雨の日の約束
高校時代、初めて心を奪われた人――藤堂颯。
偶然の再会は、あの頃言えなかった気持ちを、今になって再び二人の胸に呼び覚ます。
甘く切なく、ときに熱を帯びる夜まで描いた短編BLです。
灰色の空が低く垂れ込める午後。陽は会社を出て、雨に濡れた街路樹の下を歩いていた。折りたたみ傘の骨が少し歪んでいるのを気にしながら、ふと視線を上げると、目の前に見覚えのある背中があった。
「……颯?」
思わず声を出してしまう。振り向いたその人は、高校時代に一緒に写真部で活動していた藤堂颯だった。颯も目を丸くして、少し照れくさそうに笑った。
「陽……久しぶりだな。」
雨はまだ止む気配がなく、二人は近くのカフェに駆け込む。暖かい空気とコーヒーの香りに包まれ、自然と距離が縮まる。
「……元気だった?」陽はぎこちなく尋ねる。
「うん、まあね。」颯は少しそらすように言ったが、目は陽を追っていた。高校時代、颯に片思いしていたあの頃と同じ光景が、今も心をざわつかせる。
「なんで急に…戻ってきたの?」陽が聞くと、颯は肩をすくめた。
「偶然だよ。でも……会えてよかった。」
その言葉に陽の胸がぎゅっと締め付けられる。高校時代には言えなかった感情が、今になってゆっくりと形になる。
「……あの時、ちゃんと言えなかったんだ。」颯は小さく呟く。「好きだった、って。」
陽は息を飲む。言葉にされると、ずっと胸の奥にしまっていた気持ちがあふれそうになる。
「私も……ずっと、待ってたんだ。」
雨は止んでいたが、二人は颯の部屋へと足を運んでいた。窓の外に街灯が淡く灯る中、二人は向かい合って座る。
「……触れてもいい?」颯の声は低く、陽の耳に甘く響く。
「……うん。」陽は小さく頷くと、颯はそっと陽の手を握り、指先で優しくなぞった。
やわらかく交わる手の温もりに、陽の体は自然と反応する。颯の手が肩に触れ、首筋に触れ、少しずつ距離を詰めていく。
「我慢できなかった……」颯の唇が、陽の唇に触れる。最初は軽く、次第に深く、熱を帯びていくキス。
陽も体を委ね、二人の呼吸が重なっていく。指先が髪をかき分け、背中を撫でるたびに、心臓が跳ねる。
夜の静寂と街灯の明かりに包まれ、二人はただお互いの温もりを確かめ合った。甘く、少し熱を帯びた時間――それは、二人の心と体をつなぐ大切な夜になった。
再会は偶然か、必然か――。
言葉にできなかった想いを、今だからこそ伝える二人の時間を描きました。
雨の日の出会いが、夜の甘い時間につながる、甘く切ない短編です。




