第2話~魔法学院入学~
お久しぶりです。久々の更新です。
アルセ魔法学院。
この世界において最も優れた学び舎として名高い。世界最大級の規模を誇りながらも、生徒1人1人まで目の行き届いたその環境は保護者にも生徒にも人気が高い。また優秀な魔法使いや騎士、SSS級の冒険者などのほとんどが、この学院の卒業生である。そのため各国の貴族の子供なども多く在籍している。また施設も異常な程に充実しており、これも人気の理由の1つだ。
そしてこの学院最大の特徴は、敷地内が治外法権なことだ。これにより、貴族のボンボンだろうが何だろうが、教師たちは遠慮なく叱り飛ばせるのだ。
特に何事もなく入学式を終え、クラス分けに移る。
(どうやって決めんのかな?)
『さぁ?やっぱり水晶玉とか使うんじゃないですか?』
(んなテンプレな。いやなんせファンタジーな世界だしな。十分あり得るか)
サトシがルナとそうやって暇を潰していると、教師が直径1mはありそうな水晶玉を引き連れて入ってきた。
「え~これより、各自順番にこの水晶玉に手を乗せてもらいます。すると、入るべきクラスが浮かびあがってくるので、地図を貰って自分の教室へ行きなさい」
『ホントに水晶玉が出てきましたね』
(か~本っ当にファンタジーだな~)
サトシが関心していると、右袖をひっぱる感覚。入学式直後なんて状況でそんな馴れ馴れしいことしてくる奴は1人しかいない。
誰あろう、レフィリア・アレイシェンその人である。
盗賊の1件いらいすっかりサトシに懐いてしまったレフィリア。もっとも相変わらず無口無表情ではあったが、その行動の節々にサトシを気に入っているとしか思えない態度が見え隠れしている。
「……行こう?」
「はいはい。言われんでも一緒に行くって」
列に並び1人づつ水晶に手をかざす。そのたんびに水晶にはS~Gまでのいづれかの文字(実際にはアルファベットではなのだが、サトシにはそう見えている)が浮かびあがる。
「次の人~」
(さぁどこになるでしょーか)
浮かびあがってきたのはS。
『おぉ~エリートですね!まぁ当然っちゃ当然な気もしますけど』
続くレフィリアもS。
「へ~レフィリア優秀だったのか」
「……水晶は資質を測るもの。今現在は関係ない」
「あ、そうなの?つまり結局は本人のやる気次第ってこと?」
コクンと頷くレフィリア。そのまま当然のようにサトシの腕をとって、Sクラスの教室に向かう。
(このまま教室に入るつもりなのか……?)
『十中八九そうだと思いますよ?』
(嫌な予感しかしないんだが?主に平穏な学園生活が無くなる的な意味で)
『諦めって大切だと思いますよ?』
……orz
程なくして教室に入ると当然注目の的になるサトシとレフィリア。
レフィリア・アレイシェンはハッキリ言って美少女だ。
澄んだ空色の髪にサファイアブルーの瞳。無表情なこともあってか、そこには完成された人形のような美しさがあった。
そんな美少女と腕を組んでいるサトシに向けられる視線の種類は当然限られてくる。
(アレじゃね?俺、明日辺りには呪殺されてんじゃねーの?もう嫉妬とかいうレベルじゃねーぞっ!?)
『神が呪殺なんてされるわけないでしょう?まぁこの年齢でこの殺気はすごいと思いますケド』
教室は大学の講義室のように階段状になっており、軽く弧を描いている。
2人は教壇の座席表にを覗き込む。
「……隣」
レフィリアが若干(レフィリアにしてはかなり)嬉しそうに言った。
(つかさっきクラス決まったのに座席表があるとか。どういうことなの?)
『おそらくですが、あの水晶とこの座席表はリンクしているのでしょう。そして決まった者から順に機械的に座席を振り分けているんだと思います。だから2人は立て続けに水晶に触れましたから隣になたんだと思いますよ?』
(おk把握。つか無駄にハイテクだなおい)
結局野郎連中の嫉妬(または殺意)の視線を受けつつも座席に着き、HRが始まるのをひたすら待つことにした。
しばらくして担任らしき教師が入ってきて、HRが始まる。
「担任のケリナだ。面倒なので、今から渡す資料を各自勝手に読め。名前呼ばれた奴から順に前に来い。スクールカードを渡す。スクールカードはコテージの鍵、財布、身分証明になるからなくすなよ。再発行は有料だ。ちなみに手続きが面倒だから失くした奴は絞める。んじゃぁそっちの端から~……」
(なんつーテキトーな先生だ。まぁHRとか短いのは単純にありがたいけど)
『綺麗な女性なのに随分男前な方ですねぇ』
スクールカードを貰ったサトシとレフィリアは寮に向かった。
この学院寮は、寮館があるわけではなく、学院の敷地内に居住区画があり、そこにとんでもない数のコテージが建っている。
1軒につき2人で割り振られており、1階はリビング、ダイニング、キッチン、風呂、トイレ。2階は10畳の部屋が2つとトイレ1つと、学生が住むには贅沢なコテージだ。また居住区画内には、バカデカイ商店街があり、自炊用の食材を始めとしたあらゆる物がここで揃えられる。
「俺はB-S-1だな。レフィリアは?」
「……同じ」
「そっか~一緒かぁ~……ってええええぇぇぇぇえええぇぇぇぇえええええ!?!?!?!?!?!?」
『ふむ、隣のコテージに異性が入ることはありますが、男女で同じコテージというのはないはずなのですが……』
「冷静になってる場合じゃないでしょう?」
『レフィリアさんは嬉しそうですけど?』
サトシはバッ!とレフィリアを振り返る。そこには心持いつもよりも顔を桜色に染めて微笑んでいるレフィリアがいた。
(レフィリアさぁぁぁぁぁぁん!!!どんだけ喜んでんだよ!?こんなにハッキリ表情が変わってるとこ初めて見たぞ!!しかも可愛い……。って言ってる場合じゃねーよ!!)
「さすがにこれはダメでしょ。担任に言わないと。きっと何かの間違いだよ」
サトシがそう言った途端、レフィリアが目に見えて落ち込んだ。
「…………サトシは、イヤ?」
(ぐっ…………)
『もう別にいいんじゃないですか?それにあの担任に言ってもメンドクサイの一言で結局変わらないと思いますよ?』
(いやしかしだな……)
サトシが黙っているのを見て目に涙が溜まり始めるレフィリア。
「…………っだぁぁぁぁぁ!!!分かったよ降参だよ!!このままでいいから!だから泣くな」
『結局折れましたね』
(うっさい!)
かくしてサトシとレフィリアは同じ屋根の下で生活することになった。
「つか広いなおい。レフィリアは食堂派?自炊派?」
「……自炊」
「おk。俺も昼飯はともかく朝と夜くらいは自炊した方がいいと思ってるかちょうどいいや」
その日は片付けをしたりした後、翌日に備えて早々に寝た。
―――☆―――☆―――☆―――☆―――
朝日がカーテンの隙間から顔を照らして、サトシは意識を浮上させる。
(う~ん……もう朝か……ん?何か左腕が動か……っ!?)
体を起こそうとして左腕が動かないことに気づいたサトシはそちらを見て固まった。
それは器用に自身の両腕をサトシの左腕に絡め、頭を肩に乗せて幸せそうな寝息をたてている。
掛け布団からはみ出た肩はむき出しになっており、何も着ていないように見える。
(どう見てもレフィリアさんです本当にありがとうございました)
サトシは混乱する頭を必死に動かして何とかレフィリアを起こさないように腕を引き抜こうとするも、予想以上にがっちりとホールドされていてちっとも抜ける気配がない。
それよりも腕を動かすたんびに二の腕あたりに感じる大きくはないものの、ちゃんと膨らんだ柔らかな双丘の感触が、さらにサトシから思考能力を奪っていく。
「ん……んぅううう……」
「!!!」
サトシが動いたことで寝心地が悪くなったらしいレフィリアが目を覚ました。そのままボーっとした表情でサトシを見つめている。
サトシは自分が悪いわけでもないのにだらだらと冷や汗を流しながらも一先ずは挨拶をする。
「お、うお、おはよう」
レフィリアは未だボーっとしつつもコクンと頷いて返した。
「……おはよう」
「!?」
頷いた拍子にレフィリアに掛かっていた掛け布団が落ちる。サトシの目に飛び込んで来たのは真っ白な雪のような肌とピンク色の存在を主張して止まない点が2つ。ついでに衣類をなに1つ身につけていないことが確認された。
一瞬で頭がフリーズするも反射的に顔を逸らす。
「……?」
そんなサトシの行動が不思議だったのかレフィリアは疑問顔を浮かべる。
「お、おま、な、なんで何も着てないんだ?」
「……寝る時は、何も着ない」
「そ、そうか……。あ~えっとぉ……あ、何でここに?」
寝る時は何も着ない派らしいレフィリアはあえてサトシの質問に質問で返す。
「……ダメ?」
「――――――――――――――――っ!!!」
レフィリアのその仕草のあまりの可愛らしさにサトシは完全に思考を奪われた。
「だ……だめじゃないです、はい」
レフィリアは嬉しそうに笑うとサトシに寄りかかる。本人的には別に下心などなく、単に思い人と一緒に寝たいだけなのだが、たまたまレフィリアが服を着ない派なせいでサトシの理性は限界ギリギリを保つはめになっている。
(落ち着けぇ。レフィリアは別にそう意味で言ってるんじゃないんだ。ここで暴走したらこの娘を傷つけてしまう。それだけはダメだ。煩悩退散、心頭滅却すれば火もまた涼し)
やがて満足したらしいレフィリアはサトシから離れて服を着に自室へ向かった。
「……っはぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」
『すさまじい精神力でしたね』
「何かこう、煩悩を一時的にでも忘れる装備を作ろうかな……」
『なんという概念魔法の無駄使い』
「いや今日は何とか耐えたけど、これから毎日耐えられるかどうかは、正直自信ないッス」
『まぁとにかく今は着替えて朝食です。今日から授業なんですからね?』
「分かってるよ……」
サトシの受難は続く。
最後まで読んで頂きありがとうございます。
テンポががががが。
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