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ぷろろーぐ~人間じゃないとか初耳なんだが?~

初めまして。

本作は2作目になりますが、書き手としてはまだまだな作者です。

そんな稚拙な文章ですが、よろしくお願いします。

「実はオレ神様なんだわ」


神野(じんの) (さとし)(18歳♂)はその夜、父親の神野(じんの) (おさむ)(52歳♂)に「大事な話しがある」と書斎に呼ばれたはずだった。


「んで、お前は次期神様なワケ。俺の後継な。あっちなみに聡美(聡の母)は女神だったりするから」


普段はおちゃらけている(しかいない。とも言う)父親が、いつになく真剣な表情だったので、何事かと身構えたほどだ。


「でだ、お前には『神様修行』ってことで、ちょっくら異世界回って経験積んで来て欲しいんだわ」


ここへ来てフリーズ状態にあった聡の思考回路はようやく活動を再開する。


「おーけい。よく分かったぜ親父」


聡は俯いていて、治からは表情がよく見えない。


「ん?分かってくれたのか?」


オサムハ フシギソウナ カオヲ シテイル


「あぁ。よっく分かったぜ。とりま、車に乗れ」


「車?なんで?」


聡はゆっくりと顔を上げる。そこには可哀そうなものを見る視線と、諦めの表情が浮かんでいた。


「大丈夫、大丈夫だぜ親父。俺がちゃんと病院まで送ってやるから」


「え?ちょ、聡?」


「大丈夫だって。な?ちゃんと診てもらえばまだ間に会うから」


「いやいや、診るってあんた……」


「さぁ行こう。精神科へ」


聡は諭すように自らの父親に話しかける。

その目には憐みの視線が多分に含まれていた。


「オ……」


「お?」


「オレの精神はいたって健康じゃボケェェェェェエエエェェエェエエェェェェェエエエエェェェ!!!!!」


治は「ウガーッ!!」と立ち上がりつつ、ちゃぶ台返しのちゃぶ台よろしく、幅1m強のワークデスク(!?)をひっくり返した。


ズドンッ!!!ガラガラガッシャーン!!!


ごく普通の二階建て一軒家の神野邸が揺れた。


(あっぶねぇ……。うん、今のは震度3くらいあったな)


ギリギリのタイミングで壁際に避難することに成功した聡が呑気にそんなことを考えていると、1階から階段を駆け上がってくる足音が聞こえてきた。


(きたきた)


ドアどころか書斎の壁ごと粉砕するんじゃないかという勢いでドアが開く。(ドアノブが吹き飛んだ)


疲れたのか両手を床についてゼェゼェ言っていた治がビクンッ!!と跳ねる。


「おとーーーーーーさーーーーーーーんっっっ!!!!!いったいぬぅわぁぁぁぁぁにをやってんのよぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!?!?!?!?!?!?」


あまりの怒りに言葉がスロウで聞こえた。


「ちゃ……ちゃぶ台返し等を少々……」


ただでさえ小さい声が愛娘の怒りのオーラでさらに尻すぼみしていく。


「こ!れ!のっ!どこがちゃぶ台なのよっ!?」


盛大にブチキレているのは聡の妹の美穗(みほ)(16歳♀)である。


いつの間にか正座になって娘の説教を受ける治。父親の威厳なんてものは欠片も見当たらない。


「毎度毎度こんなことしてたら家具がいくつあっても足りないでしょっ!?」


「いや、でもほら、今回は机だけだし……」


被害の少なさを訴える治だが


「いや、そっちの窓も割れてるぞ?」


ここで爆弾を投下する聡。


「ちょ!?」


「…………(ブチィッ!!)」


美穗の背後に浮かんで見える「ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ」という文字がいよいよ物理現象に変換されそうになったところで、新たな人物が書斎に入ってきた。


「うわぁ~すんごいことになってるね?」


聡と美穗の母であり、この家で唯一の治の味方。神野(じんの) 聡美(さとみ)(?歳♀)その人である。


「うおおおおおおおっ!!!聡美ぃぃぃいいぃぃいぃぃぃぃいいいい!!!」


「よしよし、怖かったわねぇ」


『妻にしがみつくおっさん』と『おっさんをあやす2児の母』の図である。


「でたよバカップル」


「もうっ!2人共いい歳してこっちが恥ずかしいからやめてっていつも言ってるでしょーが!」


子供達の発言もなんのその。最愛の妻にチクる夫。


「聡がオレを精神病院に連れて行こうとするんだ……」


「あらあら。ダメよ聡?お父さんいじめちゃ」


「は?どゆこと?」


見当違いな説得にでる聡美と頭に「?」を浮かべる美穗。


「よく聞け美穗。親父は突然「実はオレ神様なんだわ」とか言い出したんだよ」


「はい?」


「あんまりにも真剣な顔で言うもんだから、つい(親父の)正気を疑っちまってな。んで病院に連れて行こうとしたんだが……」


「抵抗されたと」


「あぁ」


話しを聞いた美穗の治を見る視線に憐みが色濃く浮かぶ。


「ばっ!?お前ら父親をなんだと思ってんだ!?ホントなんだぞ!!」


「あぁもうダメね。手遅れみたい」


美穗が諦めの態勢に入った。しかしここで治の味方がフォローにでる。


「2人ともそんなこと言っちゃダメよ?治さんも治さんで、ちゃんと証拠を見せてあげないと」


「おおっ!!それだ!それだっ!!SO☆RE☆DA!!!いよっしゃあああ!!てめぇら見てやがれ、所謂『神様の奇跡』ってやつを見せてやるぜぃ!!!」


聡と美穗は部屋の片づけを始めていた。2人にとって両親のバカップル全開な奇行はいつものことであり、今更反応なんてしないのであった。


「聞けよ!!今回はガチなんだよ!!いやマジでホント聞いてくださいお願いします」


とうとう土下座になる自称神。


聡と美穗は顔を見合わせると深~~~い溜息をついた。これ以上放置すると逆にメンドくさくなるだろうという、見解の一致だった。


「まだ神様だ!って言うつもり?」


「神様ならこの部屋『神様の奇跡』とやらで片付けてみろよ」


美穗はイライラと、聡はバカにしつつそれぞれ言った。


すると治はガバッ!と顔を上げて、表情を輝かせて言った。


「ホントか!?ホントに信じるか!?」


「あ~はいはい信じるからさっさとしろ」


ニヤリと「言質とったぜ」と言いながら立ちあがった治は両腕を広げて言った。


「よ~く見てろよ?今からてめぇらが目撃するのは『神様の奇跡』だぜ」


治がそう言った直後、聡と美穗は空気がざわつくのを感じた。


直後、治が手を叩いた。


パァン!


「「ッ!?」」


すると床に散らばった本やら紙の束やらがみるみる整頓され、本は本棚に紙束は元の位置に戻ったワークデスクの上に、割れたガラスさえも元の場所に戻ると、テープを逆再生してるかの様に破片同士がくっつき、(ひび)が消え1枚のガラスに戻った。


この間約20秒である。


「………………」


「ウソ……でしょ……?」


聡は呆然とし、美穗がかろうじて、声を発する。聡美はニコニコしている。


「どうだ?驚いたか?」


「いや……え?マジだったの?」


「おうよ!ガチっつったろ?」


聡の問いに胸を張る治。


「待て、待て待て待て。んじゃ何か?俺が親父の後継で次期神様ってのもガチ?」


「おふこーすだぜ」


「『神様修行』とやらで異世界に行けってのも?」


「いえーす!!」


聡は頭を抱えてしゃがみ込んだ。


(落ち着け、落ち着くんだ俺。俺の名前は神野聡。今18歳。先週高校を卒業したどこにでもいるごく普通の民間人A…………いや待てよ?そう言えば俺って大学受験してなくね?「別に受験しなくていーよー」って言われたからスルーしてたけどこれ普通じゃなくね?てことは初めから仕組まれてた?ガチで神様になれってこと?リアル異世界に行くしかない系?つか積んでね?大学行くにしても浪人だろ?そんな根性ねーよ?あぁもうこれは神様が俺に神様になれって言ってるってことでおk?いや、親父が神様らしいからマジで神様に言われたってことか?しかも口頭で……)


治と聡美はニコニコしながら聡が状況を整理し終わるのを待っている。美穗は心配そうにしている。


やがてブツブツ言っていた聡はゆっくりと立ち上がり、治を見据えて言った。


「本当なんだな?」


聡の視線を正面から受け止めた治は、今までの雰囲気から一転、気迫すら感じられるほどのすごみを持って一言……


「本当だ」


聡はそのまま10秒ほど治を見つめていたが、フッと力を抜いて天井を仰いだ。


「あぁ~…………行くしかねぇか、異世界」


「フフッ決まりね」


「お兄ちゃん……」


聡美は控えめに微笑んで。美穗は複雑そうな表情を浮かべた。


「よし。んじゃまずは簡単な説明をしてやろう」


「説明?」


「おう。修業っつってもちゃんと目的がある。お前が行く世界は全部で6つだ」


「は?異世界ってそんなに沢山あんの?」


「あぁ。んで、各世界には神殿ってーのがある。その世界のどこに神殿が出現するかわ俺にも分からん。ランダムだからな。んで、その神殿の最奥に『神力の欠片』がある。つかオレがこれから置く」


「これから置くのかよ……。んで?欠片ってことはそれ全部集めろってこと?」


「そう。各世界に神殿は1つずつ。神殿1つにつき欠片1つ。つまり『神力の欠片』を6つ集められたら修業完了だ」


「なんだ、結構簡単そうじゃん?」


「バカ言っちゃいけねぇよ。神殿っつっても中はダンジョンみたいになってんのさ。今のてめぇじゃ入った瞬間にあの世逝きだな」


「ちょ!んじゃどうすんだよ?」


「言ったろ?修行(・・)だって。最初の世界でお前には魔法学院に入ってもらう。んでそこで戦い方を覚えろ」


「ちょっと待て!!期間は?」


「制限はねーぞ?」


「そうじゃねーよ!どんくらいかかるのか?って聞いてんだよ!」


「さぁ?そりゃお前次第だぜ?ちなみに俺の時は10年くらいかかった」


「ッ!?……冗談だろ?」


「いんや。まぁそんなもんさ。真面目に勉強すりゃ最強なんざ余裕だぜ?なんせ『神』だからな。実際魔法使えるってのは気になるだろ?」


「確かになるけどさ……。んで?ある程度強くなったら神殿探して攻略しろって?」


「そゆこと。だが『神力の欠片』はそのままじゃ回収できねぇ。そこで登場するのがこいつだ!!」


治はポケットからシンプルなデザインの銀色の輪を取り出した。


「左手出してみ」


「?」


聡は言われたまま左手を差し出す。


輪が手首に触れると。途端に一瞬だけ光った。思わず閉じた目を開けると聡の左腕には銀の輪がブレスレットとして納まっていた。


「うおっ!?なんぞこれ。つかとれねーじゃん」


「とんな。まぁとれないけど。そいつは『天空の腕輪』といって、神殿で見つけた『神力の欠片』を回収する道具なんだ。見つけた欠片にそいつをかざせば、欠片はそいつに吸収される」


「へ~便利だな」


「6つ全部の欠片が集まったらこの世界へ帰ってくるためのゲートが開く仕組みだ」


「10年はウチに帰れないってわけね」


「これで修行の説明は終わり。んでこっちは餞別だ」


そう言って治がどこからともなく取り出したのは、真っ白な鞘に入ったシンプルな、それでいて高級感漂う一振りの長剣(ロングソード)。それとラノベくらいの厚さの一冊の本。


「こっちの剣は……まぁ普通に剣だ。名前はお前がつけてやれ。んでそっちの本は神にのみ使える『概念魔法』の教本だ。まぁぶっちゃけ神だと最初の取っ掛りさえ掴めればあとは本能で使えるようになる。現状お前が使える唯一の魔法だ。まぁある意味最強の魔法でもあるが」


聡は長剣と本を受け取る。すると頭の中に声が響いてきた。


『初めまして。我が主よ』


「……?誰だ?」


聡がキョロキョロすると治が苦笑しながら長剣を指差した。


「そっちそっち」


聡は手元の長剣を見下ろした。


「?もしかしてお前が喋ってる?」


『そうです我が主よ。これからよろしく』


「あ、あぁよろしく。あ、名前付けないとなんだよな」


聡は長剣を抜き放った。


「おぉ……」


「綺麗~」


長剣は曇り一つない刀身に窓から入り込んだ月の光を映してキラキラと輝いていた。


「う~ん……。月か、よしっ!お前の名前はルナにしよう」


『ルナ……ルナ……。ありがとうございます。我が主よ』


ルナは嬉しそうな響きで名前を呟いたあと礼を口(?)にする。


「どういたしまして。あぁそれと俺のことは聡でいいよ。我が主とかなんかゾワゾワする」


『分かりました。改めてよろしくお願いします。サトシ』


「おう。よろしくな。ルナ」


2人(?)の会話を見届けた治は突然大声を出した。


「おっけぇぇぇぇぇぇぇいっ!!!!準備はいいな!?そんじゃ張り切ってぇ…………」


「え?え?え?ちょ、え?なになになに???」


「行ってこぉぉぉぉおおおぉぉぉぉおぉぉおぉおぉおおぉぉぉぉいっ!!!!!!!!!!!!!」


そう言うと治は突如背後に開いたゲートのようなものに聡を勢いよく放り込んだ。


「え?ちょ、ま、あああぁぁぁあああぁぁああぁぁぁぁぁあぁぁあああぁぁあああぁああぁぁぁ!?!?!?」





こうして神野 聡は『父親に投げ込まれる』という斬新な方法で異世界入りを果たすのであった。


このあと、ブラコンな美穗が「お兄ちゃんに行ってらっしゃい言えなかった」と父親に雷を落とし、口をきいてくれなくなった娘の機嫌を取ろうと必死になる神様の姿が目撃されるようになるのは余談である。


最後まで読んで頂きありがとうございます。

最後の方がちょっと強引ですね。


ご指摘・ご感想等ありましたらよろしくお願いします。

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