失った記憶の戻し方 3
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一時間ほどして、魔法省長官コニーリアス・ヘイマーがぼさぼさ頭とよれよれの服で現れた。
アナスタージアはまだ目覚めない。
コニーリアスは眠ったままのアナスタージアの顔を確認したあと、その額に手を当てて目を閉じた。クリフがやったように魔力を通してアナスタージアの体に残る魔法の残滓を確認しているのだろう。
クリフはごくりと喉を鳴らし、コニーリアスの判断を待つ。
やがて、コニーリアスはそっと息を吐いた。
「どうやらあなたが自分に使った魔法と同じものがかけられていますね」
忘却の魔法です、とコニーリアスが厳しい顔で言った。
「あの魔法は一部の人間にしか知られていない。さらに言えば魔力の高い人間にしか使えません。アナスタージア夫人に魔法をかけた人間を早く捕まえなければいけません。この魔法を他者に使うことは禁忌ですし、他に被害者が出ないとも限らない。すぐに陛下に奏上し、騎士団と魔法師団を動かしなさい。アナスタージア夫人の体に残る魔力の残滓を僕が追跡魔法具に登録します。国境を封鎖し、逃がさないように。彼女はまだ目覚めないでしょうから、クリフ、急ぎなさい!」
「アナスタージアを頼みます!」
クリフは弾かれたように駆けだした。
アナスタージアに忘却の魔法が使われたと知って彼女がいったいなにを忘れたのか、それがとても気がかりだが、クリフは国王の側近だ。
コニーリアスがついているのならアナスタージアは大丈夫だろう。ただ目覚めるのを横で待つより、彼女に魔法をかけた男を捕縛する手配をかけるべきだ。
胸の中がざわざわする。
不安を振り払うように、クリフはヒューズに用意させた馬車に乗り込んだ。
国王の執務室に飛び込むと、ギルバートも心配してくれていたのだろう、強張った表情で立ち上がる。
「どうだった?」
「コニーリアス長官がついてくれています。それよりも――」
クリフがコニーリアスに聞いた内容と指示をギルバートに伝えると、彼はすぐに動いた。
「騎士団および魔法師団の団長、それから法務省の大臣をこれへ‼」
法務省の大臣は王妃イヴェットの父親だ。騎士団と魔法師団の団長は古参貴族出身だが新興貴族と縁を結んだ新興貴族派である。彼らは信用できる。
相手がアストン侯爵の息のかかった者なら、彼から妨害が入る前に速やかに行動に移さなくてはならない。
国王の執務室で開かれた緊急会議後に出された結論は、各省庁に通達されることなく、「非常時特例」の名のものに速やかに実行に移されることとなった――
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