだけ見つかりにくく迎撃しやすい藪の下をしばらくの定住場所に決め、考えもまとまったので取り敢えず休むかと仰向けになっていたときのことだ。


 日光に照らされる中、野犬やら野狐の血の匂いを餌にして、新しい生き物を寄せる今の生活が「何か餌を見せてから獲物を狩る食虫動物みたいだ」と妙な感想を創志が得て「なら光合成でもしようかな」なんてアホなことを考えて日向ぼっこしている最中に、彼は急に体に異変を感じた。


(……ん? 痛い?)


 チクリ、とした針で刺されたような微弱な痛みが、腹部の辺り、十二指腸がある所らへんで走ったのだ。

 最初は微弱な尖ったような痛みは、だんだんと水が地面に染み入るように腹部全体に広がっていく。


(……っつかっは!?)


「うぎゃあぁぁぁぁぁぁぁあ!!」


 耳に届く甲高い泣き声は、どうやら自分の口から出ているらしいとどこか遠い現実にあるように聞こえた。

 痛みの質としては、なんというのかけがをした時の擦りむいた感じでもなく、下痢などの症状をもたらす時のような痛みでもない、包丁にでも刺されて熱さを感じるような痛みだ。


 畜生! 何か悪い物でも食べたか? とここ最近の食生活を思い出す。


 朝―――襲ってきた鳥の血液

 昼―――ちょっとばかし拾った多分食べられる木の実の中身 ココナッツミルク風

 夜―――木の実が見つからず、やっぱり何かの魔物の血


 なんか赤ん坊が食べてはいけないモノばかりな気がする。

 そして痛みの理由は自業自得で何となく納得したのだが、理由を知れば痛みが治まるというわけでもない。


(痛い痛い痛い痛い~っつ! 原因は何だ!? 消化不良か? 寄生虫か?)


 消化不良は……ないだろう。多分だが。一応捨てられてから一か月近く経過しているのだから、消化不良だったらその前に症状が出てもおかしくは無いはずだ。となると時点で寄生虫、最悪の予想では腹痛を伴うウイルス性の病気にかかったというところだろうか。


 痛みにいうことを聞かない体が泣き声を上げながら騒いでいることで、周りの魔物が集まってくる危険も上がっている。この強い痛みのせいで、どうやら日頃は意識下に置いておけた体もその制御を離れてしまったらしい。泣き止もうと思っても、雪玉が坂を転がるように、より大きな声で泣き叫ぶだけで終わってしまう。


 不味い。どうしようもなく不味い。これで確実に死んでしまう。理屈ではなく本能に近い何かが、自分に死が近いことを伝え、自分もそれに確証を持ってしまっている。


 せめてどうにかして対処をしておかないといけない。最低限の対処をしなくては、生き残ることすらままならない。


 ここ最近の放浪で見かけた生前の知識を利用すれば薬草らしきもののある位置までゴロゴロと転がって移動。そこに生えていた数枚の葉を食いちぎる。


 と、同時に周りの魔力を自分の精神で引き摺ることで腹部の臓器全てと拳を”硬質化” 可能性の萌芽、そうなったかもしれない未来を掴める可能性の前の可能性である魔力により、自分の拳と臓器に強い意思を込め、その二つを真正面からぶつけてやる。


 それは音として表現すれば、グオン、というような鈍い音をあたりに響かせ、創志の腹部にとんでもないダメージを浸透させる。


 体が反射的に呼吸を止め、同時に泣き声も止む。魔物を寄せないように泣き止ませるためと寄生虫がいるのだったら英雄直伝打撃浸透のこの攻撃でせめて殺して置けたらという二つの目的をもってやったのだが、どっちかというと殴られる系の痛みの方が慣れているからそっちで上書きした方がましというのが最も正しいかもしれない。どれにしても、赤ん坊にとっては負担が大きすぎる一撃だったと少々自分で反省する。


 今の自爆に体力を奪われ、地面に大の字になって寝転ぶ。ウイルスであれば、多分この薬草であっているはずだし、寄生虫であれば今の攻撃でどうにかできたかもしれない。一応昔冒険者の誰かがやっていたという実体験に基づいて行ったわけだが、自分は武道家ではなく剣士なので打撃も身体強化も得意ではない。もしかしたら殺しきれてないことを考えて、次なる手を頭に巡らせる。

 

 必死であった。別に死にたいわけでは無い、なのでできる限りのことをして生き延びる。そんな心情であった彼には未だに必死さという点においては、少々何かが足らなかったのかもしれない。もしかしたら、初日に偶然ながらも剣気が使えるという事実が発覚したことが、彼に少しばかり慢心を抱かせる原因になっていたのだろう。それがこの危機を誘発した要因の一つ。もしも油断なく毎日を過ごしていたのなら、せめて予防効果のある薬草くらい探していただろう。


 薬草学を齧っておいてよかった。ここで全く何も知らないとなれば、今一時の思考するための落ち着きも得られなかっただろう。


 もっと油断しない様にしなくてはいけない。せめて前世の仲間に会いに行かないと面目も立たない。特に勇者など、事情付きとは言え自分を殺させたこともあるのだ。最悪、夢枕にでも立っておかないとあの勇者のことだから思いつめて今頃は何やってるかも予想がつかない。


 そしてあの幼女ロリ神をぶん殴っておく。男女平等だ。俺を転生させるときに穴に落としたことは生涯恨んでやる。


 そんな誓いを立てながら、彼は疲労故に意識を手放した。


★★★★★

細かいとこはご都合主義で押し通します。育児はやったことないので知りませんが、転生者がまともな肉体をしてるわけもありません。その内理由も紹介します。


ここら辺から後はサクサク行きたいです。早めに主人公の年齢を上げようかと。

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