いつだってあなたは一枚上手
寒い季節が好き。
「…♪」
「うん?」
大好きな人が、もっともっとあったかくなるから。
「どうした」
「ハグ」
「ん」
本を読んでても、すり寄ったら応えてくれる。集中しすぎると周り見えなくなるから適度に声をかけてほしい、っていうこの人の要望は、いつからか当たり前の行動になってて。きっと今いいところなんだろうなってわかっていても、お望みどおりに茶々を入れる。それに嫌な顔一つせず、むしろうれしそうに笑ってくれるリアスに、口角が上がって。
「…♪」
少しずつ外の気温が低くなり始めた秋の終わりごろ。今日も今日とてぎゅっと抱き着いた。
「あったかい…」
「冬が来るな」
「うん…?」
「お前の茶々の入れ方で季節を感じる」
頭を撫でながら言うリアスに、そーお?と上を向けば、紅い目と合う。大好きな目に吸い込まれそうになりながら見つめていれば、それに応えてくれるようにおでこを合わせてきて、「そう」って甘くささやく。
「夏は寄りかかってくる」
「…」
「俺の体温だと暑いだろ」
「んぅ…」
「逆に冬は俺の体温がお前にはちょうど良くて、抱き着く頻度が増える」
うれしそうに、いとおしそうに。ほっぺにキスを落としながら、言う。それを受け止めながら。
「…夏」
「うん?」
「夏も、ハグしたい?」
「俺にとってはお前の冷えた体温が心地いいしな」
ぎゅっと抱き着けば抱きしめ返してくれて、わたしのにおいを堪能するように深めに息をするのがわかった。
まねして、リアスのにおいを肺いっぱいに吸い込んで、ほっと息をつく。大好きなにおいを堪能しながら、言葉を待てば。
「ただ」
耳元で、低くて甘い声が聞こえて。ちょっとだけ肩が跳ねる。それには気づかなかったフリをして、首を小さく傾げたら。
「少し嫌そうな顔のお前も新鮮だから、体温を下げる気になれなくてな」
なんて、くすくす笑いながら意地悪を言う。
「わたしとちがっていじれるのに…」
「だから体温高くしてやったろう?」
「夏も、いじったっていい」
「言ったろ。嫌そうなのも新鮮だから下げる気にならない」
あったかくて、甘くて。溺れちゃいたいのに、いじわるするからこっちも対抗したくなる。だからむいってリアスを引きはがしてみた。
「ん?」
「冬も、ハグ少なくしよーって考えてる」
「それは困るな」
でも、やっぱり男の人だから。いくら瞬間的な力が強いって自覚してあげても、持久戦になると弱くなって。また腕の中に閉じ込められた。
「お前からのハグがなくなるのはきつい」
「いじわるしなきゃする…」
「男心だ、許せ」
なんて、ご機嫌とるみたいに甘くキスされると許したくなっちゃうけど。男心なんて言われたら、「じゃあ」なんて対価以上のことを求めちゃうのは、きっと女心。
「リアス」
「うん?」
「今日、いっぱいいっぱいハグしてくれる?」
体を離したリアスが、目をぱちぱちさせてるのに、こてんと、ずるいってわかっていながら首をかしげて。
「今日、いっぱいハグしてくれたら、体温忘れられなくなって、ハグの回数増えちゃうかも」
なんて、笑ったら。くすくす笑いながらまた腕に閉じ込められて。
「後悔するなよ?」
そう笑うあなたに。
ほんとに忘れられないくらい抱きしめられながらさんざんかわいがられて、二度とこのおねだりの仕方はしないと誓った。
『いつだってあなたは一枚上手』/クリスティア




