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alpha  作者: 小出 まいや
8/12

第8話

封筒を受け取ってみると、すでに開封された形跡がある。


「ああ!僕あてのものを勝手に開けないで下さいよ!」


「重要と書いてあったから早く確認した方が良かっただろうし


 勉強の邪魔をしては悪いと思ったから、代わりに確認してやっただけじゃないか」

悪びれもせずルヌーが言った。


「そんなの、勝手に開封していい理由になりませんよ!」


 そう言っても、経験上無駄だとわかっている。


 この人は本気でそう思ってやっているのだ。


「もう……今度からは絶対にしないで下さいね」


「文句はいいから中を見てみろ」


 やはり、フユキの抗議なんて聞いていない様子だった。

 ルヌーと議論をしようとすると、のらりくらりとかわされてしまうので話し合いが進まない。

 天然なのか意図的なのか、イマイチ掴みきれないが、ルヌーのペースに乗せられないように気をつけないと振り回されてしまう。

 

 封筒の中に入っている、薄い紙を取り出した。

 航空宇宙局のコーポレートカラーであるダークブルーの紙を開くと、『航空宇宙局附属学校 上級クラスへの進級許可について』という文字が目に入った。

 

 フユキは中級クラス(高等部)で優秀な成績を収めたため、進級試験免除で上級クラス(大学部)への進級が決定したという通知だった。

 しかも、フユキの希望するパイロット養成コースへの進級が認められた。

 2週間以内に進級の手続きを完了させないとこの特典は失効される。進級試験を受けるか退学するかの選択をしなくてはならない、という内容だった。


「やった!」


 通知書を握りしめて声をあげた。

 試験免除という事よりも、パイロット養成コースに進めることが確定したことの喜びが大きかった。


「すっごーい。フユキって頭いいのね」


 ジュンが尊敬の眼差しでフユキを見つめた。


「パイロットになるために僕は月都市に来たんだからね。養成コースに入るのが第一の目標達成ってとこかな」


 この通知を受け取るまでは不安だったが

 中級クラスでは常に成績上位をキープしていたので推薦でも進級は狙えると思っていた。

 こうして手にすると今までの努力が報われたと実感できて嬉しい。

 嬉しいのは変わりないのだが……問題がひとつあった。


「明日にでもその手続きを完了させたら、1ヶ月半は暇だよな」

 

 と、ルヌーがにこにこ笑いながら話しかけけてきた。

 そう。

 これがフユキの大きな問題だった。

 進級試験が免除され、しばらくゆったりして時間を過ごせる余裕なんてきっとない。


「何をそんなに暗い顔をしている」

 

 ルヌーは、フユキの頭を小突いた。


「さっさと手続き終わらせてくるんだぞ。リストを渡しておくから、外出ついでに買い物を頼む」


 ほら、始まった。

 フユキは心の中でつぶやいた。

 出会った当初は『あの有名な音楽家であるルヌー・グレーシャムとお近づきになれるなんて、大ラッキー!』と舞い上がっていたが

 フユキがピアノのコンクールで受賞した経験があると知られて以来、何かとこき使われる羽目になっているのだ。

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